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テーマ:読書(8135)
カテゴリ:本日読了
2021/12/21/火曜日/気持ちの良い晴
〈DATA〉 毎日新聞出版/加藤陽子 2021年7月30日第1刷 2021年9月5日第3刷 〈私的読書メーター〉 〈折々に新聞紙上では目にしたが『それでも日本人は戦争を選んだ』以来。先の本は課外授業的性格上、著者のエモーションは排除されたが本書は著者の人間像が熱く伝播する。例えば宮古島の夜の海に戦時中漂流した兵士を思い、古代大陸の進んだ文化に憧れ漕ぎ出る祖先を夢想、或いは女子大生時代の勘違い男子の話など。とはいえ日本近代史の積年の学問資料研究により鍛錬された専門家としての揺るぎない勁さが心棒にある。関心の範囲は驚異的読書外に漫画も劇も映画も。飾りじゃないのよ彼女のキャリアは、は、汎〜、私思うに彼女は今や貴重な愛国の人〉 やはり注目は日本学術会議のメンバーから外されたことに関して加藤先生がどのような発言、態度を示したか、に集まるのだろう。もちろんそのスキャンダルにも触れている。 先ず第一章、国家に問う〜今こそ歴史を見直すべき、で歴史の皮肉を指摘する。 日本学術会議が生まれた背景は先の対戦で戦争協力した学者研究者の痛烈な反省に基づく、ということから始まり、 戦前ノーベル賞候補でもあった科学者仁科氏の敗戦の総括を引いて、彼のいう英米科学者よりも日本人科学者の人格的に劣る所に注目したこと。 並列の人文系代表にはなんと折口信夫を挙げているのだ。彼は東京大空襲の最中も大森だったかの住まいから一歩も逃げず同性愛を貫いた御仁だ。 その折口の筆記した英米青年の十字軍的情熱についてこの戦争に努力したなら日本に勝ち目はないと見ていたことを記述している。 そして導き出したのは「いかなる国家も主権の行使が普遍的な政治道徳を破るような場合、主権を行使してはならない」との人類ベースの価値だ。 そのような価値判断の研究こそ歴史学者ではないか。そのバックボーンには憲法23上というものが存在している。 戦後幾つの内閣府首相が登場したかしれないが、本来微動だにしないのがこのイデアであるのに、それがぐらついている今日の心許ない有様に愕然とするのは私のだけだろうか。 加藤氏には潔さよりも強かさを身上として学者の道を歩いて頂きたく願う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021.12.23 19:59:27
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