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【報告】子ども&まちネット名古屋学習会

NPO法人子ども&まちネット 学習会

「新しい子育て支援を考える
     ~現場の支援者が知っておきたいこと、そして未来」
 

2005年 7月29日 午後1時30分より  
場所:名古屋市女性会館
講師:淑徳大学総合福祉学部教授 柏女霊峰さん

 

※7月29日に開催された学習会のうち、後段で講師の話された「新しい社会保障のかたち」について抄録を掲載します。この日、時間の制約の厳しいなか、コンパクトに現代の課題と今後についてお話をうかがいました。社会保障の薄い子育て、子ども支援について抜本的な解決策をどう探るのかについては、さらに学びを深める必要があるように思います。なお当日の資料コピー、講座要録が事務局にありますので希望者はお知らせ下さい。

子育て支援のためのお金は
社会保険と税の両方が望ましい 
 

(前略)これまで見てきたとおり、次世代育成支援・子ども家庭福祉施策は平成17年度から新たな展開を始めることになりますが、それは多くの課題を抱えての船出ともなります。  

とくに高齢者の福祉施策からみた次世代育成支援・子ども家庭福祉施策の特徴は、まだまだ都道府県中心であり、職権保護が中心、施設が中心で(在宅福祉サービスは事業費は出るようになっているが給料は出ない、でも保育園の先生の給料は税金で出ています。)、それから事業主給付が中心です。

つまり、つどいの広場をやっても、つどいの広場の事業者に補助が出され、利用者に対しては補助が出ない。これが高齢者や障害者の場合はそうではなくて、利用者に対して補助されることとなっています。  

それから税金が中心。社会保険のお金はほとんど使われていないわけです。さらに、保健福祉と教育が分かれていて、力がそがれています。  

そして、介護保険による高齢者福祉と今回の障害者自立支援法案とをみると、障害者福祉もいずれは社会保険の仕組みにしていこうといくことが念頭におかれています。  

つまり、介護保険はいま40歳以上が保険料を払うことになっていますが、これを、たとえば、20歳以上が払うことにして、その代わり障害を負った場合は、社会保険の仕組みでサービスが受けられるようにするというふうに将来的にしていこうと考えられています。そのために介護保険の仕組みと障害者の保険の仕組みをいったんほぼ一緒にしておいて、将来的に同じお金で保障していこうということを考えているわけです。そこに子どもが乗っちゃう。障害児はそういう仕組みに乗る。ところが、健常な子どもはそうではないこととなります。子どもが障害かそうでないかで、サービス利用のあり方がまったく異なってしまうこととなるわけです。  

そうしたことを考えると、次世代育成支援、子ども家庭福祉も大人と同じような仕組み、つまり、市町村を中心にして、契約を中心にしてもいいと思います。ただ、子どもの場合は自分で契約を結ぶことができません。保護者が代わりに契約を結ぶこととなるわけですが、虐待の子どもなんかもいますし、それなりに職権で保護することも必要です。契約と職権保護とのバランスが必要になります。

また、施設サービスと在宅サービスとのバランスもとれるようにしていく必要があります。しかし、今は子どもの施設入所は職権保護が中心で、あまりにも偏っている。これを変更して、個人給付、契約を中心にして虐待などの場合は職権保護による仕組みとしていかなければならない。そして、社会保険と税の両方を中心に置くこと、保健・福祉と教育の統合、こういう方向に就学前保育・教育の仕組みもシフトさせていく仕組みが大事なのではないかと思います。子どもと大人の福祉の仕組みを一体化させていくのがいい、誕生するときと命を終えるまで、同じような仕組みでフォローすることが必要ではないかと思っています。

少子化対策は年金、医療、介護、この三つを充実させるための手段として出発しました。子どもがそのための人材として考えられているわけです。年金は高齢者のものとして、医療も高齢者が高額です。介護は障害者と高齢者のもの、つまり、この三つ(これはほとんどが社会保険の仕組みです。)を存続・充実させるために少子化対策がある。だから少子化対策は税金なのですね。国策だから。  

そうではなくて、子どもの育ちや子育てという営みそのものが大事なのだから、年金、医療、育児、介護、この四つを並行的に充実させていくということが大事なのではないか、それを四つ葉のクローバーにたとえたのですが、三葉よりも、そこに育児が入った四葉のクローバーによってこそ、人間の福祉が図れるのではないかというのが、四つ葉プロジェクトの趣旨になるかと思います。

