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バス停でバスが来るのを待っていると、道を挟んだ向こう側のバス停に彼女がいた。同じ場所で同じ目的でお互いにベンチに腰掛けているのに、二人はほんの少し目的が違った。ぼくが行くのは丘の上の駅、彼女はおそらく街に出るのだろう。
例えば恋人同士だから、例えば愛し合ってるから……? 同じときを過ごして同じレストランで一緒に食事をして、同じ話題を語り合い、ホテルに行ったりどちらかの家に泊まったりして、手を繋いで、あるいは肩を抱いて眠りにつく。それで安心感が得られるなら、愛する人を監禁しておけばいい。しかし現実はまったく別のところにあるのだろう。 同時にバスが来た。彼女が乗り込み、ぼくもバスに乗り込んだ。二枚の窓越しに彼女の顔を見た。ほんの少し笑っているような気がした。ぼくもほんの少し笑ってみた。 彼女が何か言ったような気がした。 サヨウナラ……? じんわりと涙が出てきた。 隔てた二枚のガラス窓。 彼女の声はぼやけていて、ぼくのところまでは届いてこなかった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2004/11/09 05:55:30 PM
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