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よろず屋の猫

『チーム・バチスタの栄光』 海堂尊  

何故私が日本のミステリーに熱心でないかと言うと、ひとえにその雰囲気にある。
たいていの場合“謎をとく人”となる主人公が後ろ向き、ネガティブな性格が多い。
組織が保守的だ、官僚的だ、硬直化しているだのの話も好きで、おまけにくどい。本筋と関係ないところで長々と語られる。
で、“謎とく人”は自尊心は高いから、シニカル。その物言いを読んでると、今どきカッコ良くないよ、そんなのって思っちゃう。
もう「世の中ってのはホント汚いもんだよ、嫌なもんだよ、お前らには分んないだろうけどさ。男って辛いよな、フッ。」ってのがにじみ出てて、それがたまらないのですよ。
もちろん全部がそうだなんて言いませんよ。
日本のミステリーにだって大好きなのはいっぱいあります。
官僚的な組織を扱った小説にだって好きな物はありますし。

ところでこの『チーム・バチスタの栄光』。
『このミステリーがすごい!』大賞受賞作です。

大学付属病院でチーム・バチスタとして成功率100%を誇っていた外科チーム。しかし立て続けに3件の術中死が起こる。
果たして原因は何?。
病院の権力闘争からは遠く離れた場所に自らを置く、不定愁訴外来責任者・田口が、病院長・高階に命じられ内部調査を始めるが・・・。

バチスタって何?、と真っ先に思いましたね。ちなみに我が家のパソコンは「撥酢他」と変換してくれましたが・・・。
心臓移植の代替手術で、その名称だそうです。

とにかくコミカル。
田口は大学病院内の出世競争からは離脱しちゃってますが、飄々としたものです。
受け狙いのジョークには笑えませんが、読んでで陰鬱な気持ちにならないところが、私好み。
この田口が、病院内の状況とか、チームのメンバーの説明など、言わば基礎や背景を語っている。
後半、突如として厚生労働省の役人・白鳥が登場、実際に謎解きをするのはこの人。
この白鳥って言う人がもう・・・。
白鳥の前では前半担当の田口だって、ただ凡人に見えます。
キャラが立ちすぎて、やりすぎじゃないかとすら思えるほど。
そう思いつつ、笑っちゃうんですよね、二人のやり取り見ていると。
おまけに高飛車なお医者さんをやり込めるシーンにはスカッとしちゃうし。

“謎”の筋立ては割と単純。
ただ知識がないと読者には“どうやって実行したか”をあてるのは無理です。
ラストになって知識を披露してもらわないと分らないタイプのミステリー。

そしてあくまで“実行が可能だったのは誰か”で解いていく。
それが最後に分る犯人の人柄につながっていくんだろうと思います。

白鳥が「こんなヤツ、殺しちゃえよ。」と言うシーンがあって、良いのか、そんなこと書いちゃってと思ったりもしますが、実際問題、私にも日頃のニュースで知る事件の中には同じ気持ちを持つものがあるので、その素直さに、ちょっと苦笑しながらも分るんだよねぇって。

手術のシーンなどは迫力があり、しかし簡潔なので、臨場感があって読み応えあり。

ミステリーの筋立てよりもキャラで読む小説。
たぶん好き嫌いも分れると思う。
でも私は日本にももっともっとこう言うタイプのミステリーが出てきて欲しいなと思います。



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