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カテゴリ:小説・海外
現代アメリカを代表する作家のコーマック・マッカーシーの最新作です。
2007年、ピュリッツァー賞受賞作。 コーマック・マッカーシーは映画『ノーカントリー』の原作『血と暴力の国』の作者です。 楽天ブックスにはないので映像はなしで。 内容に深く触れています、未読の方はお気をつけ下さい。 あらすじはamazonからのコピペ。 世界は本当に終わってしまったのか? 滅びゆく大陸を漂流する父と子の壮絶な旅路を描く、巨匠の代表作。 はっきりとは書かれてませんが、たぶん核戦争が原因で破滅した世界。 空も大地も灰で覆われ、冷却化が進んでいる。 それで父と息子は南を目指して旅をする。 植物は枯れ果て、度々彼らが休む森の木々も死んでいる。 通り過ぎる街は既に略奪にあった後で、それでも残り物を二人は必死に探す。 人々は飢え、争い合う、まさに弱肉強食の世界。 父親は時々咳が止まらなくなり、血を吐く。 命が長くないことを予感させる。 その父親が持つ銃の弾丸は、敵を倒すためにあるのではない。 いつか、どうしようもなくなったら、その手で息子を殺すためにある。 父親は自分達が助かるために、自分達を襲う者を殺すことを辞さないし、他人を助けることもしない。 しかし息子は、この崩壊した後の世界で生まれたにもかかわらず、とても純粋で、「助けてあげて欲しい」と父親に頼む。 父親はそれにイラつきながらも、息子の願いを聞いてやる。 それはたぶん、息子の純粋さを愛していると同時に、いつか彼を殺す覚悟をしているからだと思う。 それまでは、と。 しかしその父親も自分に問う、自分は息子を殺せるのかと、と。 息子は度々「自分達は善い人」なのか、と問う。 それが人が人を食べる事実を目撃してから、「僕たちは人間を食べないよね?」と言う項目が加わる。 最初は死体を食べていたのでしょう。 その内に、生きた人間を殺して食べるようになる。 そして生きた人間を食料としてストックする者さえいる世界。 私は読みながら、では「人間を食べることはいけないことなのか?」と考えてみる。 動物は食べないと生きられない。 他の食料が何もない世界で、たった一つの食料=人間を食べることは「悪」なのか?。 動物の一種としての「ヒト」であるならば、それはひょっとしたら「悪」ではない世界なのかも知れない。 けれど「人間」としてやっぱり「悪」、それが人間の築いてきた知性なのではないか?。 要は「ヒト」として生きるか、「人間として死ぬか」の選択を迫られている世界なのではないかと思いました。 ついに父親が力尽きる時が来る。 息子一人、この世界には残せないと、その時は殺すつもりでいた父親。 しかし父親は息子を殺せない。 息子の純粋さに光りを見たから。 この息子の純粋さのおかげで、父親は人間として死んで行けたと思う。 そしてその息子の純粋さを守ったのは、父親です。 命だけでなく、息子の中に在る大切なものを、父親は守ったのです。 アメリカとは文化の違いもあり、分りかねる箇所もあります。 例えば度々出てくる「火を運ぶ」と言う意味が、ニュアンス的にしか、私には分らない。 それでもお勧めの一冊。 出来れば中学生、高校生にも読んで欲しいんですよね。 文章自体は決して難しくない。 内容については、その時に感じたことでかまわないと思う。 年齢を経て、また感じ方が変わっても、それで良いと思う。 ただ句読点がない文章なので、普段本を読まない人には、最初は辛いかも知れません。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年04月13日 21時14分11秒
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