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2005/03/12(土)17:43

対立が生み出す悲劇(「JSA」)

MOVIE REVIEW(177)

韓国において「シュリ」の興行記録を塗り替えた「JSA」。この作品は南北対立という政治的背景をもちながら、韓国の興行記録を塗り替えた。このような背景を持ちながら、興行記録を塗り替えたところに韓国人の望みが垣間見えるような気がしてならない。 この映画は近隣諸国だけではなく、世界の人々に対立の悲劇を訴えかける。その対立が軍事境界線をこえて友情を互いにもつ2人を引き裂く姿は、世界で生じる対立の中にも存在するとしても不思議ではない。この南北対立が、おそらく世界にみられる他の対立と異なる点は、同じ民族同士である点だろう。その特徴が結末の悲劇を強調しているように思われる。また、現実には両国間に38度線は存在するものの、友情の間には38度線は存在しない。しかし、このような友情を持つ2人が現実を変えることのできない点にも悲劇が見られるといえよう。 この映画を見て国境38度線を見にいきたいと思った人や、実際に見に行った人が多い。同時に、韓国映画に興味を持った人もいるだろうし、南北対立のリアリズムを理解することにも、この作品は寄与している。 南北対立は今も続いている。そして、同様に、悲劇なのは軍人同士が軍事境界線を越えて友情をもつことは作品中では存在しても、現実にはありえないことだ。同時に、軍人同士が両国友好を願っても、軍人同士の友好は現実化しない。そのため、南北対立が継続中なのをふまえると、私たちの理解を超えた悲劇が今後、様々生じるように思われる。そう思うと、この映画の訴えが、より現実味をましてくる。

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