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テレビ・新聞が報じないお役に立つ話

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2021.09.03
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下記の記事は婦人公論.jpからの借用(コピー)です。

2020年、女性の自殺が例年と比べて急増していることが報じられ、社会に衝撃が走った。自殺を考え、実行してしまう心理状態とは。その背景にあるものは。自殺未遂の経験者や専門家に話を聞いた。(取材・文=古川美穂)
10年ほど減少傾向にあった自殺者数が増加に
「『死のうとするくらいなら、死んだつもりで頑張ればいいのに』と言う人がいます。でもそれは当事者の心理状態を全然わかっていない意見だと思うのです」と言うのは、都内で自営業を営むシングルマザーの山内亮子さん(53歳・仮名)だ。
山内さんは自動車事故を発端にさまざまなトラブルが重なって思い悩み、数年前から何度か自殺を図っている。
「実行するのはいつもふとした瞬間のことでした。いろいろな問題が積み重なって、あるとき急に、楽になりたい、自分なんていないほうがいいという気持ちが湧き上がり抑えられなくなって……」
1年以上続くコロナ禍の中、この10年ほど減少傾向にあった自殺者数が増加に転じた。2020年は2万1081人で、19年の2万169人を912人上回る。なかでも目立つのが女性の急増だ。前年と比べて男性が23人減少したのに対し、女性は935人増加している。
NPO法人自殺対策支援センターライフリンク代表の清水康之さんは、状況をこう分析する。
「新型コロナウイルス感染拡大以降の自殺率を引き上げているのは、女性と若年層です。なかでも専業主婦を含めた無職の女性、独居よりも同居人のいる人の増え方が目立っているのが特徴です」
感染が広がり始めた初期は社会全体に防衛的な意識が高まり、むしろ前年の同時期よりも自殺者が少なかった。しかし状況が変化する中で、徐々に社会的立場の弱い人にほど負担が重くのしかかっていった。この数字はその影響が如実に出た結果ではないかと言う。
「女性に多い非正規労働者の失業と貧困。子育てや介護をする環境で孤立状態が深まったこと。閉鎖的な空間での家族関係の悪化やDV(家庭内暴力)など、さまざまな要素が挙げられます。以前からあった女性を取り巻く諸問題が、コロナ禍によって改めて浮き彫りになったとも言えるでしょう。そこに有名人の自殺報道が続いたことも引き金のひとつとなりました」
清水さんが指摘するように、6月11日に閣議決定した「令和3年版男女共同参画白書」ではコロナ下で「女性(シー)」と「不況(リセッション)」を合わせた「シーセッション」と呼ぶ雇用悪化が進んでいると記載された。
平均4つの問題を抱えて
NHKが行ったアンケート調査では、女性の26.3%、つまり約4人に1人が「解雇や雇い止め」「労働時間の減少」などに追い込まれていた。「収入が5割以上減少した」女性は15.4%(男性は8.1%)、「『休業手当』が支払われていない」のは女性が25.6%(男性17.6%)となっている。職を失った女性の4割近くは再就職していないと答え、男性を大幅に上回った。
また、全国の配偶者暴力相談支援センターなどの相談窓口に寄せられた件数は前年度より約1.6倍多い19万件に上るなど、在宅時間が増えたことによるDVの増加も明らかに深刻化している。
自殺に至るまでの過程は、決して単純ではない。
「どんなケースであれ、それは追い込まれた末の死です。我々は自殺で亡くなった523人について、お一人ずつ関係者への聞き取り調査を実施しました。その結果、職業や立場によって自殺を選択するまでの経緯は違うのですが、それぞれにある程度の規則性があることや、一人の方が平均4つの問題を抱えて亡くなっていることなどがわかりました」(清水さん)
なかでも多いパターンは、こうだ。まず何らかの経済問題が起きる。次に雇用や暮らしの困難に進む。人間関係や家族間の問題が生じる。そして最終的に心の健康が損なわれて、自死を選ぶ。
「自殺というのは決して特別な人が特殊な問題を抱えてするものではありません。日常的な悩みが深刻化し、そのことでまた別の問題を抱え込み、さらにそれが別の問題を生む、というふうに連鎖して起きる。我々の日常と地続きなんです」と、清水さんは言う。
弱いものにしわ寄せが行く
生きづらさを抱えた自らの体験を綴った『この地獄を生きるのだ』などの著書を持つ小林エリコさん(44歳)は、20代から30代にかけて4回の自殺未遂をしている。
最初は21歳のときだった。
「いろいろな要素が絡んではいますが、一番の原因は完全に『貧困』だったと思います。当時は編集プロダクションに勤めていたのですが、今でいうブラック企業でした。毎晩遅くまで働いても残業手当は一銭もつかず、月給12万円。正社員なのに保険にも加入させてもらえない。けれど私はほかに社会経験がなかったし、当時はインターネット環境もありませんから、自分が置かれている状況が異常だとわからなかったのですね」
貧困が恐ろしいのは、お金がないために人との縁まで切れてしまうことだと、小林さんは言う。
友人と喫茶店や居酒屋にも入ることができず疎遠になる。職場以外に人間関係を広げる余裕もない。給料日に一人で回転寿司店に入り、財布と相談して一番安いネタを3皿だけ食べて出てきたときの哀しさは今も忘れられない。
「決行する日は1ヵ月ぐらい前から決めていました。会社で抱えていた仕事がすべて片付いた後に、『よし。これで今日死ねる』と。我ながら、真面目すぎるんですね」
