2009/03/08(日)21:22
やきいもと紙袋の融合した匂いと手触りとがさがさ音
子供の頃、寒風吹く寒い日でも家にいることは無く、街中を走り回っていた。商店街の店先に、大きな壷が置かれ、そのまわりに茶色の紙が貼ってあって、「九里より美味い十三里」と筆字で書いてあった。近くによると暖かい気配と焼いものいい匂いがしてきて、ポケットの小銭をまさぐって、1本買ったりがまんしたりした。
そして今。スーパーで大きい焼いも1本買って紙袋に入れてもらう。かじるとこぼれるので紙袋の中でかじる。ハンバーガーのようにかじる。焼いもの匂いと紙袋の紙の匂いが混じりあい、えもいわれぬ秋のような、陽だまりのような、干草のような、いい匂いがする。
スーパーバックのビニール袋が日常茶飯事となってしまったが、ちょっと前(と言っても10年ぐらいか)は当たり前のようにスーパーマーケットからの帰りは紙袋を抱えていたものだった。紙袋ごしに焼いもを握って、がさがさという紙袋の音を聞く。
こいつを熱いお茶で頂きながら、録画しておいた「相棒」とか「昔のテレビドラマの再放送」とかをぼーっとして観ていると、時と立場と状況を、ほんの束の間、忘れる。