さいたま市の保健所所長の発言は正しい
私はここ数日、過去の自分の書き込みを大いに反省し、恥じている。3月27日の日記に「希望者にPCR検査をさせないのはおかしい」と書いてしまったからだ。今の日本と世界の状況を見つめ直すと、新型コロナウィルス感染防止のための日本の対処法が明らかに正しいことがわかってくる。初め私は、PCR検査をなかなかさせない日本の医療界のやり方を見て、「臭いものには蓋を」という醜い島国根性の現れではないかと思った。あたかも感染者数を少なく見せようとしているかのように感じられたからである。ところが、最も肝心な死者数を見ると、人口に対する日本の死者数はかなり少ない。ヨーロッパでは優秀と言われているドイツや、見習うべきと評される韓国よりも、人口比の死者数は日本の方が少ないのである。ドイツ、韓国のどちらもドライブスルー型の検査を積極的に採り入れたため感染者はかなり増えた。ドイツの感染者が10日時点で116,801人、韓国は10,540人。日本は検査数を抑えていたためクルーズ船を含めて6,900人(11日午前10時半現在)。だが、8割は軽症で終わると言われている新型コロナウィルス感染症にとって、大切なのは感染者数ではなく死者数の方である。ドイツが同じ10日時点で2,451名、韓国が208名であるのに対し、日本はクルーズ船を入れても132名しかいない。人口100万人当たりにすると、ドイツは29.5人、韓国が4.01人、日本は1.05人となる。世界一の座は0.25人の台湾に譲るものの、日本はかなり健闘している国だと言えるだろう。これにはICU(集中治療室)のベッド数の少なさが関係しているようだ。日本の病院全体のベッド数は世界一多いが、ICUのベッド数は米・独・伊・仏・韓・西よりも少ない。そのため、感染者を全員病院に連れてきたら、あっと言う間にICUは埋まってしまうと医療界のトップは考えたわけだ。医療界トップはできるだけ入院患者数を減らしたいから、PCR検査のハードルを高くして、感染者を可能な限り増やさないようにした。彼らは最初から8割は重症化しないというのを見切っていて、重症化した患者だけを入院させ、救える命を救おうと考えたのである。ただ、いやおうなく増えてくる感染者は自宅待機よりもなるべく隔離した方がいい。そのためには専用の施設を確保しなければならない。今、やっとホテルなどを隔離施設として使える目途が立ってきたから、「積極的にPCR検査を増やす」と安倍首相が言い出したわけである。以前も書いたが、感染爆発によりホテルが足りなくなったら、最後の手段としてオリンピックの選手村を考えるかもしれない。すでに販売が決まっているマンションとしての資産価値が下がる分を国が補填できれば、それも可能となるだろう。感染者の数をできるだけ抑える↓症状が出た人だけ入院させる↓重症者への正しい治療をする↓死者数の増大を回避する↓軽症者のための隔離施設を確保する↓PCR検査を拡大する↓軽症者は隔離施設へ送るこのシナリオを彼らは最初から想定していたのだろう。そして、そのシナリオ通りここまでは来ていると言えそうだ。日本の医療界トップの先見の明に感心せざるを得ない。浅はかな考えで批判してしまったことを、私は今更ながら反省している。ただ、感染症専門医にもまるで責任がないというわけではない。素人がいくらでも突っ込める理由を述べ立てるから突っ込みたくなるのである(笑)。今検索しても、以前引用したブログとは別の文章が簡単に見つかる。①PCR検査は感染していても陰性と出ることがあり、 陰性だから安心と勘違いした人が感染を広げる。②検査のために人びとが病院に殺到すると、病院が大きな感染源になる。③軽症者が病院に押し寄せると人手や病室が奪われ、重症者の治療に集中できなくなる。この中で正しいのは③だけだ。①は検査をしなければ10人中10人が感染を広げてしまうから全く論理的でない。②はドライブスルー型検査をすれば回避できる。これらは以前も書いた通りだ。医療界や政治家は③だけを徹底的にアピールすればいいのに、①や②を先に言うから国民が納得しないのである。「軽症者を全員入院させたら100%医療崩壊が起こる。 大切なのは感染者を知ることではなく、重症者を死なせないことだ。 国民全員が自分が感染している可能性があるという意識を持ってほしいが、 8割は無症状か軽症のまま終わるのだから、極度に恐れる必要は無い。 今までに経験したことがないほどの咳や持続する発熱、 嗅覚障害・味覚障害などが起こってからPCR検査を考えるべきだ。 無症状の間は、隔離施設が整うまで、自分が感染しないよう、 人に感染させないよう、それぞれ自覚を持って行動してほしい。 それが日本の死者数を最小限に抑えるための一番効果的な方法だ」という内容のセリフを、テレビなどで安倍首相が訴え続ければ良かったのだ。最近ニュースになったさいたま市の保健所所長の言葉は以下のようなものである。「病院があふれるのが嫌だったので、少し厳しめに、 本当に陽性になりそうな人を検査する方針があった」批判を浴びているが、これはまさしく真実である。そして、このやり方が世界と比べたときの死者数を確実に抑えているのだから、今のところは「成功モデル」と呼べるのである。それなのに、さいたま市は「保健所の所長が新型コロナウイルスの検査を限定的に行っていたと 誤解を招く発言をした」「今後、新たな機器を購入するなど検査態勢を拡充することにしている」などと無意味な釈明をしている。検査態勢の拡充は、隔離施設の目途が立ってきたからできるのだ。最初からPCR検査を積極的にやっていたら医療崩壊が起こり、現時点ですでに死者が1,000名を超えていたかもしれないのである。正しい対策だったのにそれを誇らず、今後の方針で綺麗事を言おうとする。まったく何という頭の悪さだろうか。もちろん、最初から気付かなかった私もかなり頭が悪いのだが、日本モデルがドイツモデルよりも韓国モデルよりも成功しているということを、医療界や政府が強調してくれていれば、私ももっと早く真実に気付いていたと思う。メディアも同様である。人口比での死者数の少なさを、声を大にして叫んでほしい。政府批判を繰り返すだけの昼のワイドショーのような番組ばかりでは、メディアも「私らは頭が悪いんです」と開き直っているようなものだ。日本人はいつの間にか、自分たちの優れた点を誇れない民族になってしまったのかもしれない。こんなことを書くと批判を受けそうだが、この辺の現在の日本人の習性には、徹底的な自虐史観の刷り込みが関係しているような気もする。とにかく、今の日本は素晴らしい数字を残しているのだ。人口比の死者数がドイツの1/30、韓国と比べても1/4であるという事実を、我々は胸をはって世界に訴えていいのではないだろうか。