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よろず屋の猫

『邪魅の雫』 京極夏彦

ついにここまでたどり着きました、『京極堂シリーズ』(と言って良いのかな?)の最新作、その感想です。

「釈迦も弥勒も彼の下僕に過ぎない。彼とは誰か。」と問われ、
「ぼくだ。」(『鉄鼠の檻』)
と言ってのけるハチャメチャ人間の榎木津も、自分に係ってくる事件とあってはちょっと元気がない。

視点がめまぐるしく変わる。
各関係者の心情を書くとなるとこうなるのは分るのですが、個人的には語り部は主たる一人とせいぜい数人の副と言う形の方が私は好きです。
その中でも関口のが良いなぁ、私は。

複数の事件の共通性は毒殺と言う事、しかしその毒が大変特殊なもので連続殺人事件として扱われる。
しかし被害者の共通項がさっぱり見えて来ない。
それが榎木津との関連性が見えて、各事件が繋がっていく辺りはやっぱり構成が上手いなぁと思いました。

実際に殺人を犯した人間は操られていたわけですが、その操っていた、罪を問うことは出来ないけれど真の意味での犯人と言うべき人物もやはり、毒“雫”に操られていたようなものでしょう。
もしそれが手元になければ、一連の事件など起こそうとも思わなかったのではないか。

関口ががんばってくれててホッとする。
与えられた役割上、ひどい目に合いがちな彼、一時は心の病におかされていましたが、相変わらず鬱々としていながらも、何とか一般生活を送っているようです。
・・・と言うか、奥様の雪恵さんが気の毒になってしまうので、これ以上は関口をいじめないでやってくれ、京極先生!!、と思ってしまうのです。

本調子が出なかった榎木津ですが、最後に“真犯人”に「僕は君が嫌いだ。」と言って去る。
“真犯人”の情状など(そんなものはこの事件に関してはないと私は思っているけれども)切って捨てるあたりが彼らしくて、好きです。
たとえ榎木津がこの事件に対して、どんな想いを持っていたとしてもね。




シリーズ本編の方は一通り読みました。
やっぱり長いですよね。
ただ普通は結論だけ書いてあったり、行間にあるものを考えたりするんですが、このシリーズはそう言う事が余りない。
たとえば読者が考えるプロセスを会話のやりとしとして全部書いてくれてあって、ある意味とても親切な小説なので、だから長いと言う事もあるのですが、スラスラと読めるので抵抗感はなかったです。
本が厚いので持つ手が辛い、と言う事は多々ありましたが。(笑

薀蓄の方は、自分が興味がある内容だと楽しめるのですけれど、そうでないとちょっと辛い、薀蓄のシーンも結構長かったりするので。
興味のないものは流し読みって感じでした。
妖怪の話も決して嫌いじゃないと思ってたんですが、余りにも詳しい記述だっりすると、適当に読んでしまいました。

シリーズ通して私が一番面白かったのは『鉄鼠の檻』です。
語り部が関口一人と言う事もあって、流れが掴みやすい。
そして何より、禅や悟りについての薀蓄を楽しみました。
“愉快な仲間達”の一人の木場の登場がほとんどないのが残念ですが、かといって最近の作品の様に増えてきた登場人物をなるべく出そうとするとやっぱり散漫になっている気がする。
『鉄鼠の檻』はギュっと濃縮されている感がありました。
次回作が楽しみですが、今度は榎木津にフルパワーで活躍してもらいたいです。


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