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テーマ:読書(9675)
カテゴリ:本日読了
2025/11/5/水曜日/晴れ、秋短し
読んだのは秋分の頃なので、デンマーク行きの前となるのか、記録に至るまで随分時間が経過した。 ![]() 〈DATA〉 出版社 新調社 著者 三島由紀夫 豊穣の海・第一巻 新調文庫 昭和五十二年七月三十日 発行 平成十四年十月十五日 五十四刷改版 平成二十七年二月二十日 八十一刷 〈私的読書メーター〉〈『暁の寺』からこちらへ。庭に造作された滝に引っかかり絶命した黒い野犬と宮家も招客となる豪邸での観桜会の落差で幕は開いた。登場者はまるで焼けた靴を履かされたように生命尽きるまで踊らねばならぬ。過剰なほどの振れ幅と風景や心象の描写の夥しいトリルに惑わされ、舞台を観る読書子も共に揺さぶられ続ける。シャムの王子らと過ごした鎌倉の海辺の夜の美しさ。しかしそこにも奈落が仕掛けられ、いよいよ非業の美が若さを逆巻く波のごとく駆逐する。若さの絶頂で本田の分別の傍観者役割よ、欲望に焼かれて尚毅然と立つ聡子の益荒男ぶりよ。〉 尼寺へ行け とハムレットに再三言われたオフィーリアは、ハムレットの態度の急変から神経の平衡を病み、ついには 花に縁取られ黄泉の国へ渡ってしまった。 2人はかつて甘やかな恋を分ちあっていた。 聡子と清顕はこれはどうであったのか。 2人もまた幼馴染だった。 思春期を過ぎ、ぎくしゃくとするが、やはり、 骨の骨、肉の肉、鏡合わせなのだ。 清顕は、不吉感さえ漂わせる美少年であり、年端も至らぬ頃に見た皇太子妃のうなじに美を感得するような唯美至上主義者である。 年上の聡子はその名の通り聡明で美貌の女性である。 序盤、年長の聡子の方が清顕に傾く。 2人の間に交わされる手紙。 それがまるで意思を持つかのように2人を翻弄し、 波頭のマックスから奈落へ、2人の運命を弄ぶ。 運命。。。 万事がしどけない清顕ではあるが、終局聡子への 一途な恋焦がれでとうとう身を儚くする。 聡子は自らの決断で尼寺に行く。 そしてがんとして清顕にその姿を現さない。 不思議は、全くもって常識の人、本多が受験を目前にして清顕を救いに奈良まで旅する場面だ。 それは友情なんぞとは言えない。 見る、という運命に現実的、合理的な彼が身を投げ出す、そのことで清顕の輪廻転生に絡む縦の糸になる。 本多もまた美に、否、美を見ることに貪欲な人、なのだ。清顕は美を生きた人。聡子は束の間美に生きたが、清顕は死を持って永遠に美に生きたのだ。 清顕はある意味宗教的であり、聡子は尼寺に赴きながらも人間の業というものを見せる、と私には感じられるのである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2025.11.05 13:34:49
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