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カテゴリ:食べ物
給食のおかずはあまり好きではなかった。牛乳もなんだかぬるくて水っぽくて好きではなかった。だけど、食パン(2枚)と交互に出るこんがり褐色に焼けたコッペパンが大好きだった。パン屋を探してもなかなか、ジャムもクリームも何も入っていない「プレーン・コッペパン」はお目にかかれない。もうそんな、購買意欲を駆り立てない、商業ベースに乗らないものは、日本のどこを探しても売っていないのだと思い込もうとしていた。
ところが、とある街のとある街角に、ひっそりと、昔ながらの木枠の戸に、タイル張りのショウウインドウのパン屋があった。そこでは、給食のとはかなり小ぶりのコッペパン(50円)が売られていた。もちろん、何も入っていない。驚愕と驚喜と訝しい気持ちが混在した気分でパンを買う。気のいい店のおじさんは、「昔から何も変わっていない」と言った。パンを買って外に出ると、おじさんが「こっちのコッペパンの方が新しいから」と言って交換してくれた。 久しぶりのコッペパンは、飽食と過度の味付けでぞんざいになってしまった私の舌を、哀れむように、素っ気無い味がした。「おまえがいくら懐かしんでも、おまえ自身の舌があの味を味わえないのだ」とでも言うように。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.09.13 21:09:47
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