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2023.09.16
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テーマ:読書(9566)
カテゴリ:本日読了


2023/09/16/土曜日/夏が終わらない




〈DATA〉 白水社
著者 矢野誠一

2023年3月5日  印刷
2023年3月18日  発行



〈私的読書メーター〉藝能評論家という肩書きも珍しい。敗戦時10歳で、まもなく麻布中高に進んだ著者は映画クラブで鳴らし、下町の遊び慣れた同級生の薫陶を受け芝居遊びに明け暮れた。日々の暮らしのエピソードはいつか観た芝居、歌舞伎、文楽、落語、新劇、ミュージカルの一コマにピタリとハマる。芝居が人生か人生が芝居か、境目なく捻合わさった一本の紐の如く。茶人だった祖母が普請した数奇屋の実家の隣家表札「寓」には近衛文麿のお妾さんが棲んだ。敗戦後ひっそりと姿を消したら長谷川一夫一家が入居した。北村和夫エピソードに笑う。昭和の時代感たっぷり。〉


著者、敗戦の年に10歳ならば、今現在は88歳。
米寿だ、目出度い。

お仕事仲間はずいぶんと電子化されてしまったが、氏は未だにペリカン万年筆。
パソコンはおろか携帯電話も持たない。
もっぱらファクシミリでやり取りだとか。

電脳化について何度か逡巡があったようだが、それらの機能をマスターする時間があれば1ページでも原稿を書きたい、が心情だという。


賢明だ。君子である。
君子、危うきに近寄らず。


私め小人。
PCすなわちパーソナルコンピュータが黒白画面を脱したOS初期の1995年を激しく思い出す。
もっともMacパクリと言われたが。

それは富士通PCだった。
何度初期化嵐を見舞われたか。消えたデータ、ソフトウェア再インストール、どれだけ空しく時間を浪費したか。その時間でどれだけの本が読めたか。
データ処理も通信速度も、もしもし亀よの時代。

見よ、今はPCを開くことさえ無い。スマホ一択だ。

さて、氏の話である。

今の今まで組織に属さず自尊自衛の自営業。自らも役者をやったり演出をしたり文章を書いて戦前戦後を生き抜き、舞台をずずずいーと眺めてきた目利きの、肩の凝らない息抜き人生。妙に懐かしい。


ご近所にご隠居さんがいなくても、こんな本のページを開けばたちどころに現れる、ご隠居さんが。





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最終更新日  2023.09.16 11:44:01
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