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テレビ・新聞が報じないお役に立つ話

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2021.01.29
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テーマ:在宅介護(1569)
下記の記事はプレジデントオンラインからの借用(コピー)です


「キス2000円」デリヘル扱い介護ヘルパーの奮闘
真顔で「お金を払うから、やらせろ」

介護ヘルパーの仕事で「相手に後ろ姿を見せてはいけない、ドアは開けたままにする」という注意事項がある。どういう意味なのか。20年以上のヘルパー経験を持ち、介護職員の処遇改善を目指して活動する藤原るかさんが、訪問先での実体験を語る——。
※本稿は、藤原るか『介護ヘルパーはデリヘルじゃない 在宅の実態とハラスメント』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。
全裸で立ちはだかる青年にどう対応するか
私が「ヘルパーは利用者のセクシャルな部分に関わる仕事でもある」と意識したのは、まだ若かりし35歳のときです。当時はまだ介護保険制度が始まる前で、私は自治体に勤務する公務員ヘルパーでした。
ヘルパーになりたての私は「もっと勉強しなくては」と、都内で行われていた「在宅ケア研究会」という勉強会に参加。先輩ヘルパーが実際に経験した事例をもとに、ヘルパーとしての心構えや対処方法などを学び合っていました。
その日のテーマは「精神に病のある青年が全裸で立ちふさがったときに、どう対応するのか」というもの。それまで訪問先の利用者は受け身でいるものだと思っていた私は、その場面を想像するだけで足が震えました。
それと同時に「生身の人間を相手にするというのは、こういうことなのか」と、ヘルパーという仕事の意外な側面を教えられたのです。
世の中には、道端の電柱の陰から全裸にコートを羽織った男が女性を驚かし、その姿を見て喜ぶ露出狂の人がいます。そういうとき、多くの女性は「きゃーっ」とか「あっ」とか叫んで逃げ出すことでしょう。私も走って逃げます。
しかし、ヘルパーはそういうわけにはいきません。私たちには「身体介護」(食事や排泄の介助、衣服の着替え、入浴介助などの身体的な介護のこと)と「生活援助」(献立や調理、衣類の洗濯、部屋の掃除など、日常生活の援助を行うこと)という仕事があり、それをやらずに利用者宅を離れるわけにはいかないのです。
ヘルパーをベッドに誘う80代の男性
一般的に70代以上のお年寄りというと、枯れたイメージがあるかもしれませんが、実際にはそうではありません。性的衝動はいつまでも残っていることを実感します。
私がヘルパーとして関わった80代のKさんも、そうしたひとりでした。半身不随がある方で、食事を食べさせた後、薬を飲ませ、歯を磨いて、寝間着に着替えるのを手伝い、最後にベッドに寝てもらうのが仕事です。これを就寝介助といいます。
そのときも、私が「じゃあ、ベッドに寝ましょうね」といいながら、身体を支えようとしました。すると、いきなり麻痺まひしていないほうの腕で抱きつかれたのです。あやうくベッドに引き倒されるところでした。
反射的に身体をもとの体勢に戻し、Kさんから離れました。そして、結果的にベッドに横になった格好のKさんの身体に布団をかけ、何食わぬ顔で「これから茶碗を洗わないといけませんから、先に寝ていてくださいね」といい、台所に戻ったのです。
Kさんはというと、不満そうに「だって、ベッドに寝ようっていったじゃないか」と文句をいっています。これを聞いて「男性はいくつになっても性的な欲望があるんだ」と驚きました。まさか「ベッドに寝る」という言葉を「床をともにする」という意味に解釈するとは、夢にも思いませんでした。
「お金を払うからやらせろ」
Kさんが自分の行為を正当化するために、意図してそういう反論をしたのか、その辺のところはよくわかりませんが、ここで大げさに騒ぐと、相手によっては「なんだ、おまえは生意気だ」といって怒り出す人もいるので、さりげない態度を取るのが賢明です。
女性から拒絶されると、自尊心が傷つけられる人もいますからね。開いた傷口に塩を塗るようなことをしては逆効果になります。こちらがキッパリとした態度で接すると、「このヘルパーには手を出せない」と思うのか、そうした行為は止むことが多いです。とはいえ、おとなしそうなヘルパーに同じようなことをする可能性もあるので、事業所には報告します。そうやって情報を共有するのです。
