カテゴリ:読書のじかん
かって地球を壊滅寸前にまで追い込んだ人類。
一部の者は月に逃れて地球の再生を待ち 地球に残った者はおぞましい滅亡の記憶を封印して 地球の再生に尽力した。 それから2千年の時を経て、月の民は地球帰還作戦を発動。 だが、記憶を封印した地球人には それは一方的な「侵略」にしか受け取ることができず激しく反発。 各々の思惑も入り乱れ やがて大規模な戦争へと発展することに・・・ TVアニメ「∀ガンダム」のノベライズですが ここまでくるともうまったく別の物語です。 福井版「∀ガンダム」。 すごい衝撃を受けました。 TV版の結末がすべてを赦し最終的には互いを認め合うという 「救われる」結末ならば 福井版はこれでもかと人間の業を見せつけてくる残酷で悲壮な結末。 でも私がTVアニメを見ていたときに 想像してた結末に限りなく近い結末でもありました。 にしても すごすぎます。 核兵器、枯葉剤、毒ガス兵器と 無知ゆえに手に入れば手当たり次第、兵器として投入していく人々 恐ろしすぎる・・・ そして誰よりも争いを嫌い回避しようとしていた 月の女王 ディアナ・ソレルがすべてを滅するために自ら操る モビルアーマー"月の蝶"(ムーンバタフライ)の最期の舞い。 あまりにも悲しすぎる・・・ 限られた生を持つ人間が繰り返す 残酷な螺旋の世界 鮮烈でした。 登場人物も微妙にTV版とはその役割を変えています。 印象的なのはキエル・ハイム。 TV版では一点の曇りも迷いもなく 自分の愛を貫き、ディアナの理想に共感し尽力していましたが 福井版「∀」では生々しいほどの女の業をさらけ出していました。 でもこれも私は納得できます。 鉱山主の娘として人にかしずかれ、何不自由なく育ったキエルにとって 報われないハリーへの思いは想像以上の屈辱だったはず。 しかもその思いを阻んでいる存在が 自分と同じ顔をした女性であればなおのことで その消化しきれない想いが歪んだ形で表現されてしまったのは ある意味仕方がなかったのかもしれません。 そして失いかけている自分のアイデンティティを確保するために 間違っていると知りつつもグエンに寄り添おうとする その浅はかさも・・・ その存在感はTV版以上でした。 しかしもはや「∀」は最強ですね。 自己増殖を繰り返して自然物に干渉する分子サイズの極小作業機械 "ナノマシン"は理解できても 空間転位="テレポーテーション"ができるMSなんて 近未来の話であってもちょっと想像できないですね。 なんだかそれこそ神の領域に近い行為のような気がする。 過ぎた科学文明は人類にとって 幸福なのか 不幸なのか。 考えさせれました。 福井版「∀」を動く絵(アニメ)でぜひ見てみたいです。 でもあまりにもいろいろなことが生々しすぎて さすがに子供には見せられないかもしれない。 なにはともあれ。 くどさを乗り越え、延々と続く思想論にもしっかりと共感できた(笑) 福井作品、面白かったです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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