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カテゴリ:カテゴリーA・食品
先日、環境団体のグリーンピースが発行している『トゥルーフード・ガイド』という小冊子を入手しました。 今のところグリーンピースさんと個人的なつながりは何もないのですが、興味深い冊子だったので紹介してみます。 ここでいう「トゥルーフード」とは、「遺伝子組み換え原料」を使用していない食品のことです。 つまり、遺伝子組み換え原料を使用していない食品のガイドブックというわけです。 そして小さいにもかかわらずすごいと思えるのは、食品項目別に具体的なメーカーのブランド名を挙げて、「グリーン」(OK)、「レッド」(OUT)と明確に白黒評価をしているところです。 なぜこのような冊子を発行し、ひとつひとつの商品を評価しなければいけないのか、その理由が冒頭に述べられています。 「現在の日本の法律では、遺伝子組み換え原料を使用した商品への表示義務が非常にゆるく設定されている」から。 ゆるい設定とは具体的にはどういうものか。 ・原材料の上位3番目までしか表示義務がない(4番目以降は表示しなくてもいい)。 ・遺伝子組み換え原料が使われていても、表示する必要のないものもある(油、醤油などの食品や家畜への飼料)。 ・法的基準があっても含まれる量が5%以上でない限り表示をしなくてもよいものがある(大豆、トウモロコシ、ナタネを原料とした食品)。 ですから例えば、 5%未満の基準を満たしていれば「遺伝子組み換えではありません」と表示することが可能なため、表示に頼って買い物をしても、遺伝子組み換え食品を避けることができないのが現状である、 ということになるのだそうです(!)。 「この日本のゆるい法規制が、多くの食品に遺伝子組み換え原料の使用を許してしまっている」元凶なのだそうです。 こうした現状を憂い、一般消費者のよりどころのひとつになればということで発行されたのがこの小冊子というわけです。 幸いにも現在、日本では商業的な遺伝子組み換え作物の栽培は行われていません。 しかし、アメリカやカナダなどでは広範囲に遺伝子組み換え作物が栽培されていて、それらがどんどん日本へ輸入されています。 そもそも日本の食糧自給率は40%。 世界でも有数の、そして先進国の中でも1番の食糧輸入国です。 財務省の「貿易統計」によると、2004年度の日本の農産物の輸入額の割合は、国別で、 第1位 アメリカ(31.6%) 第2位 中国(12.4%) 第3位 オーストラリア(10.2%) 第4位 カナダ(6.4%) となっているそうです。 そして例えば、我々がほぼ毎日食べる(私は毎日3食必ずですが)、味噌や醤油などの主原料の大豆は、96%(517万トン)を輸入に頼っています(2003年)。 つまり、国内自給率はたったの4%しかないということです(どうしてこうなってしまったのでしょう!) そこで問題になることは、その75%の386万トンがアメリカから輸入されているということです。 つまり、アメリカでは遺伝子組み換えダイズの栽培が盛んに行われているので、必然的に日本に輸入される大豆の多くが遺伝子組み換えダイズを含んでいることになるというわけです。 アメリカにとって日本は絶好のターゲット、文句も言わず何でも買ってくれる「上顧客」らしいのです。 一方EU(欧州連合)はというと、「すべての食品や飼料、さらに添加物までを対象に、遺伝子組み換えの表示基準を0.9%と厳しくしている」そうです。 そのため、日本で「遺伝子組み換えではありません」と表示された商品が、EU諸国に輸出されると「遺伝子組み換えです」のシールを貼られて販売される(!)ことがあるくらい、その基準には開きがあるのだそうです。 独自のポリシー、判断基準を持つということがあまりない国、アメリカのいいなりの国、ある程度の被害者が出てからでなければ動こうとしない国、残念ながらそれが日本の現状のようです。 具体的な商品の判定についてはこの小冊子をご覧いただきたいのですが、大雑把にいうと大手食品メーカーのものに「レッド」(OUT)が多いようです(もちろんそうでない大手メーカーやおなじメーカーで「グリーン」(OK)と「レッド」(OUT)の両方を市販しているところもあります)。 そうした中でひとつ気になったのは、「原材料表示の欄に、植物油脂、乳化剤、でんぷん、植物性たん白、デキストリン、たん白加水分解物、異性化糖、果糖ぶどう糖液糖、ぶどう糖果糖液糖、ぶどう糖、水あめ、『原材料の一部に大豆を含む』などが記載されていたら、遺伝組み換え作物由来の原料を使っている可能性があります」という「ひとくちメモ」コーナーの記載です。 