利用者のなかには、ヘルパーをデリヘルかと勘違いしている人がいます。「お金を払うから、やらせろ」といって交渉してくるのです。この時点で悪質なセクハラですが、おかまいなく真顔でいうのですから、本当にまいってしまいます。
この手の人は、「あんた、いくつになる?」とか「結婚しているのか?」などとプライベートなことを聞いてきます。結婚しているというと、セックスの話題を持ち出し、こちらの反応を見ながら「やらせろ」といってくるのです。
「接吻2000円」お手製のサービス表まで
こういう人には「ヘルパーはデリヘルではありません」といって毅然きぜんとした態度で断ります。実際に迫ってくることはないので、こわいということはありませんが、こういう言葉によるセクハラも、ヘルパーをひどく傷つける行為には違いありません。
また、私の経験ではありませんが、「サービス価格表」という紙が置いてあるのを、ヘルパーとの連絡や調整を担うサービス提供責任者が発見したことがあります。そこには「手を握る=100円、胸を触る=500円、胸を直に触る=1500円、ほっぺにキス=1000円、接吻=2000円、あそこを触る(15秒)=2500円……」などと書かれてあったそうです。
他のヘルパーに聞き取り調査をすると、40代前半の女性ヘルパーが「あんたたちも薄給で大変だろう。こんなの作ってみたんだけど、どれか選んでくれないかなあ」といわれたと証言したのです。
彼女が冗談で「みんな、ゼロが1つ足りないわよ」というと、「そうか、わかった。いくらでもやるから、いいことしよう」と目をらんらんと光らせたそうです。それを見て気持ちが悪くなり、それ以来、悩んでいたとのことでした。
これはかなり悪質なセクハラといえるでしょう。注意して改善されたそうですが、「男性ヘルパーに代わってもらいますよ」とか「セクハラです」といえば、収まる可能性はあります。
それにしても、こんなサービス価格表まで作るとは、知能犯といえますね。男って奴やつには、本当にあきれます。
夫とヘルパーの仲を疑う認知症の妻
これは直接的なセクハラではありませんが、セクシャリティに関わる事例として紹介したいと思います。
私が訪問していたのは80代半ばの認知症のF子さんで、10歳年下のご主人と同居していました。F子さんは、若い頃はさぞや美人だっただろうと思われるような女性で、いつも身なりもきちんとしています。
私の担当は食事の介助や服薬、更衣してデイサービスへの送り出しですが、F子さんの「この服は主人が買ってくれたの」という説明を聞きつつ洋服を着せると、今度はバッグの中身をチェックします。「ティッシュがないと困るでしょ」といいながらバッグにティッシュやハンカチを入れるのですが、入れたことをすぐに忘れてしまい、同じことを何度も繰り返すのです。これは記憶障害が特徴の認知症の1つで、F子さんにかぎったことではありません。
そばで見ていたご主人が業を煮やし、「いい加減にしろ」と怒鳴りました。すると、びっくりしたF子さんは、あろうことか、私のほうを見て「あんた、旦那とできてるんでしょっ!」といったのです。ご主人に怒鳴られたF子さんが、自分がデイサービスに行った後、私とご主人が何かすると勘違いしたのでしょう。
家族と利用者の板挟みもよくある
私は、ご主人が怒鳴る前に声を掛けていればよかったと反省しながら、2人をなだめ、F子さんをデイサービスの送迎車になんとか乗せますが、F子さんは車に乗ってからも、こちらのほうを不審そうに見ています。
藤原るか『介護ヘルパーはデリヘルじゃない 在宅の実態とハラスメント』(幻冬舎新書)
このままではまずいと思った私は、送迎車が向かう方向に歩き出し、F子さんが安心した表情になるまで手を振って送り出しました。
私の次の訪問先は送迎車の方向とは正反対でしたが、F子さんの疑念を晴らすためにはしかたがありません。それ以降、F子さんはデイサービスの送り出しの度に「あんた、旦那とできてるでしょう」というようになってしまったのです。
頭から離れなくなったようでした。認知症は記憶に障害のある病気ですが、マイナスの感情は定着しやすく、このことに関しては忘れることはなかったのです。
F子さんの訪問には私以外のヘルパーも関わっていたので、みんなで「これはご主人への愛だね」と話していましたが、毎回のようにいわれるので、結構まいりました。
ヘルパーは、こうした家族と利用者の板挟みになることもあります。認知症の人の「嫉妬妄想」や「物取られ妄想」など、現場ではよく出会います。そういう意味では、夫と妻の関係性やセクシャリティには配慮が必要です。





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最終更新日  2021.01.29 15:30:06
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