カテゴリ:朗読
丁度その頃、浅草に『ジゴマ』という
活動写真が流行していました。 ジゴマの大胆不敵な悪漢ぶりは 僕らをも非常に感動させました。 「ジゴマごっこ」という 一種の遊戯が僕らの間に流行しだしたのは、 それから間もなくのことでした。 それは、僕らの中のもっとも強いものがジゴマに選ばれ、 それから次に強いものがニック・カーター探偵になり、 その他のものは三人がジゴマの乾分(こぶん)に廻される外、 全部ニック探偵の部下になって、 ジゴマを捕縛するために大活動をするという遊戯でした。 僕らは夢中になって、 観音様の裏や、奥山の瓢箪池のまわりや、 活動小屋の裏側などを、 ジゴマを追跡しながら、走って行きました。 そして最後に、 はげしい格闘の後、ジゴマを捕まえてしまいますと、 僕らは彼を電信柱かなんかに縄でもって縛りつけて、 そのまま勝手に自分たちの家に帰ってしまいました。 すると何処からともなく、ジゴマの乾分たちが現れてきて、 彼の縄をといてやるのでした。 (堀辰雄『手のつけられない子供』より) 3/25(土)に読ませていただく『羽ばたき』で 重要な役割を占めるのが ダークヒーロー「怪盗ジゴマ」です。 「ジゴマ」は本当に当時の大大大流行だったようで 堀辰雄はもちろん、 江戸川乱歩も(怪人二十面相の元ネタだとか) 寺山修司も夢中になっていたそうです。 餓鬼大将しかなれなかったジゴマ、しかも「羽ばたき」のジジは 誰よりも腕力が強いだけではなく、誰よりも美しかった。 そんなジジはジゴマごっこをしているうちに 「本当の」ジゴマになってしまうのです。 物語の背景を考えるとすごく残酷で 大人としてはどうしても歯がゆいと思ってしまう。 でもちょっとした謎を秘めながら このお話は最後まで美しいのが救いです。 物語のよさを過不足なく、そのまま届けられますように。 ジジやキキがお客様の心のなかで動き出しますように。 そんな当たり前のことを思って、今日も準備を進めています。 素敵な耳を澄ますための空間で どっぷり物語の世界につかってみて下さいね。 ご予約いただいている方はもちろん、 まだ迷われている方もぜひ^^ 朗読リサイタル「本棚のソリロキー」 Vol.3 幼い頃に描いた記憶 2023.3.25(土) 13時開場/13時30分開演 会場 松明堂音楽ホール 西武新宿線新所沢駅東口直進徒歩3分 演目 「はてしなき世界」小川未明/作 【 子どもの立っている前方には、かがやかしい野原がありました。 そしてうしろには、うす青い空がはてしなくひろがっていました 】 自分はひとりであるというような喪失感とそれでも生まれる希望。 寂しくて明るい、子どもの成長を見守る小川未明の名作。 「羽ばたき Ein Märchen」 堀辰雄/作 【 子供たちは一人きりでは決して夢を見ないものだ。 彼等はいつも一塊りになって、共通な一つの夢を見ようとする 】 ジジとキキ、同じ夢を見た少年たちの耽美で残酷な「おとぎ話」。 チケット 全席自由2500円 席数を限定しています。 ご予約はkirakiracrayon(あっとまーく)yahoo.co.jpへお願い致します。 ●休憩を挟み約1時間半の公演です。 ●席数を減らしての上演となります。 *** まだまだ心配な世の中です。 くれぐれもご無理はなさらないで下さいね。 ではでは、お体に気をつけて元気にお過ごし下さいますよう。 また皆様にお会いできます日を楽しみにしております。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023年03月13日 18時22分14秒
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