南アフリカ報告
南アフリカから帰りました。1/29に第1回目の専門家会議は、南アフリカ各地から19名が集まり、ヨハネスブルグにて開催されました。会議の内容はまた別の機会としますが、南アフリカの滞在期間中で一番大きかった印象は、「社会格差」でした。「社会格差」や「貧困」というと、貧しい側の人だけが大変という印象があるかもしれません。ところが、格差が広がると、それはすべての人たちの暮らし方に影響してしまうのだということを知りました。犯罪などを恐れて1980年代以降に取られた対策は、外部から人が入れないようにする、町自体の「ゲーテッド・コミュニティ」化でした。「ゲートの中の安全」というのは幻想ではないのか?とも思いましたが、あらゆる住宅を取り囲むフェンスには、電線が張られたり、カミソリの刃のようなものがついた鉄条網で覆われているのでした。期間中、ミニバスを運転してくれていた運転手さんに聞くと、だいたい60から150世帯くらいの一軒家がひとつのコミュニティを形成していて、「子どもだけでは絶対に外には出さない」ということでした。誘拐やレイプという犯罪は、都市部、農村部に限らず、とても多いというのです。学校に行くにも、ショッピングセンターに行くにも、すべてが車を利用した「ドア・ツー・ドア」の世界。こうなると、すべての子どもの経験は「どのゲートの中に住むのか」ということと同じように、「お金で買うもの」となっていくのです。日本でもゲーテッド・コミュニティは生まれ始めています。そして、「未知の他人から受ける危害」に敏感な社会が生まれつつあります。南アフリカの社会格差や貧困は、個人の問題なのではなく、社会全体の人々の暮らし方に影響する問題でした。私たちにとっても、「社会格差は、想像を絶するくらいに強烈に子どもの環境を変えてしまう」ということを突き付けられるのは遠い未来ではないのかもしれません。