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カテゴリ:映画
光州事件といって、ピンとくる方はどれくらいいるのだろう?
光州事件とは、1980年におきた、韓国での民主化運動の発端となった事件。それまで独裁政権だった朴正煕政権がクーデターで倒れたので、民主化運動が各地で起きていて、新政権の全斗煥が民主化運動の弾圧に走り、光州の学生運動と軍が衝突。やがて市民まで巻き込まれ、光州の市民が立ち上がり、軍を追い出すところまでいったものの、最後には米軍の黙認を得て(韓国軍の指揮権はアメリカが持っていた。アメリカの「民主化運動支援」なんて所詮、こんな程度だ)市民の虐殺という形で事態を収拾させた。死者200-2000人と、実際何人死んだのか分からないといわれている。 光州事件は漠然と知っていたのだが、ワシントンにいると、韓国での反米感情の理由の一つにでてくるので、勉強のつもりで観にいった。 別にドキュメンタリーというわけではないが、光州事件を一般市民の目線で描いている。最初は、学生運動と軍の治安部隊との衝突から始まった。市民はどっちにも迷惑そうな目を向けていた。 その頃までは、主人公やそのほか最後まで全羅南道庁に立てこもった市民たちののんきな生活が描かれている。 なのに、学生運動に参加していた学生と一般市民との区別がつかない軍が一般市民を攻撃したところから、市民側が怒り、悲しみ、立ち上がる。 別に反乱者じゃないぞ、軍が勝手に市民を殺したんじゃないか、そうした声は、軍の、市民の鎮圧が出来ないことからの焦りと、北朝鮮が内乱を突いて攻撃してくるのではないか?という恐れの前に消えてしまう。 まさに、今のイラクやアフガン、タイの映画を見ているのかしら?と思わんばかりである。 日本人から見て、非常に残念なのは、軍が抑えに入ったこと。日本だと、警察の指揮下にある機動隊が出動する。 60年安保の時も、機動隊が出動。自衛隊は動員されていない。もっとも、最後の方は、赤城防衛庁長官が岸首相の要請があったら、辞職モノだとひやひやしていたが、自衛隊出動を要請することなく、岸は静かに安保条約の自然成立を官邸で民衆デモに囲まれながら待った。死者は、樺美智子ただ一人。浅間山荘事件でも、機動隊。内閣はこのときも、絶対に自衛隊を出動させなかった。人質は無事。 機動隊のいいところは、放水や催涙ガスなどで暴走した民衆に対応する点。これで、退散しない一般民衆は通常いない。発砲は本当に最後の手段。 技術面などはドイツから学んだところもあるらしいが、人を殺さないで、民衆を鎮圧する点はいかにも日本らしい。人を殺せば、その友人、知人、親戚一同を敵に回してしまう。それをたくさんしてしまえば、光州事件のように学生運動とは何の関係もない市民が立ち上がってしまう。 本当に、慧眼である。もっとも、自衛隊が日本国民を殺そうものなら、真剣に社会党などが自衛隊を解散させてしまいかねないが。 そして、機動隊というコンセプトは意外にも、台湾や中国に「輸出」されている。当時の浅間山荘事件の指揮官だった佐々淳之がひそかに台湾や中国に方法を教えたそうな。もちろん、最初は台湾にしろ、中国にしろ、民衆を武力で弾圧した。けれど、その後の反省から、機動隊を「輸入」し、その後は民衆を殺人で刺激しない範囲で鎮圧するように動いているらしい。 この辺は、「輸出」した佐々淳之が詳しく本に書いているので、ここでは深く立ち入らないが、光州事件で、もし警察が最初の学生運動との衝突で高圧放水や催涙ガスで学生を解散させていたら、殺人が行われなければ、光州事件は起きなかったし、犠牲者は生まれなかったと思う。民主化運動は死なないにしても。 あまりにもったいない死だらけだ。 いったん軍が引いた後、光州は無政府状態になるが、これを市民が自発的に自治を行った。こんなこと、日本で考えられますか。きっと普段は何の変哲もない、ただのおっさん、おばさん、若者が一定の秩序を保ったのである。そして、今度軍が来たら必ず殺されると分かっていて、市民全員でないにしろ、心ある人たちが、全羅南道庁に立てこもったのである。 死に際に人間の尊厳を保てる人たちに、発砲するなど言語道断の沙汰である。 この映画に出てくる俳優たち、特に中年以降の人たちは、日本人によく似てる。見ている間、実際の俳優さんの名前は全然知らないから、勝手に、日本の俳優で似ている人の名前を付けてました。加藤剛とか、間かんぺいちゃんとか。ちょっと、昭和っぽい気がします。まあ、30年前だしね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
May 16, 2010 02:43:53 PM
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