これらはナタネやトウモロコシ、ダイズを主原料とする食品たちで、現在多くの加工食品中で使われています。 特別の表示(「国産大豆使用」など)がない限り、これらはアメリカ、カナダからの安価な輸入原料を使用して作られるのが一般的でしょうから、やはり「遺伝組み換え作物由来の原料」ということでほぼ間違いない気がします。 しかし、前述の理由で「遺伝子組み換え原料」の表示はしなくてもいいというわけです。 後述するように、遺伝子組み換え食品が人間に与える影響の是非に関しては、まだ結論が出ていません。 ひょっとしたら、何の害もないのかもしれません。 だったら、もっとはっきり表示をするようにして欲しいものです。 (害がないだろうから表示する必要はない、という理屈も成り立ちますが。) どちらにしても、消費者が自身の自由と責任において、遺伝子組み換え食品を選択するというのなら、今はまだそれを国や他人がどうこういう段階ではないのかもしれません。 しかし、自ら選んだのではなく、知らないうちに食べていた(食べさせられていた)というのでは、「まあいいか」で済まされるほど、それは軽い問題ではなさそうです。 ではなぜ、「遺伝子組み換え食品」がこうも危険視されるのでしょう。 大きな理由が2つあるようです。 ひとつは、「環境を脅かす」ということ、 もうひとつは、「我々の健康を脅かす」ということです。 遺伝子組み換え作物が従来の品種改良などと決定的に違うのは、種の壁を越えて遺伝子を操作するという点にあるようです。 バクテリア、ウイルス、動物などから取り出された遺伝子が、大豆、米、パパイヤ、トウモロコシ、ナタネ、綿などの作物の遺伝子に組み込まれます。 こうすることで、特定の害虫に強い性質(害虫殺虫性)を持つ作物や、特定の除草剤の影響を受けない性質(除草剤耐性)を持つ作物ができるというわけです。 こういう作物になってくれれば、作り手側としては手間もコストもかからなくなり、とても助かるというわけです。 しかしそうして造られた作物は、もう自然界に存在する生命体ではありません。 これまで地球上に存在しなかったこのような生命体が自然界に放たれた場合、既存の生態系にどのような変化をもたらすのか、今のところまったく予想できていません。 (当然、肯定論者は問題ないといっています。) ひとつはっきりしていることとしては、害虫殺虫性にしても除草剤耐性にしても、害虫や雑草はすぐ「慣れて」しまうために、さらなる「強い性質」が必要になるという「いたちごっこ」を繰り返すということです。 そうして作られていく遺伝子組み換え作物は、ますます自然界から乖離(かいり)したものへと変貌を遂げていくということになります。 (家畜に与える抗生物質によって発生する「耐性菌問題」を連想してしまいます。) そして、そういった作物から作られた遺伝子組み換え食品を食べた場合についても、今のところその影響については定かではありません。 ですから現段階でいえるのは、こういった危険性が考えられるというに留まってしまいます。 ・遺伝子組み換え食品にはこれまでの食品になかった毒素やたんぱく質(バクテリア、ウイルス、動物などの遺伝子としての)が含まれているので、それによってアレルギーなどを引き起こす恐れがある。 ・除草剤に強い遺伝子が組み込まれている場合、大量に使用された除草剤(農薬)が作物に残留し、我々の体に取り込まれてしまう恐れがある。 いずれにしても遺伝子組み換え作物が商業的に栽培されてからまだ10年余りしかたっていません。 ですから、この技術が長期的には地球の環境や我々の健康に対して、どのような影響を与えるのか、本当のところは誰にもわからないというのが今現在の状況というわけです。 一部の営利目的の企業にとってというのではなく、「今の人類にとって」遺伝子組み換え作物は本当に必要なものなのか。 気づいたときにはもう手遅れということにならないように、「疑わしいものは許可しない」という「予防原則」の考え方が必要なのではないかと『トゥルーフード・ガイド』では締めくくっています。 (食品添加物の問題よりもその実態はつかみにくいというわけです。) 『トゥルーフード・ガイド』(無料)の申し込み先 http://www.greenpeace.or.jp/campaign/gm/truefood/ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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