『九日間の女王さま』
2022/01/29/土曜日/朝は曇り〈DATA〉株式会社すぐ書房/カーリン・ブラッドフォード訳者 石井美樹子1991年11月20日初版第1刷発行1987年度カナダ総督賞受賞作品〈私的読書メーター)〈ナショナルギャラリーマストシーの一つ「レディ・ジェーン・グレイの処刑」。19世紀作の画名はレディだが英王室は最初の女王と見なすとか。離婚のためにカソリックから宗派替えしたヘンリー八世亡き後、教会、貴族大衆含め宗教的大混乱の中、嫡男エドワードは早世。姉のメアリーかエリザベスが後継、のはずが権謀渦巻く権力闘争の中、騙し討ちのようにジェーンが担ぎあげられる。学問好きでギリシャ語でプラトンを読み、何よりも信仰と王の義務と議会を重くみる、王侯貴族中最も教養と品位を持ち合わせた少女は16歳で処刑台の露と消えたのだ。〉読メで、小学生の時にこれを読み衝撃を受け、何度も読み返してはナショナルギャラリーの絵を見に行くことを夢見て、10数年後とうとう思いを果たした、と投稿されている方がいた。何かとの出会うことの妙味というか、運命的な決定的な瞬間を持てることの僥倖とはこんなことなんだろうと思わされる。私は背景も知らず憧れもないままにこの絵を何度か見た。未だに記憶しているくらいだから絵そのものが訴える力は感じたけれど、所詮それで過ぎ去ってしまった。この本を読むと確かにもう一度「レディ・ジェーン・グレイの処刑」をじっくり見たいなあと思うのだ。ケストナーが「何」で泣いたかより「どれだけ」泣いたか、それが重要だと『飛ぶ教室』の序で書いていたと記憶するが、例え原因は些細なことであっても激しく魂が揺さぶられる、そんな体験は決定的なことではないだろうか。そこに大人も子どもも高尚も低俗も差異はない。真実の体験のみがあるのだろう。