アメリカ人作家も微妙にミスっているが…
全米オープンテニスにおける大坂なおみの優勝に対する観衆の態度に関しては、アメリカでもかなり問題になっているようだ。日本のメディアは大坂なおみに同情するアメリカ発の記事をここぞとばかりに拾い上げ、紹介している(笑)。モーリーン・キャラハンという女性の作家がいる。彼女が今回のセリーナや観衆、そして全米テニス協会の態度に対し、「It’s hard to recall a more unsportsmanlike event.」(これ以上スポーツマンらしくないイベントを思い出すのは難しい)と酷評している。一昨日も書いたように、確かにセリーナもやり過ぎたし、それを応援する観衆のブーイングも行き過ぎたところがあった。キャラハン氏の言い分は正しいと思う。だが、英語の記事を読み進めていったら、ここでも「ええっ?」と思う表現が見られた。At the awards ceremony, Osaka covered her face with her black visor and cried.The crowd booed her. これはわざと言っているのだろうか。「セリーナの言い分を後押しし、審判や協会側にブーイングするのは つまるところ、大坂なおみにブーイングするのと同じことだろう。」とキャラハン氏は言いたいのかもしれない。だが、再度言うが、あのブーイングは大坂選手に対してのものではない。このキャラハン氏の文章を読んだセリーナファンは「このアイルランド系アメリカ人の作家は、バカなのか?」と感じるはずだ。ただ、この点以外に関してはキャラハン氏の言い分は正しいと思えた。全米テニス協会長のカトリーナ・アダムズ氏のセレモニーでのスピーチにはPerhaps it’s not the finish ever we were looking for today,but Serena, you are a champion of all champions.(キャラハン氏の文章では finish の後の ever が入っていないが、 映像を見るとアダムズ会長は ever と言っている)という言い回しがあった。私は表彰式のこのシーンををYoutubeですでに見ていたが、最初に聞いたときはPerhaps it’s not the finish everyone looking for today,(文法的には不正な文)と聞こえてしまったので、さほど大きな問題発言だとは感じなかった。際どい表現だが、「一般的なテニスファン」という意味に取れなくもないか、と思ったからである。しかしながら、全米テニス協会長のセリフにおいては、everyone と we では天と地ほどの差がある。we だと「テニス協会がセリーナの勝利を望んでいた」ことになってしまう。結局、超スーパースターであるセリーナのご機嫌を取るために会長が必死で「ほめ殺し」をしようとしたわけだ。そして、勢い余って「私たちが今まで求めていた結果ではなかったが」と言ってしまったのである。確かにこれは恥ずかしいことだ。すべての選手に対し公平でなければならないテニス協会の会長ならば、たとえどれだけのスーパースターであろうとも、絶対に「その選手に勝ってほしかった」などと言ってはいけない。目の前で聞いていた大坂選手もひどく落胆しただろう。もしかしたら、その直後の大坂選手の「お詫びのセリフ」はアダムズ会長の言葉が引き出したものだったのかもしれない。「大坂に対するブーイング」という勘違いは日米どちらのメディアでも見受けられる。だが、それが協会に対するブーイングであっても、確かにスポーツマンライクではない。セリーナの抗議と観衆のブーイング、そして協会長の発言が大坂選手の優勝に水を差してしまったのは間違いないところだろう。