よろず屋の猫

2009/03/23(月)19:34

『焦熱』 リンダ・フェアスタイン著 感想

小説・海外(106)

地方検事補のアレックス・シリーズの十作目です。 あらすじはamazonからのコピペ。 アレックスは、死体の発見現場にいた。 すでに死後数日が経過しており、うだるような夏の暑さで腐敗が進行していた女性の死体には着衣はなく、手足を拘束され、しかも全身に激しい暴力の痕跡が残されていた。 やがて、一人また一人と同様の死体が発見され、さらに同一犯によると思われる行方不明者が……犠牲者となる前に彼女を救出しなければ! 必死の捜査のすえに犯人の手がかりをつかんだアレックスの身に、死の罠が。 マンハッタンの地方検事補のアレックスは性犯罪訴追課長で、本来は殺人は専門外なのですが、殺人事件でも性犯罪が絡んだものには係わることになっている。 で、今回は猟奇的な連続女性殺人事件なんですが、この場合、例え被害者に性犯罪のあとがなくても、動機に性的なものがある場合が多い、ってことでアレックスも参加。 基本的にはどの作品も同じなんですね。 性犯罪が絡む殺人が起こって、殺人課の刑事・マイクと、特殊被害者課の刑事・マーサーと共に事件解決に当る。 そしてアレックスは本来の仕事である、性犯罪の裁判の仕事もこなす。 捜査の過程で、アレックス本人に命の危機が!!。 ・・・と言う流れ。 にも係わらず飽きさせずに読めるのは、展開がスピーディーであること。 そして特に主要三人のやりとりの面白さ、でしょうか。 えっと、先ずアレックス本来の仕事の方の事件。 三十数年前に、容疑者が保釈状態で逃げたので、裁判不成立になっている事件に当ります。 これがもし容疑者が逃げていなかったら、無罪になっていただろうと言う事件。 しかし現在の技術・DNA鑑定によって、犯人を有罪にする可能性が出てくる。 これがほぼノンフィクションなんだそうです。 私は日本に比べればアメリカは、性犯罪に対する意識はずっと厳しいと思っているのですが、そのアメリカにして、たかだか三十数年前はこんなに酷い状況だったのかということに、驚愕しました。 被害者でありながら、裁判の過程で、逆に悪いのは被害者自身であるかのように仕立て上げられてしまう。 読んでで、その被害者の辛さを思うと、悲しみだけでなく、怒りすら感じました。 さて、連続事件の方。 このシリーズが飽きさせずに読める理由として、もう一つ“薀蓄”があると思うのです。 事件に関係する事柄の知識を披露してくれる。 今回は、マンハッタンの近くの島が古くから軍事拠点だったと言うこと。 その辺りをマイクがとうとうと説明してくれて、楽しめます。 アレックスは新しいボーイフレンド・リュクと上手くいってて、ではマイクとは?と言うのが、今後の気になるところ。 私は早くアレックスとマイクがくっ付いちゃえば良いのにとずっと思ってたんですが・・・。 『焦熱』を読んで後では、仕事仲間でいる方が良いかもって気がしてきました。 マイクと付き合ったらアレックスの生活は事件一色になりそうで、ONとOFFがなくなりそう。 これはなかなか辛いかなって。 余談ですが、この『焦熱』の前に英国の女性作家の推理小説を読んだのです。 アメリカ人の、純粋に「正義」と言い切る真っ直ぐさに清々しささえ感じましたわ。 もちろん英国ミステリーに出てくる女性のひん曲がった正義感って言うのも好きですが。 最後に、今作から訳者さんが変わりました。 平井イサクさん、急逝によるものです。 あとがきに、「当時一年の半分をニューヨークで過ごし、アレックスのアパートメントと目と鼻の先の部屋で翻訳を楽しんでする」とイサク氏が『妄執』のあとがきで書かれているとあり、あぁ、そんな描写があったなと懐かしさと寂しさが・・・。 長く楽しませて頂きました。 本当にありがとうございました。 ↓ここからは愚痴・・・。 「わいせつ、もしくは公序良俗に反すると判断された表現が含まれています」が出て、最初に書いた記事がUP出来なかったのですね。 で該当してそうな単語を削ってみたんですけど・・・。 「レイプ」がOKで、「強 姦」がダメって言う楽天の基準がさっぱり分りません。

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