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カテゴリ:金曜日のラララ
前回までの話はこちらです。
金曜日のラララ (1) 金曜日のラララ (2) 夏休みが終わると、夏も終わったような気分になるけど、とんでもない。 今日はとにかく蒸し暑い。 季節はカレンダーの一枚を切り取るようには変わらない。 博志は両手をポケットに突っ込んで口笛を吹きながら、隣りに並んだ私の耳元に唇を寄せ、 「あの二人、いつまで持つと思う?」 私がバッド・トゥ・ミーに入った時、浩二は大喜びだったけど、一向に私が自分に関心を持たずにいるのを悟ると、夏休み前に由美と付き合いだした。 博志はあざけりとも取れる唇の片端だけをグイと持ち上げた皮肉な笑いと共に、「グズグズしてっからだよ」と言った。 でも私はニッコリ微笑み返してあげたものだ。 これで“浩二のお気に入り”扱いされなくなる、肩の荷が下りたってモノだ。 博志が使っているヘアートニックの香りが私を包む。 「ノーコメント」 博志の顔を手のひらでグイと押し返す。 「私、友達にはウェットなの」 浩二と由美は、グラウンドを出てすぐの水のみ場の側にいた。 私達は校舎と体育館を繋ぐ渡り廊下から彼らを見ていた。 グラウンドでは陸上部が百mダッシュを繰り返している。 この暑いのに、よく真剣に取り組める。 合図のホイッスルまで重たい空気に負けて、響きが鈍ってる。 由美はとてもスタイルが良い。 短いフレアスコートのウェアから、こんがりと焼けた長い足が伸びている。 左手をグッとくびれた腰に当てているので、なお更際立つ。 あれは絶対意識してやっているに違いない。 長いストレートの髪を一つにまとめてUPにしてあるにも係わらず、頭が小さくて、私は小さい頃にクリスマスプレゼントでもらったアメリカ生まれの着せ替え人形を思い出す。 しきりに何か由美に訴えている浩二の方は「良い人」そのもの。 バッド・トゥ・ミーの中では、実は浩二が一番のハンサムだと私は思う。 目も鼻も口も、どれも形が良くって、そこに若干の甘さが加わっている。 あの顔で強気に出れば、女なんていくらでもいるだろうに・・・。 由美は右手に持ったラケットをぶらぶらさせて、まさに「私は不機嫌です」と書いてあるような表情。 気が強いと言う噂は本当らしい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年02月16日 22時08分00秒
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