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新米おんな社長の奮闘記(古米になりつつある)

新米おんな社長の奮闘記(古米になりつつある)

裕美子・26歳

 仕事もある程度覚えてくると、ウルサイ上司の指示などなくても仕事を進められるようになる。裕美子は入社4年、現在の部署ではかなりの先輩格だ。というのも、後輩がすでに3世代、自分の後ろに控えている。かたや自分の先輩は、男性はたくさんいるものの、女性の先輩は結婚や出産などでずいぶん少なくなった。

 自分の上に上司や先輩がいて、自分の下には後輩や部下がいる、そんなサンドイッチの具のような生活には、愚痴がつきもの。裕美子は、会社では「良き部下」「良き先輩」でいたいと思っている。そのためには、心の中にふつふつと溜まってきたコトがあっても、会社の中では出さないことだ。

 だが、時にはどうしても心に溜めておけないことがある。そんなとき、裕美子は通勤の途中の見知らぬ人にあたることにしている。「あたる」とは言っても、「見え見え」のやり方はしない。心の中で、道行く見知らぬ人の行動に、普段は使わない言葉で思ったままをぶちまけるのだ。

 「何をぺちゃくちゃしゃべりながらうだうだ歩いてんだよ!」

 「タバコに火ぃつけたまま腕ふって歩くなよ!あっぶねーな」

 「信号まつのに、べたべたくっつく必要ねぇだろー、まったく」

 今日は、後輩の電話の取次ぎについて、裕美子が注意を受けた。凡ミスだ、敬語の使い方を間違えたため、話題の中で、お客様と自社の担当の敬う順番が逆転してしまった。「ったく、景子のヤツ、新入社員じゃないのになにを間違えてんだよ!それを私が注意されるなんて、そんなに面倒みれねーっつーの!ちくしょう。」

 今日はよほど頭にきていたのだ。裕美子は、いつもはココロの中で叫ぶ言葉を、思わず口にだしてしまった。

 「まったく道の真ん中歩いてんじゃねーよ、じゃまくさい!」

 通りすがりの見知らぬ人に、ココロの中で叫んだつもりだった。が、実際に声にでていた。

 翌日、裕美子の額に絆創膏が貼られていた。いくら頭に血がのぼっていて周りが見えなかったとはいえ、因縁をつけているように見られてしまったのだ。くわばら、くわばら。


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