金木犀は香らない
毎年、秋になると金木犀の香りで季節を感じていました。私は美術大学に入るために、美術予備校と呼ばれる画塾のようなところ、いわゆる美大受験のため実技能力をつけるための絵を描く事をメインとする予備校に通っていました。美大は実技試験がとても難しいため現役で入るのは難しく、浪人するのも当たり前のような部分もあるのですが、金木犀と言うと友達のお兄さん(美術予備校の先輩でもある)が「金木犀の香りを嗅ぐとケツに火がつく」と言っていたらしい事を思い出します。『そろそろ本腰入れて真剣に実技に取り組まないと今年もまた浪人だぞ』的な解釈です。そういえば青森に引っ越してきてから、秋にも金木犀の香りがしないな…と気付いたんです。たまたま、近くに金木犀を植えているお宅がないのかもしれない、と思っていたのですが、実際は違いました。青森には金木犀は存在しないらしいのです。もちろん、北海道にもです。寒さに弱いのでしょうね。金木犀が香って来ないのは、存在しないからなのでした。そういえば、釧路に住んでいた時はもっと寒かったので(夏は20度程度、冬は氷点下20度程まで下がります)8月頃にやっと紫陽花が咲いていました。そして桜も、ソメイヨシノは存在しません。釧路のお花見の桜は、チシマザクラやヤマザクラでした。ソメイヨシノのように花が咲いてから葉桜になるのではなく、葉っぱと花が同時にあるような桜です。5月の半ば頃に咲くような感じです。(6月まで朝晩ストーブ付けてましたし、夏の夜は寒くて上着を羽織らないと寒くて風邪ひきます)植物の北限を感じる雪国、北国です。因みに、青森はソメイヨシノが咲きます。特に青森県の弘前市の弘前公園の桜は本当に素晴らしくて絶景です。お濠に桜の花びらがたくさん舞い降りて、花筏を作るのもとてもとても美しいです。青森に引っ越してきていなかったら、足を運ぶ事もなかったでしょうし、観る事もできなかった風景だと思います。青森県には恐らく一生行かないだろうなと思っていたので(何せ実家が福岡なので反対方向に行くことはないだろうという意味です)住むことが出来て良かったと思います。ですが、やっぱりそろそろ引っ越したいと毎日のように思っているのでした。これから雪が降って積もり始めたら、余計にそう思う事が増える事は間違いありません…。