我思う、ゆえに我あり

2010/08/17(火)15:07

核兵器を使用した国の道義と被爆国の道義

時事(190)

8月15日に書くべきだった内容ですが、広島の原爆投下日に大江健三郎の小文がNYタイムスに載っていた。 オバマは、核兵器を使用した唯一の国として核軍縮をしたい、という。 日本は、ずっと唯一の被爆国としての道義、核廃絶を謳い、オバマを支持する。 昔の敵味方が立場を変えて同じ主張をするのも、面白いが、その根っこは全然違う。 アメリカの場合、前にも書いたが、核兵器を使用したことそのものを恥じているわけではない。核兵器でも使わなきゃ、日本が降伏する気配はなかった。どうやっても日本国民全滅するまで降伏をいわなさそうだったし。負けが分かりきっていた状況だったのに。 (昨日の続きじゃないが、本来追究すべきは、負けが確定となった時点から降参しなかった首脳陣の戦争責任である。それは、A級戦犯を靖国神社に迎えて首相が参拝するしないでもめる以前に、やるべきことである。そうしたら、首相が行くべきか否か、分かろうってもんだ。 心に判断基準がないと、どうでもいい瑣末な点で右でも左でも簡単に転ぶ。) ただ、自らの核兵器を減らし、ロシアの核兵器を減らし、核兵器に代わる、新しい武器の時代になりたいから、(いわば、武器のモデルチェンジだ)オバマは、核軍縮を訴えている。 そこで、そうはっきりいうわけにも行かないから、わざわざ核兵器を使用した唯一の国、という言い訳を考え出しただけのこと。 まあ、そう言い出した手前、日本の出方次第によっては(日本がパールハーバーを謝罪するなら)、オバマが広島にいってもいい、という姿勢になっただけのこと。心の底から広島に行きたいという意志ではない。 ただし、オバマ政策上、一応今年ルース大使が広島の祈念式典に参加した。(今年はオバマはいかないだろうけど) もちろん、そこには、普天間問題で疲弊した日米関係の修復作業の一環というもくろみはあるし、「好意」を演出した、といえる。 日本としては、ちゃんとこの「好意」を「好意」と受け止める必要がある。(ちゃんと、受け止めたんだろうか?長崎にルース大使が行かなかったことの方が問題視されたようだが) そして、「好意」には「好意」で返す、というのが不文律である。(ちゃんとやれよ、ということでもある。 まあ、日本の外務省の場合、今までヒロシマ、ナガサキでアメリカと事を構えようなんて大それたことは考えられずにむしろ阻止するくらいの動きをしていたくらいだから、「好意」としてはうけとめないだろうけど。) 一方、日本の場合、戦略とか、戦術とかそういうものは一切なく、純粋に平和希求の、素朴な感情から来ている。 それだけに、人に感動を与える可能性は高いが、同時に日本の状況とその主張の矛盾を全く考えていない、という証明でもある。 日本は、アメリカの核の傘に守られている。それなのに、その守っている傘の存在を否定しようとしている。 これほど大きな矛盾はない。 アメリカに言わせれば、じゃ、核の傘はいらないの?ということになる。そして、核廃絶を唱える人で真剣にYesと答えて、その代替案を持ち出せる人はいないと思う。 この日本の態度の対極をなすのが、イスラエル。 第二次世界大戦中、ドイツがユダヤ人をガス室などで虐殺(ホロコースト)したのは周知の事実。じゃ、そのユダヤ人がイスラエルを建国してから、化学兵器廃絶を世に訴えたか?訴えやしない。むしろ、自分たちがパレスチナ人に対し使ってた。未だに持っているだろう。 じゃ、ユダヤ人がホロコーストの事実を軽視しているのか?といえば、とんでもない。ホロコースト記念日があるし、全国民朝10時にすべての行為を止めて一分黙祷する(車を運転していても、止めてやる、ときいた)という徹底振りだ。 日本なんて、祈念式典会場の人たちだけじゃないか。 さらには、アメリカの首都ワシントンにホロコースト記念館を作って、一部子供が見れないように工夫が必要なほど、生々しくホロコーストの事実を印象付けている。 そう、覇権国にドイツが二度とやらないように、他の国(アメリカを含む)がやらないように、監視しろよ、という意味合いがある。 (日本だって、そのくらいやったっていいんだけど。) というように、徹底的にホロコーストが二度と起きないように、世の中を啓蒙している。 なので、何で日本は核廃絶を謳うんだ?とっとと核をもって、二度と核を落とされないように努力しないんだ?という疑問がアメリカでは持たれる、ということを肝に銘じておこう。

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