むかしむかし、あるところに、二人姉妹の娘がいました。 お姉さんの方はとてもきれいな顔をしているのに、どういうわけか、妹の方はちっともきれいではありません。 だからお母さんも、きれいな顔のお姉さんばかり可愛がっていました。 ある日、二人一緒に道を歩いていると、向こうから馬に乗った男の人がやってきて、「この村のお宮へ行くには、どっちへ行けばいいのか?」と、たずねました。 男の人はひげだらけの顔をしていて、よごれた着物を着ていました。(こんな人とは、口をきくのもいやだわ) そう思ったお姉さんは、聞こえないふりをして下を見ていました。 でも、親切な妹は、「それでは、わたしが案内してあげましょう」と、言って、村はずれにあるお宮さんまで男の人を連れて行ってあげました。 お宮の前までくると、男の人はふところから白いおうぎを出して言いました。「わたしは人間の姿をしているが、本当は山の神じゃ。お前はまことに親切な娘。お礼にこのおうぎであおいでやろう」 山の神さまが白いおうぎで娘をあおぐと、どうでしょう。 娘の顔は、みるみるきれいになりました。「それにしても、お前の姉さんはひどい。わしのきたないかっこうを見て、口をきこうともしなかった。いくらきれいな顔をしていても、心はまっ黒だな」 そう言って、山の神さまはお宮の中へ消えて行きました。 さて、もどってきた妹を見て、お姉さんは目をまるくしました。 色が黒くてみっともない顔の妹が、見ちがえるほどきれいになっていたのです。「どうして、そんなにきれいになったの?」 お姉さんは、くやしくてたまりません。 そこで妹からわけを聞き、すぐにお宮さんへ飛んで行きました。「山の神さまお願いです。わたしもおうぎであおいでください」 するとお宮の中から、山の神さまが出てきて、「そんなにあおいでほしけりゃ、のぞみ通りにあおいでやろう」と、言って、ふところから黒いおうぎを取り出すと、お姉さんをあおぎました。 すると、白かったお姉さんの顔はみるみる黒くなり、とてもひどい顔になりました。 でも、それを知らないお姉さんは喜んで、妹のところへもどってきました。「どう、すごくきれいになったでしょう?」 妹は何も言えなくて、首を横にふりました。「えっ?」 お姉さんはあわてて近くにある池に行くと、水に顔をうつしてみました。 するとそこにうつっているのは、色の黒い娘の顔でした。「どうしよう、どうしよう」 お姉さんはすぐにお宮へ行って、元の顔にもどしてくれるよう頼みました。 でもどこへ消えたのか、山の神さまは二度と姿をあらわしませんでした。 さて、妹はますますきれいな娘になって、その国のお殿さまの奥方になり、いつまでも幸せにくらしたそうです。 しかしお姉さんの方は、一生、黒い顔のままでした。


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