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2005年09月02日
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カテゴリ:読書
不実な美女か貞淑な醜女か 米原万理 
アラスジ:日露同時通訳者として活躍していた著者による、異文化を取り持つ者ならではの苦労や喜びを軽妙洒脱に語った作品。読売文学賞受賞作。


この方のエッセイは幾つか読んだ事がある。
大らかでいて、一寸皮肉な視線も織り交ぜている、なかなかユニークな作風だ。
文章のリズム感の良さは、通訳者ゆえかと感心していた。
その“通訳”という仕事の精髄を、ユーモアを交えつつ、きっぱりと語っているのが本書。
出版された時に食指が動いたのに、何となく読みそびれていて、10年も過ぎた今ごろ読んでみた。

これはもう、タイトルが秀逸。
この一文が、全てを言い表していると言っても良いかもしれない。
不実な美女か、貞淑な醜女か。美しい虚構か、見苦しいリアルか。
この二つの選択肢の間で揺れ動く気持ちは、通訳に限らず色々な事にあてはまるのではないだろうか。
例えとして相応しくないが、こうやって書いている感想だってそう。
美辞麗句で感想を書き連ねているうちに、本質からずれた虚文になるか。
元本に書いてあった事だけを、忠実に、しかしダラダラと写して終わるか。
色んな感想文を読んでいると、不実美女や貞淑醜女がに出くわす事がある。
いや、貞淑で聡明な美女な感想を書いている方の方が、多いと思いますよ。
不実な醜女を書いてしまう自分が、偉そうな事ぁ言えません。
ってか、何か激しく言いたい事が間違っている気が。
えぇい、閑話休題。

世間を狭くして生きているので、“通訳”という存在を意識してみた事はついぞなかったのだが、本書を読むとその並々ならぬ苦労と努力に脱帽。
例え、言語能力があったとしても、到底、自分には勤まりませんです。
異文化の架け橋となる心意気が、彼らを突き動かしているんでしょうな。
相手の文化も我が文化も愛し尊重する精神が、伝わってきます。
それだけに、どちらか片方に偏った通訳に対する苛立ち感もぴしぴしと。
誤訳より、お互いが歩み寄り理解し合おうとしない精神の方が、許しがたいのでしょう。
通訳を志す者としての心得や具体的トレーニングについても書かれており、この方面に関心のある方なら一読して損はない本です。
それ以外の読者でも、苦労話や失敗談をユーモラスに書き綴っているので、エッセイとしても大変楽しく読めます。
外国人相手に限らず、コミュニケ―ションをとるのに必要な極意は、結局は誠意と理解しようとする意志。そして、己を研鑚し続ける事。
それさえ忘れなければ、不実な美女でも貞淑な醜女でも、きっと上手くやっていけるんですよね。





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最終更新日  2005年09月03日 02時42分58秒
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