やすらぎへの道

2005/01/05(水)07:09

やすらぎへの道のり 「その8」

やすらぎへの道のり(18)

お手伝いをすることになったのは信州の安曇野にある「シャロム」というペンションだった。 自然食に詳しい人なら名前ぐらいは知っているその世界では有名なペンションでした。 わたしはここで始めて自然食と出会うことになる。 ちょうどその頃のわたしは料理屋で作っている料理に少し疑問を抱いていたのだった。 日本の割烹料理屋でも仕事をしていたのだが、その料理を本当に美味しいと思えなかったのだ。 海の幸が豊富な三陸で育ち、家の前でとれた野菜を食べ、その後、仕事で生鮮食料品の仕入れを経験していたおかげで食べ物の素材だけはいいものを食べていたからかもしれない。 もっと素材の滋味あふれるようなそんな料理を模索していたころだった。 そんな時にそのペンションで自然食を食べて「この味だ、自分が食べたかったのは」と思ったのだ。 ときどきゲストの方から「なぜこのような食事を始めるようになったのですか」と聞かれることがあります。 私の場合は、身体にいいからとか、自然食の思想にひかれてとかいうわけではなく、美味しかったからというただそれだけで自然にそうなったのだった。 そんな単純な動機だったからこそ無理なく長く続けられているのかもしれない。 自然食以外にもペンションでは大きな出会いがあった。 それは自然農法を実践している福岡正信さんの書かれた「わら一本の革命」という本だった。 田んぼにクワも入れず、肥料も農薬もやらないで種を蒔くだけの農法で一般のやり方よりもたくさんの収穫をあげている。 自然農法は植物が自然に育つ方法とできるだけ同じ状態にして人間が手をかけるのを最低限に減らしている農法で、植物の潜在的な力を最大限に活用した方法です。 「無為自然」という哲学を実際の生活の中で実践して、現代農業より成果を上げているというのにショックを受けた。 「そうだ、人が手を加えなくとも、自然はよくなる力を持っていて、人間はそのお手伝いをすればいいだけなんだ」 この本を読み終えたあと、ずっと自分の中でくすぶっていたものが解けたような気がした。 しばらくはその興奮が続き、まじめに百姓でも始めようかと考えたりもしたが、自分の進む方向とは少し違うような気がしてきた。 福岡さんの説いている哲学をなにか自分なりのやり方で実践できないものかと思うようになってきた。 ペンションの仕事は自分に向いていると思った。 なによりも自然の中で暮らしながらたくさんの人たちと出会うことができ、人のお世話をして喜んでもらえるというのは大きな魅力だった。 しかしペンションを自分の生涯の仕事にするかというともう一つ踏み切れないでいたのだ。  もっとなにか、もっと自分が納得できるものはないかとどん欲に自然食から農業、哲学の本を読みあさっていた。 たまたま本屋でそのころ活動が始まったホリスティック医学の本を見つけた。 ホリスティック医学とは西洋医学だけではなく食事や心理、東洋医学、ヨーガや気功などさまざまな方法を組み合わせて、人を全体的に見ていこうという医学である。 これを見て俄然、東洋医学に興味をもち始めたのだ。 ペンションでの暮らしで自然食やヨーガはすでに実践していたので、東洋医学を勉強し治療する技術を身につけそれと宿泊施設を合わせれば面白い施設ができるぞと思った。 そう考え始めたらすぐに実行に移さなければ気がすまないので、すぐに鍼灸学校の入学案内を取り寄せた。 すでに1月だったので1次募集は締め切られており2次募集の応募に間に合うのも全国で2校だけだった。 すぐに両方に願書を出してそれから受験勉強を始めた。 急に思い立って申し込んだので知らなかったが、思っていたより入るが難しいらしく倍率も結構高いのだ。 2校のうち仙台の学校になんとか合格し、久しぶりの学生生活を仙台ですることになった。

続きを読む

総合記事ランキング

もっと見る