文春新書『英語学習の極意』著者サイト

2016/08/15(月)13:25

現代は、高速試行錯誤の時代。やってみなくちゃ、わからない @『経営戦略全史』(三谷宏冶著)

読 書 録(57)

 以前働いていた商社では、上司(部長およびチームリーダー)が部下と年に3回、考課面談を行う仕組みだった。各個人の業務目標設定を確認しつつ、ボーナス査定結果の考え方を上司が伝える場、という位置づけだった。  そこに「面談をすることによって職場の生産性を上げる」という考え方はなかった。  ところが今から90年近く前の昭和3~5年に早くも George Elton Mayo(メイヨー)は、電話機製造工場で2万人の労働者と面接調査を実施し、当時としては「意外にも」面接(じつは雑談)しただけでその内容にかかわらず生産性が向上したという経営学上の発見をした。 ≪・ヒトは経済的対価より、社会的欲求の充足を重視する。 ・ヒトの行動は合理的ではなく、感情に大きく左右される。 ・ヒトは公式(フォーマル)な組織よりも非公式(インフォーマル)な組織(職場内派閥や仲良しグループ)に影響されやすい。 ・ゆえにヒトの労働意欲は、客観的な職場環境の良し悪しよりも職場での上司や同僚との人間関係に左右される。 会社の定めた仕組みやルールを押し付けてくる厳格な上司よりも、チームや個人の状況に耳を傾け裁量権を与えてくれる上司のもとでこそ士気は上がり、生産性は上がりました。 同僚たちとの関係が良好で、公式な組織と非公式組織がちゃんと一致している職場でこそ、生産性は上がりました。≫ (46頁)  この本を読んでいて、まずこのあたりにビビッとくるあたりが、ぼくのかつての職場における心境を物語っているのかもしれない。 三谷宏冶 著 『経営戦略全史』 (ディスカヴァー・トゥエンティワン、平成26年刊)  いま ぼくらは「シナジー」という用語を便利な飾りとして頻用するが、もともとの意味を意識する必要があることを知った。 ≪事業間の相乗効果のことを「シナジー」と呼んだのは Igor Ansoff(アンゾフ、1918~2002)でした。 もともと生理学用語で、ある動作(投擲(とうてき)など)を行うとき、数十もの筋肉が一糸乱れず連携して動くための筋肉間の協調性(協応構造)のことを示します。 各筋肉を脳がいちいち統制していたのでは、滑らかでムダのない動きはできません。各筋肉は高い自由度を持ちながら、上手に協調(=制限)することで全体の力を発揮しているのです。≫ (81頁)  読んでみたくなった本が W. Chan Kim/Renée Mauborgne 共著の Blue Ocean Strategy だ。  よい戦略とは、敵のいない新しい市場を創り出すこと。つまり戦略とは、新しい市場コンセプトの案出とそれを実現するケイパビリティの創造(= value innovation)である、というスローガンに共鳴する。  Duncan Watts というひとにもしびれる。  大失敗の要因は 1.過去と現在を必然と思いたがる 2.結果に目がくらむ 3.自分や自社に甘い  だから、大失敗の回避のためには 1.過去(成功)から学ばない 2.結果(成功)だけで見ない 3.自分で自分を評価しない。 ≪闇夜のドライブだからといって強力サーチライトをつけるのではなく、抜群の視力と瞬時のドライビング技術と車の旋回性能で突っ走ろうという作戦です。≫  (330頁)  そう来ましたか。  変化の速度もフィードバックの速度も上がった現代において、戦略は現場での試行錯誤とそのフィードバックによってのみ成立するのだというのが、本書の最後の百ページを貫く主題になっている。 ≪そこで、わかったのは「やってみなくちゃ、わからない」ということ、そして、どう上手く素早く「やってみるか」、そしてそこから素早く「学んで修正して方向転換するか」という力こそがすべてだ、ということでした。高速試行錯誤の力です。≫ (375頁)  英語教室経営のための力づけを得ました。

続きを読む

このブログでよく読まれている記事

もっと見る

総合記事ランキング

もっと見る