場末の『Ｂａｒ』にようこそ

ふらりと覗いた洋服やさんでジャケットを一着買ってしまった。
あまり興味がないから服などは滅多に買わないのだが、どういうわけか無性に欲しくなってしまった。
にこにこと試着をしていると、内側に小さな傷を発見。
しかし気に入ったものは、これ一着しかない。
「じゃあ二割引きでどうですか？」
どうせ酔っぱらってそのへんを引っかけるんだから……店のオネエサンに言われて、即座に金を払った。

それを着て街を歩くと、少しだけ幸せな気分になった。
レンタルビデオ店に行って、スーパーで買い物をして、文具屋さんに寄って帰ってきた。見ると袖に値札がついたままだった。
ちょっぴり不幸せな気分になったが、やっぱりそれでも少しだけ幸せだった。