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カテゴリ:主義主張
ネットで「PCR検査」の検索をしていたら、
文春オンラインの3月13日付けの記事を見つけた。 4ヶ月ぶりに書く日記がまた誰かの意見に対する批判になってしまうのは寂しいが(笑)、 かなり大きな違和感を覚えたので書き留めておこうと思う。 「鳥集 徹」という文筆家は、まず "テレビに出る「ウィルス感染に詳しい医者」は決して専門医ではない" という点を強調している。 感染症専門医というのは、感染症学の研修を6年以上受けた上で、 感染症の臨床に関する論文発表や学会報告を行い、 さらに学会の試験に合格した医者だそうだ。 そう聞くと、確かにテレビに出るウィルス感染に詳しい医者とは質が違うように思える。 その上で、鳥集氏は「第一に信じるべきは感染症専門医だ」と主張する。 そして、感染症専門医はみな希望者に検査を受けさせることに反対していることから、 彼の記事のタイトルが【「希望者全員にPCR検査を」と主張するのはなぜ間違いなのか】 となったのである。 記事からリンクされているブログで、感染症専門医の1人である伊東直哉氏が 次の様な理由から「希望者全員にPCR検査をさせるべき」という意見に反対している。 ①検査をするために患者さんが医療機関を受診して、 かえって感染してしまうもしくは感染を拡大させてしまう可能性があること ②検査が陰性だった患者さんの中に一部存在する感染者が、 心の油断から症状があっても外出し、感染を拡大させてしまう可能性があること ③検査目的で安易に受診する無症状・軽症患者さんが増えると、 医療機関の負担がさらに増えて、診療継続が困難になってしまう可能性があること ④新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する特異的な治療薬がないため、 無症状もしくは軽症の人が新型コロナウイルスに感染しているかどうか 診断する価値が乏しいこと その他のリンク先もすべて読んでみたが、 おおよそ各感染症専門医の意見は同じようなものだった。 ダイヤモンド・プリンセス号に乗り込んだ岩田医師は "検査は、病原体の非存在証明にはなりません。「検査は間違える」からです。 従って、陰性が出た後に陽性になる患者が続発しています。" と上記の②をさらに強調している。 また、忽那賢志医師はやはり検査の不確実さのために 「偽陽性」の患者が数多く登場してしまうことを心配する。 しかしながら、素人の私ですらこれらの説明には疑問を感じるのだ。 「偽陽性や偽陰性が出るから検査には意味が無い」というのなら、 最初からPCR検査の存在価値が無くなってしまうことになる。 現場の医師は「検査などどうでもいいから重症患者を助けよう」という考えなのだろうか。 感染者がそれとは知らずに普段通り行動することによって他の感染者を増やし、 結果として重症患者を生み出す危険性もあるはずだ。 それについては彼らはどう考えるのだろう。 ついでに上記の①から一つずつ考察してみる。 ①は、検査の際に病院に行かなければ何の問題も無い。 つまり、ドライブスルー型の検査が広まれば、院内感染は気にしなくてもいいわけだ。 ②は、偽陰性の感染者の割合を考えれば全く論理的でない。 忽那医師は感覚的にPCR検査の感度(感染者が陽性となる割合)は70%程度だと言う。 彼の感覚が正しいとすると、検査をすれば、 感染者の7割は「自分は感染している」と理解する。 要するに、10人の感染者数のうち7人は自宅でおとなしくすることになり、 平然と出歩くのは3人だけということになる。 ところが、検査をしなければ10人中10人が普通に行動してしまうのである。 ③は医療崩壊を懸念するものだが、対策を施すのはさほど難しいこととは思えない。 検査前に、「仮に陽性であることがわかっても、症状が軽い場合は入院できません。 逆に自宅で安静にしなければならず、外に出られなくなります。 ただし、重症化しそうだったら連絡して下さい。」と伝えればいいのだ。 これもただの要請であり、法的拘束力は無いが、 さすがに自分が感染者だとわかったら、それ以前よりは行動が消極的になるだろう。 まあ、外出禁止が怖い人は説明を聞いて検査をやめるかもしれないが(笑)。 ④もどこかおかしい。 「感染拡大を阻止する」という根本的な姿勢が見られないような気がする。 「軽症者が感染を広めて重症者を生むのを防ぐ」という観点に、なぜ立てないのだろうか。 感染拡大ではなく「現場の混乱を阻止する」ことが最優先になっているように思えてしまう。 日本では、プライバシー保護のために感染者の性別や年代を公表しない 全くもってトンチンカンな自治体もあるが、 イタリアではきちんと年代別の致死率を公開している。3月20日時点で、 60〜69歳が4.4%、70〜79歳は13.5%、80〜89歳は20.9%、90歳以上は22.5%。 つまり、80歳以上の人が感染すると10人のうち2人は確実に死ぬということである。 この3日間ほど、小・中学生の授業の初めに私は生徒達に伝えている。 「君たちの中に感染者がいないとは言い切れない。 仮にこの中の誰かが感染者だとしても、君たちが死ぬことはまず無いが、 おじいちゃんやおばあちゃんが感染したらどうなるかわからない。 感染拡大がおさまるまではあまり遊びに行かない方がいいかもしれないね。」 子供達だけに限らないだろう。 大人でも「年老いた父母に移したくないから自分が感染しているかどうか知りたい」 と考える人達がいるはずだ。 そういう善意からの願いすら、感染症専門医は「不要」と切って捨てるのだろうか。 とにかく私は、ドライブスルー型のPCR検査ができる限り早く広まってほしいと思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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