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2022.01.22
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テーマ:読書(8205)
カテゴリ:本日読了
2022/01/21/金曜日/早朝寒し、晴

〈DATA〉
株式会社作品社/編者 安西篤子
1991年11月25日第1刷発行
1994年7月20日第4刷発行
日本の名随筆 別巻9

〈私的読書メーター〉〈1991年初版だからまだ31年。だのに、この古色然とした風貌内容を怪しみ、過年の電脳変幻世界が思われ眩暈する。エッセイ選者が実に気が利いている。矢張り卓越しているのは小林秀雄「真贋」だろうか。氏は良寛の「地震後作」の詩軸を得て得意満面、が良寛研究家の知人から越後の地震後、良寛はこんな字は書かないとばっさりやられる。で氏も名刀で掛け軸をばっさりバラしそれを肴に夜更けまで二人して酒を呑む。凄まじい。私の好みは井伏鱒二、加藤楸邨、自作土偶の話、猿投などか。実は先日良寛の地震後作を見たのだが果たして真贋いかに。〉

芝木好子を読みたいと考えていたところ、この随筆集の中に彼女の名を見つけ喜ぶ。加藤楸邨発見の喜びも加わった。

氏の「骨董夜話」は6つの掌編から構成される。其々タイトルを付し、初硯、もう一つの世界、からむしの昔、達谷の銘、月下信楽、掌中仏。

それらには俳人らしく、氏の句も添付されている。全体がその表題に似つかわしい静けさと深まりをたたえ、同時に氏の人間的魅力が伝わってくる。

長く身辺にある硯について。戦前の中国開封の古い城内で出会った軍人とのたった一度お茶を共にした出会いの、いわば形見として手渡された端渓硯。
それが東京空襲の最中、一刻一瞬を俳句に凝集するしか明日のない日々の中に入り込んだというのだ。

自分で求めたモノに非ずして、自らの生命にも等しい己が創作を描き付ける筆記用具、硯。

ただならぬ関係だ。このような出会いは余程の縁を結んでなければ生じ得ない奇瑞であろうか。詩人は「一日が終わってさて夜を迎えるというような時、暗い机の前でしずかにこの硯の面を撫でていると、かつてこの硯を持った代々の人々の思いがひそかに胸中を去来する」ような気持ちを述べる。

ー 初硯ひとひらの雪載りにけり

初夢、初詣、初硯。取り止めのない日々に句読点を入れて、新たまる心のありようを寿ぐ我らの暮らしの中に不動のように思える、重持ちする石の硯。そこにひとひらの、まるで己が命の如く儚い雪が淡く触れる刹那、うたが生じる

そんなふうに感得、鑑賞するのだろうか。

「もう一つの世界」は、昼の生活では掴みきれないもう一つの世界を生み出してくれる枕の話。氏が墨台にしていた陶枕がやがて本来の用途に戻っていく様子が可笑しい。そういえば、ル・グゥインの『夜の言葉』ももう一つの世界につながるエッセイだった。

「からむしの昔」 筆算として用いたらさぞや良かろうと骨董店の灰皿に執着するも商品ではないと断られてみれば、それ以上先へは進めない。ところがこれもちょっとお世話する件があり頂戴することになった。何の用途か誰も分からなかったのを鮮やかに開示したのは奥さまだった話。その反応が氏の教養や品性の健やかさを伝えて気持ちよい。

「達谷の銘」  衝動のように湧き上がるギリギリ簡素な暮らしへの憧れ、そんな時日本の辺地やシルクロードなような乾燥地に出かけるという詩人の心。その100分の1くらいは私にもあり、荒波が寄せ来る、木も生えないような岩だらけの北の島嶼へ旅することを夢見る。

氏の焼き物への好みもそのようであることが、次の「月下信楽」へと展開される。

最終「掌中仏」、これもまた敗戦色濃い昭和19年、従軍僧となったお坊さんが別れ際に氏のポケットに入れたものという。何か託さずにはおれぬ、加藤楸邨とは人をしてそのように思わせる、そんな心のありようの詩人なのだろう。

モノとの出会い、或いは骨董というものの本質を言葉を弄さず伝えるのは技量にあらずして、氏の心と見た。





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最終更新日  2022.01.22 08:21:16
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