2005/11/26(土)20:02
綾辻行人「暗闇の囁き」
「囁き」シリーズ第2弾。
1作目の「緋色の囁き」は、ちょっとグダグダだったと思うが、こちらはなかなか面白かった。
とはいえ、緻密なトリックが仕組まれているわけでもなく、狂気に囚われた殺人者がいるわけでもない。
ミステリーには違いないのだろうけど(定義がよく分からない)、ミステリー色も、ホラー色もそんなに強くない。爪剥ぐのは気持ち悪かったけど・・・(そういうのダメ)。
読後感には、不思議な透明さがあった。
連続殺人のきっかけは、嵐に怯える子供を慰めるためだけに語った、他愛もないおとぎ話。
犯人たちの動機は、ただ、兄への思慕。
肉親からさえ、狂気を持つ者として疎まれ、恐れられていた兄は、弟たちにとっては、自分たちを守ってくれるかけがえのない存在。
「常識」に照らし合わせれば、狂気の沙汰としか思えないような(そして、父親には理解できない)犯人たちの行動は、悪意や憎悪によってではなく、愛情によって引き起こされていた。
探偵役の青年=事件の根源という、残酷なほどの皮肉。
主観によって、世界はその姿を変える。「狂気」のあり方も。
2人3役という設定は「そんなのアリ?」という気がしないでもないが、意外とすんなり受け入れられる。
主人公(?)の伯父で、調査に協力してくれる作家が探偵役なのかとも思ったが、実にご都合主義的に登場しただけだった・・・何だかな。
でも、面白い作品だった。
「囁き」シリーズは、まだ続いているので、読まねば。