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よろず屋の猫

『真夜中の青い彼方』 ジョナサン・キング

わたし・マックスはかつてフィラデルフィアで警官をしていたが、職務中に12才の少年を撃ち殺して退職、現在はフロリダ州の湿地帯エヴァーグレイズで隠遁生活を送っている。
夜になると、何も考えずに眠れるように身体を疲れさせるため、川でカヌーを漕ぐ。
ある夜、川で子供の死体を発見する。
連続幼児誘拐殺人事件の被害者だった。
さらに子供が誘拐される。
わたしは事件の関与を警察に疑われながらも、事件の真実を探る。


“わたし”の友人のイケメン黒人弁護士なのだが吃音のビリー、
刑事のディアスとリチャーズ、最期にやるじゃないかと思わせた刑事のハモンズ、
古くからエヴァーグレイズに住むブラウン、等の脇を固める人物が魅力的。
特にほとんどコンビと言えるビリーは、マックスと全く違うキャラなのだけど、とても良い。
動のマックス、知のビリーってところかな。

また湿地帯や、そこを行き来する手段のカヌーの描写がふんだんに出てきますが、その美しさ、怖ろしさが思い浮かびます。

読んでいて思ったのは、アメリカってそんなに冤罪の危険性がある国なの?ってことでした。
マックスは自分も警官だったので疑われるのは分かっているし、それを晴らすためにも動くのですが、被害者のお葬式に行ってみたりと、はっきり言って軽率。
“かつて子供を銃殺してしまった自分は、だから子供の死を見過ごせない”の一本に絞ってもらった方がすっきりしたかな。
アメリカが本当に冤罪が多くて多くて、と言うなら話は別ですが。

それと銃で撃たれたり、死にそうになったりといろいろあるのですが、超人的すぎる。
もう少し生身の人間を描いて欲しい。
そうしてこそ、人間の哀しみとか悩みとか辛さとかが伝わるのじゃないでしょうか。

“わたし”で語られる一人称、いきがった表現などがない端正な文章。
私は“俺”ではなく“わたし”のハードボイルドが好きなのですよ。
ただミステリーの面白さとしては今一つで、これは最期で分かる犯人のため。
犯人が分かった時の驚きがないのです。
ハードボイルドはそれが主の小説ではないことは理解してますが、名作と言われるハードボイルドにはちゃんと謎があったはず。
なのでこの作者が本当に“ハードボイルドの書き手”かどうかは、次の作品を読んでから、と言う感じです。

いろいろ書いてしまいましたが、あくまで期待している上での注文です。
足らない部分があるとは思いましたが、最近読んだミステリーの中では上出来クラスに入る、面白く魅力的な小説でした。


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