苓桂甘棗湯
心の薬 不安感を取り除くには最高の漢方薬です。
本方は茯苓、桂枝、甘草、大棗の四味から構成されています。大棗の氣味は甘平で、緩和の効果と血のめぐりを良くします。人間は驚くと筋肉が緊張し、かたくなり、血液が充血してしまいます。この筋肉の緊張と充血と血の熱を取る為には血のめぐりを良くして行く事が必要になると言われています。
この処方の最大の特徴は、証を選ぶ場合、ただ・驚き・悲しみ・恐怖・不安などが強いという精神状況で選んでよいというものがあげられます。
このような状態を金匱要略方論では奔豚氣病といって、腎のトラブルが原因だと考えられています。処方の証は、腎氣の働きを押さえ切れなくなって、あたかも豚がヘソの下のあたりから上へ走るような感じで、氣がのどに突き上げて来るような感じのものに効果があるとされますが、実際は中々患者さんの自覚症状で憶測するしか仕方が無い事ですので、症は氣にしないでよいようです。
従ってこの場合には、病が起きた時の原因を聞く事が大切になります。
また現代病におきかえてみますと、精神不安・心臓神経症・足の冷え・ヒステリー発作・てんかん・ヒドイ腹痛・ノイローゼ・メニエール病・子宮痙攣・胃痙攣・恐怖が引金になる喘息発作・過敏性腸炎など多くの疾病があげられ相談に無限の使用範囲が考えられます。
〔上記は特に効果があがるものです〕
「甘麦大棗湯は脾胃の原因あくびが出やすい特徴があります・本処方は腎に原因があります」
【類似処方との比較より】
症例
1お産の二~三日前に服用いただくと、安産になります。特に怖がりの方(腎が弱い方は産婦人科の先生方も難産が多いとおっしゃっています)これは腎氣が恐怖によって突き上げて降りてこようとしている胎児と拮抗する為だと考えられ、本剤はこの氣を降ろす事によって安産になると考えられます。
2癲癇 ・小学校五年生の男子、体格良好、顔色白い、カルシウムをとるという事で日に二リッターも牛乳を飲んでいた。一日に数回発作がある。性格はおとなしいが非常に驚きやすい。十年も抗癲癇劑を服用し続けていた。(強い氣の発散を押さえつけてしまう薬、抗癲癇劑、安定劑などは服用の十分の一の時間は最低漢方との併用をしながら少しづつ離藥の必要があると思います)癲癇の発作に対する恐怖と牛乳の取り過ぎの為、水分過多によって腎が弱っていたと判断して本劑を投与しました。一年で抗癲癇藥もとれ、素晴らしい効果がありました。
3癲癇・15歳から30歳まで全然治らない。最近やっと合う藥が出て、服用していると発作は起こらないが、代わりにフラフラして歩いていると電信柱にぶつかったりしてしまう。色白の奇麗な方。此の方は15歳の時にどうして起きたのかという事を聞いてみた所、父親の癌での急死が原因であるという事が分かりました。
4喘息・幼稚園に入園した途端に喘息がひどくなった。母親と二人っきりで昼すごしていた生活が急にはじめて大勢の人々のなかに出て行く生活に変わり、恐怖によって引きおきたと考え投与、素晴らしい効果がありました。
以上のような症例から人間がいだく不安・恐怖・悲しみ・おそれを本剤が改善できる可能性を示しています。殆どの病氣の原因として多かれ少なかれ存在している感情を緩和しながら治療にあたる事は確実な効果をあげる為に必要な手法ではないかと考えます。さらに不安・恐怖・悲しみ・おそれは腎臓機能に大きく関与しています。