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2015/03/03(火)08:11

経済成長戦略の本道は、教育への投資増とカリキュラムの入れ替えだ

日本の政治(107)

トマ・ピケティ教授よりも以前から経済格差問題を論じてきた橘木俊詔(たちばなき・としあき)京大名誉教授に、日経の広野彩子記者がインタビューした記事がある。 「日本の経済はもう成長しない。唯一、成長率を上げる方策があるとすれば、それは教育に投資をして勤労者の能力を上げること。日本の成長戦略は、それしかない」 というのが、橘木さんの結論だ。 日本社会が、高等教育をホンキで改革し、実業に直結した大学に変えていこうと志向するなら、外国語+ビジネス経験+アルファで学生たちをリードできるぼくなど、引っ張りだこのはずなのだが……。いちおう、そういう自負があるので、このインタビューにはビビッとくるものがあった。 言っては何だが、いまの大学の先生たちのかなりの人々、そしていまの大学のカリキュラムのかなりの部分は、日本社会のニーズからも国際水準からもズレまくっているのではないか。 わたしは勤務先でも業務研修の講師をいろいろ務めてきたので、「自分なら!」という思いはある。 “日本のピケティ”が見た日本の格差拡大(日経ビジネスオンライン 平270302) ≪……前略…… 広野: 格差を解消するためには、やはり経済成長が必要ということで、ピケティ教授は「人口を増やす政策が最優先だ」と指摘していました。 橘木: そこはね、私はまるで意見が違います。超少数意見かと思います。日本はもう、成長しませんよ。 g (経済成長率)を日本で高めるのは無理です。 広野: しませんか? 橘木: しません。だって、労働力が減少するところで成長は無理です。何年も前から、少子化になるよという指摘を、数多くの専門家がしてきたのに政府はそのままにしてきた。つまりは少子化、負の成長率を選択した、と世界に宣言したわけでしょう。 人口ガタ減りのところで成長率が落ちる、家計需要も減る。それなら成長しないのは当たり前です。そこに成長率2%なんて無理だと言うのです。すると g (経済成長率)を上げるのは無理だから、r (資本成長率)を下げるしかない。もし成長を望むのなら、将来のために子供をどんどん増やすしかありませんが、影響が見えてくるのは今から20年後以降です。 移民について楽観的に言う人もいますが、欧州をはじめどこでも移民問題で悩んでいます。日本政府と日本人が、それを克服できる自信と覚悟があるなら移民を入れてもいいでしょう。覚悟がなければ、難しいです。 あえて成長論の側に立つと、最後の望みを託すとすれば、教育です。1人当たりの教育をしっかりやって、有能な労働者をたくさん生み出して1人当たりの生産性を高めて成長率を高めるのです。日本にも、生産性の高い労働者をたくさん育成して成長率を高くする施策は残されています。 広野: 教育問題は、常に重要ですね。 橘木: 日本の成長戦略はもうそれしかないでしょう。子供もできればたくさん産んでほしいですけれどもね。とにかく公教育支出のGDP(国内総生産)比が、日本は最低レベルです。お金を出していない。親の所得で子供の教育水準や将来の職業などが決まってしまうのが、不幸にして今の日本です。ここを何とかするのが、格差解消に向けた課題でしょうね。≫ なお、文中の「1人当たりの教育をしっかりやって」というのが意味不明。「1人当たりの教育投資額をしっかり増やして」という意味かな。

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