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2005年10月12日
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カテゴリ:読書
カケスはカケスの森 竹本健治 徳間書店
アラスジ:女子大生・桜子は、幼馴染みの青年・真澄に誘われ、真澄の伯母・翠が住むベルギーの古城へと赴く。翠とその娘・麻耶は臈長けて美しく、優しく一行を迎え入れてくれたのだが、どことなくギクシャクした雰囲気。異端審問に携わった家系の所有していた城ゆえか、古城は一種異様な雰囲気に包まれていた。怯える桜子たちの予感そのままに、不可思議な小さな出来事が続き、やがて1人、又1人と惨殺され…。


「1番好きな作家は?」と問われると答えに窮するが、「取り敢えず5人挙げよ」と言われるなら、迷わずその中の一人に入れるのが、この本の作者である竹本健治。
因みにその他の4人は、順不同で赤江瀑・中井英夫・野阿梓…んー、もう一人は迷うのだが、メジャーな所で京極夏彦になるかな。
結構、判りやすい趣味ざんしょw
京極堂以外は、どこかしらリンクしあっている作家陣だ。
(竹本健治は中井英夫の弟子筋。弟子と言うと語弊があるが、彼を世に出した手の一つが中井である事は間違いない。)

その竹本健治の作品で最も好きな本は、これまた迷うのだが、一応『ウロボロスの偽書』を挙げる。
なんせ、この本から私のミステリ読書が始まったので。(邪道の極みだw)
で、最終決戦まで競り続けるのが、今日読んだ『カケスはカケスの森』。
裏No.1と言っても良いかもしれない。

この物語は、二人称で語られる、かなり変わった形式を取っている。
最近はゲームの影響か、二人称小説も増えているようだが、この『カケス』が出た頃にはかなり珍しい存在だったと記憶している。
短編なら兎も角、それなりの長さの推理小説としては、異色と言えよう。
アンチミステリの傑『虚無への供物』の正嫡と言われた『匣の中の失楽』で、鮮やかに出現した作家だけあって、一筋縄ではいかぬ作品を書く人である。
(ウロボロスシリーズも、ほんっとトンでもない作品だしw)

“あなた”と語りかける事で、読者を揺れ惑う不安定な世界に、巧みに導く。
美しくも物悲しい音色を帯びている竹本の文章と相俟って、心の怯えを更に掻き立てる。
ミステリなのだが、まるで幻想文学のような雰囲気を醸し出している。
本の中から“あなた”をじっと見つめる、蒼ざめた少女の大きな瞳。
可憐でおぞましいその瞳の持ち主は、一体誰なのか。
折々に挿入される“あたし”が“彼女”なのだろうけれど、本当に“あたし”は“あたし”一人なのか。
中世の「魔女狩り」の闇、十数年前の「少女殺し」の闇、そして古城に繰り広げられる殺略の闇。
どの闇を抱えた“あたし”が、“あなた”を見つめていたのか。
ミステリ的解決は一応なされ、犯人は特定されるものの、本当の“あたし”が誰だったのかはカケスの森の奥に置き去りにされたまま、物語の幕は閉じる。
閉じる?本当に?
狂気は消滅する事無く、世界は不安定なまま置き去りにされる。
“あたし”と共に。

幻想譚としても見事だが、ミステリとしても標準以上の秀作。
謎を全面的に解明せず、読者に含みを持たせて終わるので、多面的な解釈を好む者には高く評価される作品だと思う。(きっぱり割りきれるミステリが好みなら、お勧めしないが)
竹本健治は読者を選ぶ作家だが、その枷を掻い潜って得る歓びは、深く大きい。
一読に値する作だと思う。

舞台は暗転し、カーテンは下ろされても、その奥に隠された森は果てしなく続いている。永遠に。
“あなた”が“あなた”の領域に戻るように、“あたし”も“あたし”の森に棲み続ける。
“あたし”はここに居る。だから、“あなた”はいつだって“あたし”に逢える。
この森に。
この頁に。
“あなた”の心の中に。

美しく妖しい森を、是非、“あなた”にも彷徨って欲しい。





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最終更新日  2005年10月13日 01時09分58秒
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