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テーマ:読書(9580)
カテゴリ:本日読了
2025/09/25/木曜日/30度以下なら過ごしやすい
5日ばかり留守にしていた自宅玄関前に おびただしい羽毛の中にこんもりと横たわる鳩の遺骸 ドアの真ん前、ど真ん中 その位置があまりに出来過ぎ 猛禽類が家前の林に棲んでるとはツユにも知らぬ。 見上げれば2階の玄関真上ガラス面に鳩横向きシルエットがくっきりと転写されている。 これは何事ぞ。 何かに追われたか。援けを求めて戸口を叩いたか。 翌朝出かけた先の神田川の橋の欄干に、1羽の鳩が止まっていた。近づいても逃げない。 心の中で、 お前さんのお仲間が昨日酷い死に方をしていた。あんたはよく気をつけて長生きしなさいね。 と語りかける。 鳩は豆鉄砲を喰らったように、まん丸く見開いた目のフチを 赤くして、白目の中にグレーな点を灯し耳を傾けている風情 何となしほろりとする。ででっぽでっぽ。 ![]() 〈DATA〉 出版社 新調社 著者 三島由紀夫 新調文庫 昭和五十二年十月三十日 発行 平成十四年十一月十五日 四十二刷改版 平成十七年十月十五日 四十九刷 〈私的読書メーター〉〈穏当に読むなら『春の雪』からなのだろうけれど「豊饒の海」全体が輪廻転生のテーマを持つのであれば、自由なアクセスが許されるはず。文頭から引き込まれた。何といっても文の巧みさが読み手を離さない。中年クライシスの手前辺りか、語り手の本多は、小乗仏教タイに身を開いて大乗仏教の哲学を苦悶していた。自分は日本人の生まれ変わりと泣き叫ぶ月光姫と敗戦後の日本で再会する後半部。老醜を晒す本多の、谷崎潤一郎ばりの展開と見事に成長した月光姫の生命の横溢。奈落の底には水か炎か。投じられたエメラルドの指輪は本多にとり秘仏に等しい。〉 読み終えてひと月ばかり過ぎた。 三島の事件後、読んだと思われる豊饒の海について、或いは輪廻転生について或いは阿頼耶識、末那識について亡父が話してくれたことを時々、夢の形見のように思い出す。 人が死ぬとはどういうことだろうか。 冗談を言う前の、鼻の周囲に浮かぶ密やかな笑い、そんな父の表情が鮮やかに蘇るとき、父は当にここにいる、のだ。 ところが現実世界ではその姿は求められない。 意識の世界ではありありと像を結ぶのだが。 月光姫の脇腹の3つ並んだ黒子も意識と現実の行き来をするかのようだ。 この黒子はオリオンの三つ星の隠喩なのだろうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2025.09.25 16:14:40
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