うつ病になるのは基本的に生真面目な性格の人が多い。だがうつ病になると頭の回転や動作が鈍り仕事の能率が下がったり、夜眠れなくて遅刻が増えたりする。そのため社会的には怠けていると見做されがちだと、小林さんは続ける。
「悩みがあってもちゃんと眠れて食べることができるときは、この状況はおかしいと自分でもわかるんです。でも忙しすぎたり、眠れなかったり、うつ病などの精神疾患にかかると正常な判断が下せなくなってしまう」
クリニックのデイケアに通い、社会との接点を探り…
小林さんは命を絶とうとした。だが当日に電話で話した友人が異変に気づき、知人に様子を見に行ってもらったところ、小林さんは室内で倒れていた。救急車で大学病院に運ばれ、3日間意識不明で生死の境をさまよったが一命をとりとめた。
その後、精神科病院への入院などを経て再就職を目指すが、何度も挫折したという。
「退院してから10年ぐらい、実家で母親と暮らしていました。引きこもりで10年というのは本当につらいので、自分でもまた働きたいとずっと思っていたんです。でもちょうどリーマン・ショックの後で不況が続き、『障害者』である私はアルバイトすら面接で落とされてしまう。これから一生ここで母親と暮らすのだと思ったら絶望感がすごくて……」
体も心もボロボロになっていった。あるとき、このままでは本当にダメになると感じた小林さんは、実家を出る決意をする。生活保護を受けながらクリニックのデイケアに通い、少しずつ社会との接点を探っていった。
そして10年ほど前にNPO法人の事務職を得てからは、一度も自殺を試みていない。
「今日は面倒くさいから仕事に行かずに寝ていたいとか、辞めたいと思うことも時々あります。それでもやはり今の自分を生に繋ぎとめてくれているのは仕事であり、お金だと思う。働いていれば人との縁も自然と増えていくようにできていますし。だから働きたい人がちゃんと全員働けるような世の中になってほしい、と心から思うのです」
今、小林さんはコロナ禍で追い詰められる女性たちのことをとても心配している。
「私自身もいまだに非正規雇用だし、最初の緊急事態宣言のときはお給料が10%カットになりました。それでも事務職なので影響は少ないほうです。接客や対面サービスの仕事は圧倒的に女性の割合が多いけれど、コロナ禍で宿泊、飲食、小売業などが打撃を受け職を追われる人も増えました。私の友人にも解雇された人が何人もいます。また、医療、介護や保育などにもしわ寄せが行って労働環境がよりハードになっている。こうした仕事は社会を支える一番大事なものなのに、相変わらずお給料が低いうえ、まったく保障が行き届いていません」
こうした現実が女性の自殺急増の裏に横たわっている。
個人ではなく社会構造の問題
自殺を考える人たちのセーフティネットのひとつになっているのが、電話やSNSを使った相談窓口だ。公的な電話相談では24時間365日受け付ける「よりそいホットライン」、民間では「いのちの電話」や「自殺防止センター」などがある。またSNSを通じた相談も、最近は大小さまざまな窓口ができている。
「ライフリンクでも、18年から行ってきたSNS相談に加えて今年2月から『#いのちSOS』という電話相談を始めました。これまでの電話相談はつながりにくいという難点があったのですが、ITの技術を活かして、初めての相談者からの相談を優先的に受けられるような仕組みを構築し、相談の受け皿も強化しています」と、前出の清水さんは言う。
「#いのちSOS」では相談に乗るだけでなく、緊急性の高い場合は通信事業者とも連絡を取って警察と連動し、対象者を保護できるようにしている。先日も若い女性が飛び降りる寸前で警察に保護してもらったという。
「死にたいといっても、多くの人は積極的に死を望んでいるわけではないと思います。もう生きられないから死を選ぶしかない、心の底では助けてほしいという思いがあるのだと思ってわれわれはご相談を受けています。また、こうした活動を通じて感じるのは、自殺を考えている方は『こうなったのも自分が悪いからだ』と思っているケースが多い、ということ。しかしこれは自己責任や個人の問題ではなく社会構造の問題です。それを広く知っていただけたら」(清水さん)
精神科や心療内科を受診してほしい
一方、自殺した人の約9割は、亡くなる前にうつ病をはじめとする何らかの精神疾患を抱えていると指摘するのは、精神科医で星槎大学大学院の内田千代子教授だ。
「そのような方は、死のうか生きようか、心の底では最後まで揺れ動いていることが多い。その根本にあるのが、絶望的なまでの孤立無援の感覚です。世の中には誰も自分を助けてくれる人がいないという孤独感。自分には価値がないという無価値感。それらは往々にして、うつ病などからくる認知の歪みです。そうした思い込みをほぐすには、専門家の力も必要。もし毎日のように死にたいという思いが浮かぶなら、精神科や心療内科を受診してほしいと思います」
うつ病の症状は、下に挙げたリストがひとつの目安となる。
「この中でも特に重要な(1)か(2)がひとつでも入り、かつ合計で5つの項目が該当する状態が2週間続いた場合はうつ病を疑ってください。まだそこまでいかないけれど、うつ傾向があると感じる場合は、信頼できる人に相談してみるだけでも気持ちが晴れる可能性があります。そして、運動、睡眠、食事、規則正しい生活リズムなど、生活習慣を整えることも大切です。特に運動はさまざまな精神疾患に対する高い予防効果が認められています」と内田教授は説明する。
運動は筋トレなどの無酸素運動でも、ジョギングやウォーキングなどの有酸素運動でも、どちらでもよい。ただし、少し息が上がる程度の軽いものが望ましいという。

