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テーマ:読書(8960)
カテゴリ:本日読了
2025/01/07/火曜日/雨のち晴
![]() 〈DATA〉 出版社 徳間書店 著者 吉田大洋 1980年5月31日 初版発行 〈私的読書メーター〉〈味読すると出雲口伝の富氏の名前、お。となる。口伝が著者の見解の資料的扱いであることは不満なれど日本古代王国の様相が出雲を中心に全体的に俯瞰できる。明治以降危機に瀕したのは仏教界ばかりか、出雲大社神事を交代に勤めていた北島家と千家家にもあった。以降千家の専任となる。千家は天孫族が遣わした斥候アメノホヒが始祖、出雲神族はクナトノ神が祭神で、口伝ではドラビタ人というから驚きだ。そこに砂鉄を求め中東から朝鮮半島にいたスサノオらが、騎馬民族ヒボコ新羅系らが渡来し、乙巳の変、壬申の乱を経て倭漢藤原一族が望月を詠う迄に〉 著者案内に満州生まれ、とある。 ご縁のあった方は京城生まれ、だった。 日本が大陸にぼわーと広がったほんの短い、ほんのちょい前の時代のことだ。 そんな方はもちろんそれ以降生まれて来ない。 もはやその国も地名も地上に存在しない。 ヤマトと呼ばれた土地に群雄割拠して、我こそこの土地の王であると覇権を争い、謀略と血塗られた時代があった。 彼らはどこから来たのか。 幸いにも神社があり、この国の古い時代を知る手掛かりがそこにある。あるいは、口伝のように語り継がれた一族の歴史がある。 トーテム、家紋や地名の中にもヒントは満ちている。 著者は大神神社を訪れた時の違和感から古代出雲に関心が芽生えたというが、私も大神神社と諏訪大社に共通するご神体や蛇の存在に共通の印象をもち、御祭神は何かに関心を抱きながら神社訪問がぐっと増えた。 その根本に 素朴な疑問がある。すなわち 日本人とは何か 幕末の長州人の荒々しさは、歴史を知れば知るほど私には日本人とは思えない一面が感じられたが、彼らがヒボコ系であるとするなら妙に納得がいく また伊勢神宮に祀られているアマテラスの違和感、あのキーンとした天孫族の存在も直観的に親近感が湧かない。それは京都人にも通じる何か、である。 言ってみれば他者を見下す、あの感じ。 大国主が手に入れた幸玉、和玉 あのような在り方が私にとっての日本に近しい。 ところでオオクニヌシとは代名詞であり、17代に渡るとか。故に別名のオオナムチ、ウツクシタマ、アシハラシコオ、ヤチホコ、オオモノヌシなどなど沢山の異名をもつ。 しかし何とまあ、大国主らの一族である出雲族は元は中東のシュメールの地に発するという。それがインドまで逃れて来たのは残忍なアッシリア人の征服による。 高度な文明も破壊的な攻撃を受けては風の前の塵に等しいのだった。 彼らドラビタ人は現地に溶け込み、医療や農業や機織りを伝えながら混血し、遠く日本まで辿り着いたのだという。 その彼らの大祖神が熊野大神、クナトノ神であり、天孫族もこの神を畏れ、都を移すたびにサエの大通りを作って祀り、6月と12月には祝詞を捧げたという。香取神宮の主祭神(フト大神)も同一神。 出雲神族は何よりも言葉を大切にし、神聖なものとして崇拝したという。特に歌の類には強い言霊が宿っているとして、最高の祝福は言葉によって与えられた、という。 言霊信仰は出雲神族のものだったのだ。 これは大きく新たな認識だ。 これこそ日本の心ではなかろうか。 歴史をみれば、出雲神族は常に反体制的に動いているという。これなども我らの判官贔屓につながる。 壬申の乱では吉野に逃れた大海人皇子につき 南北朝の乱では南朝方、これも吉野 戦国時代には家康をたすけ 西南の役では西郷隆盛をかくまい切腹自害したのがこの本に登場する富氏の祖父で熊野大宮司の家から出た富村雄氏だそうだ。 何か事あるごとに出雲、大和、諏訪の出雲神族が一体となって動きそれは未だ続くのだ。 ところで、今はいかでか。かつて天皇家ではアマテラスを祀ってはいなかった。基本はムスビの神で、最後にコトシロヌシを祀るという。 コトシロヌシは天孫族に国譲りをした大国主の息子で、国譲りを認めた後、天孫族に呪の言葉を発して自ら海に飛び込み自害したという。 その事実が美保神社の青柴垣の神事で毎年4月6日の夜に行われるそうだ。こうして憤怒の歴史を今に留めおくのだ。 古事記は天武天皇 日本書紀は天智天皇 に親和的に描かれているらしい。 何故なら当時の女帝、持統天皇は天智天皇のむすめであり、百済出自であり、これに知恵ものとして使えたのが藤原不比等、これまた中国、半島系の渡来人なのだ。 記紀編纂に辺り、持統天皇を持ち上げるべく編み出したのがアマテラスの過剰な存在なのだという。 本居宣長は何というだろうか。 また古事記の3割が出雲風土記からの出典という。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2025.01.07 15:27:01
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