わらだ光絵の映画批評「白いカラス」

このコーナーは、私のネット上のお友達のブログを紹介するページです。
第一回は、わらだ光絵さんの映画批評「白いカラス」を紹介します。

映画「白いカラス」 / 映画批評 2004年12月14日(火曜日)

「白いカラス」を観ました。
このネーミング、うなっちゃうほど、ウマイよね!内容に、ビシッとパズルのように、アテハマル。
しかも意味深で慎重なタイトル。

映画の冒頭にて、アテネ大学(マサチューセッツ州)の古典の教授コールマン・シルク(アンソニー・ホプキンスが演じます)が講義するのは、「勇者アキレスがなぜ、闘いを放棄したかのいきさつ:アガメムノンに好きな女性を奪われたエピソード)」。
そこにすでに、映画のストーリーの一部分の示唆が、込められてます。

さて、授業を放棄している二人の学生の空席をみて、シルク教授は「一度も授業に出ないかれらは、いったい幽霊(spook)なのかね?」と放った言葉が・・・・大問題となり。。。。彼の奥さんはショックのあまり急死し、・・・
教授は大学を去り、世捨て人同然のような暮らしをしばらく続けます。

(*スポークという俗語には、アフリカ系アメリカ人への蔑視の意味がある)

コールマンが、ユダヤ人作家のネイサンと出会い、世捨て人同士の二人のあいだに芽生えるのは友情。(大のオトナのオトコ同士で、ダンスを踊るシーンは可愛かった)

そして老齢のコールマンと、過去のしがらみにラッピングされたようなフォーニア(ニコール・キッドマン)のあいだに芽生えたものは。・・・

コールマンの男友達たちはクチをそろえて、「彼女とは手を切ったほうがいい」とアドバイスするんだけど、「そういう独善的なところが嫌いなんだ!」とコールマン・シルク独特の強さで突っぱねるのです。

世間では、(1990年代後半)クリントン大統領とモニカ・ルインスキーとの「不適切な関係」事件が騒がれるなか、(ニュースで騒然となっているなか)
フォーニアはコールマンの前で、いつもは静かな感情をふいに爆発させます。
「モニカが職を失ったことが事件?ベトナムの帰還兵としての神経を患った夫から暴力を受け続け、二人の子供を火事で失い、・・・そういうことこそが事件ではないの?」

コールマン・シルクは、晩年の人生において、それまでずっと背負ってきた自分自身の秘密を、ようやく告白する相手を目の前にみつけるのです。

http://echoo.yubitoma.or.jp/weblog/mitsue_kidshouse/eid/73146


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