「年金、医療、育児、介護」
これからの社会保障は四つ葉のクローバーで
 

「4つ葉プロジェクト」というのが、(子育て環境研究所の)杉山千佳さんなどを中心に今始まっています。そのチラシに、子どもの社会保障はこんなに少ないと書いてあります。これは社会保障のお金ですが、この中で、子どもに向けられているお金がわずか3.8%ということで、当然のことながら世界的に見ても、医療、介護、年金が中心という社会保険が高齢者中心となるのは当たり前のことですが、それでも日本は他国より少なく、もう少し子どもに向けられる額をもっと増やしていこうではないか、ということをいっています。つまり、年金、医療、介護、それにもう一つ、子育てを入れて、社会保障は四つ葉のクローバーでやっていこうと。これは制度から見た四つ葉のクローバーです。

もうひとつ、NPOの方たちが立ち上げようとしているのが、この四つ葉のクローバーを実現していくためには、四つのモットーを掲げよう。当事者主体、現場主義、期間限定、現実主義,こういった視点を持ちながら運動をしていきましょう。ということが書かれています。  

次に子育て家庭に振り向けられている財源の偏りについてです。現在、0歳児の94%は家庭で育てられている。増えたといっても1割弱ぐらい。保育所に入所している子どもたちの割合は全体から見ると少ないわけです。だけども、保育所を使っている家と使っていない家との子ども一人当たりの給付月額を税金で換算すると、こんなに差があります、ということが書かれています。  

ただ、その保育所の分を家庭で子育てしている人にまわせということになると、今度は保育料を上げろという話になってしまいます。また、場合によって、女性が家庭で子育てすることを政府が推奨することにもなりかねない。同じパイの取り合いをするのでなく、もう少し子どもの方に使える額を全体的に増やしていこうと考えることが大切だと思います。そして、そのために、税金はもちろん使ってほしいが、それと同時に、社会保険の仕組みを活用して、高齢者に使っている分をもう少し子どもの方にまわすことはできないんだろうか。そういうことを考えることが大事なんではないですか、ということをいっています。

児童手当の財源の見直しと、
それを「子ども自身」に使うために

それから、児童手当のことがここに書いてありますが、それについても説明を加えたいと思います。児童手当というのは、企業等に勤めている方については、国の負担分は、企業が一定のお金を出し大きなお財布をつくってそこから出しています。厚生保険特別会計というお財布です。そこに日本のすべての企業が一定割合を拠出しています。そして企業等に勤めている方の児童手当はこのお金から出されているわけです。また、その一部が児童育成事業というサービスに使われています。このサービスで、たとえば学童保育や延長保育の基盤整備が行われています。  

つまり、企業が親の仕事と子育ての両立を支援するために必要なサービスを負担しているわけです。これも社会保険の仕組みとあわせて考えていくことが必要と思います。さらに、育児休業中の所得補償は雇用保険からなされて企業負担が導入されていますが、一方で、乳児保育を利用すれば保育料以外は税金で賄われます。つまり、同じ子どもを育てる制度なのに財布が違っており、これも、育児休業を増やすという仕組みにはなっていません。こうしたことを全体として考えていくことが必要なわけです。  

2003年8月に、厚生労働省が設置した次世代育成支援施策のあり方に関する研究会(柏女や杉山さんも参加。)が報告書(「社会連帯による次世代育成支援に向けて」)をまとめているのですが、そこで、子どものために使うお金をもう少し増やしていくための方策を提言しています。でも、まだ実現にはいたっていません。これからです。

いずれにしても、子どもの福祉はいま大きな曲がり角に来ているといえます。その曲がり角のなかで、いまはまだ十分でないために、みなさんのような子育て支援活動、すなわち、保育園、幼稚園に続く第三の場を担っていらっしゃる方々が難儀をしていらっしゃるわけですが、そちらにもお金が回ってくるようにみんなで考えていかなければなりません。   

*柏女霊峰さん…1952年生。千葉県児童相談所、厚生労働省児童家庭局を経て現職。日本子ども家庭総合研究所担当部長。著書に「家族援助論」「次世代育成支援と保育」「現代児童福祉論」など多数。

*4つ葉プロジェクトに関する資料請求、問い合わせは
〒168-0071東京都杉並区高井戸西2-7-40、B-202 子育て環境研究所内    みんなで子育て推進委員会
URL http://plaza.rakuten.co.jp/yotubaproject/
FAX 03-5336-6808



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