描きかけの絵
★★★★きまぐれ絵日記★★★★ オランダ時代最後の、描きかけの油絵・・・。★★★★★★★★★★★★★★オランダの絵描き仲間から、郵便が届きました。クリスマス・カードと、手紙と、そして、写真がはいっていました。写真には、オランダの友人たちの笑顔が写っていました。奇跡のように存在した、貴重なひととき、そんなふうに感じました。背景に写っている、イタリアン・レストランの、内装のひとつひとつさえ、今では、せつないほど懐かしい。もう一枚には、オランダ語の新聞の上に置かれた赤いポピー。油彩の先生の家の庭に咲いたものです。私は、この絵を、描きかけのまま、帰国しました。「日本人は、学びすぎる。なにごとでも、少し学んだら、ひとりになって、繰り返し、試して、自分のものにして、それから、新たに学べばいいのに、ずっと、ずっと、学んでいるのだ」と、誰かのエッセイで読みました。油絵を前に、とまどう私も、日本人的に、学びすぎたのかもしれません。クレヨンの絵でも、油絵でも、その道具で、心象を表すことにすぎないでしょう。でも、なぜか、「これはしてはいけないかも。この方法は、違うかも」という、不安な気持ちになります。懇切丁寧で、敬愛する先生だったからこそ、逆に、ひとりになると、こんなに不安になるのでしょうか。実は、もう一枚、写生会の絵が、描きかけのままです。2枚を壁に立てかけて、「さて、どう仕上げようか」と見つめていると、絵のことよりも、思い出がよみがえってきて、胸にせまってきました。今でしか感じられない、オランダへの憧れを、この絵の上に載せたいな・・・。せつない思いで、描きかけの絵を、見つめています。