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よろず屋の猫

『ある秘密』 フィリップ・グランベール

美しく素晴らしい身体を持つ父マクシムと母タニアの子供である“ぼく”は身体が貧弱で弱く、そのことにコンプレックスを持っている。
一人っ子である僕はしかし誰にも見えない兄さんを持っていた。
ハンサムで力強く輝かしい兄さんは最初はぼくの守護者であったが、やがて横暴な存在となる。

両親の恋愛をぼくは夢想する。
美しい二人にふさわしい物語、その間に生まれた愛されるぼく。

成長するとぼくは、両親の店の近くで治療院を営むルイーズから真実の話を聞く。

ユダヤ人である一族の、戦争のときの話。
また両親の真実。
ぼくには実際に兄さんがいたことを知る。
そしてぼくは両親の物語を作り直していく。

「高校生が選ぶゴンクール賞」を獲得した、著者の自伝的小説。


「高校生が選ぶゴンクール賞」獲得と言うので、ティーン向けの小説かと思っていたのですが、この賞は“ゴンクール賞を高校生の審査にゆだねたら”と言う発想で始まったもので、実際にゴンクールの受賞者を先取りしてあててしまったこともあるそうです。

とても簡潔な文章で構成もシンプル、読みやすいです。
しかし味わいのある小説だと思います。

ひ弱な身体にコンプレックスを持つぼくが、想像上の兄さんを作り上げていく導入部、また両親と言えども憧れの対象であるマクシムとタニアの美しい恋物語。

しかし真実を知って、ぼくは変更を余儀なくされます。
その変更された物語が、両親の話であるにも係らず、精神的な部分に魅かれたのではなく、ただただ美しい肉体に性的に焦がれていった物語である点が、ぼくの根強いコンプレックスを感じさせます。
また、性的に関心の深い時期に、両親に憧れを投影しているようでもあります。

ぼくの兄さんは、収容所に入れられ、殺されてしまいました。

成長したぼくは、強制収容所で死亡したフランスの子供達に捧げる本の刊行を企画している夫妻に兄の写真と情報を預けます。
数ヵ月後に書物が届きますが、その中に兄の写真もあります。
その時、創造の産物にすぎなかった兄は、確かにこの世に生きた存在となります。
そして本が彼の墓となるのです。


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