うつ病の症状
(1) ほとんど一日中、毎日憂鬱な気分がある

(2) 喜びや興味の喪失が続く

(3) 食欲が減退し体重が減る、または食欲が増えすぎて体重が増える

(4) よく眠れない、または寝すぎる

(5) 落ち着きがないような焦燥感

(6) 疲労感、気力の減退

(7) 無価値感、罪悪感

(8) 思考力、集中力の減退、決断ができなくなる

(9) 死についての反復思考

※アメリカ精神医学会診断基準DSM-5より
一人で何とかしようとしないで
では身近な人が自殺をほのめかしたり、うつ状態にある場合はどう対応したらいいか。これに対してはカナダの自殺予防グループがまとめ、日本でも普及している「TALK」の原則が参考になると内田教授は言う。
「Tell(話す)は相手に心配していることを伝える。Ask(訊く)は『死にたいと思うことがあるか』『何を悩んでいるのか』など尋ねる。Listen(聞く)は相手の話を傾聴する。Keep Safe(安全確保)はその人を一人にしない。そのうえで医療や相談機関につなげること。自殺をほのめかされたり相談された場合、決して一人で何とかしようとせず、専門家に援助を求めるのが鉄則です」
前出の小林さんは学生時代からうつ病を患っており、医療費を支払うのにも苦労した経験がある。
「うつ病は慢性疾患なので、手続きをすれば医療費の自己負担が大幅に軽減できる自立支援医療という仕組みを利用できます。私は最初それを知らず3割負担のままだったので、一度の通院で3000円ぐらいかかって大変でした。思えば、私はいわゆる情報弱者だったんですね」(小林さん)
日本の福祉行政は基本的に「申請主義」だ。いろいろな制度があっても、本人がそれを知っていて自ら申請しないと恩恵を受けられない。
また小林さんは、生活保護を受けながら社会復帰を図った。だが日本では生活保護に対する偏見もまだまだ少なくない。
「生活保護はネガティブなイメージが強いけれど、本当はすごくよい制度だと思うんです。生きるための最低限を保障してくれる。受けたらずっと抜けられないわけではないのですから、たとえば女性が離婚して新しい仕事が見つかるまでの合間とか、失業保険が切れて使えないから受けるなど、もう少し楽な気持ちで使ったらいいのではないかと思います」と小林さん。
今はさまざまな支援策も増えている。当事者でなければその絶望感は理解できないかもしれない。だが追い詰められたと感じたときにも、少しだけ立ち止まり、生きる道もあるかもしれないという選択肢に気づいてほしい。





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最終更新日  2021.09.03 12:00:09
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