我思う、ゆえに我あり

2010/08/19(木)15:20

ダン・ブラウン著「ロスト・シンボル」とグランドゼロにモスク案

時事(190)

ご存知「ダビンチ・コード」の著者による最新作。本当は文庫本が出てくるまで待つつもりだったんですが、待ちきれず、単行本を買ってきました。 前回のダビンチコードや天使と悪魔と同様、ほぼ一気読み。 今回は、舞台がここワシントン、ということもあって、ああ、あそこ、ここだ、なんて思いながら、読んでました。 今回主人公が挑む秘密は、フリーメイソン。ええ、ユダヤ人の陰謀説とトップを争う陰謀説の主役です。 フリーメイソンは、文字通り訳せば、「自由な石工」。石工というのは、建物を作る人なわけで、遠くは十字軍時代に石工技術をエルサレムから持ち帰り、その石工たちがギルド(同業組合)を作っては、その技術の秘密を代々受け継いでいった。で、「秘密」には、いろいろ憶測が生まれるもので、キリスト教会が異端者のみならず、聖書に書かれている神話の部分と内容的に対立しそうな科学までも弾圧しようとしたことから、この「秘密」は、石工技術以上のものを含むのではないか?と疑念を持つ。 まさに、ダビンチコードの世界だが、その科学を自由に研究し、世の中を発展させたいと思う一派が、フリーメイソンと合体したんだか、もともとそれがフリーメイソンなんだか、諸説あるところだが、とにかく、フリーメイソンの多くが、アメリカの建国の父であったのは事実。(今でも、続いているかも。オフィスの近くにロストシンボルの舞台の一つ、フリーメイソン協会があります。結構大きいです。相当お金を溜め込んでいると思われます) そして、戦後日本の首脳陣が、アメリカのリーダーたちとお近づきになりたいというだけの理由でフリーメイソンに入ったくらいだ。 そのフリーメイソンが代々隠し持っている石工以外の秘密を探り出すのが、ラングドン教授の仕事。 で、ここでは、この本のスリルとサスペンスはおいておいて、このアメリカの建国の趣旨について考えてみたい。 アメリカの歴史の解説では、宗教の自由を求めて、メリーフラワー号にのって、プロテスタントたちがヨーロッパから移住してきた、というのが定説だ。こう書くと、どんな宗教もOK、であることがアメリカの信条だ、というように解釈しがちだ。 けど、フリーメイソンの歴史を冒頭のように振り返ってみると、多様な宗教の自由を信条とする、というよりは、キリスト教の科学弾圧からの避難場所(つまり、宗教ヘイブンではなくて、科学ヘイブン)であることがより真実に近いようだ。 何でこれが問題か?というと、今、アメリカで宗教がらみで持ち上がっている問題がある。 911で倒壊された世界貿易センタービル跡地、グラウンドゼロにモスクを建てたいという申請があり、途中までは誰ももめなかったのに、メディアが騒ぎ出したのを受けて、オバマまでもこの論争に参戦。「ええやんけ、イスラム教徒がモスクを建てる権利はある。」でも、反響の大きさに、翌日には早速軌道修正。 これが、中間選挙の直前なだけに、民主党は選挙に影響しないかと冷や冷やしているし、共和党は当初盛り上がっていたが、あまりこれを大々的に取り上げると、選挙でイスラム教徒(アラブ以外にも、インドネシア、インド、マレーなどもイスラムだ)の票を失いかねない、という弱気な声も。 で、そのモスク建立賛成派は、アメリカは宗教の自由を保障するのが信条だ、という。けど、これに911を起こしたアルカイダは、イスラムじゃないか、何でそんなやつらにモスク建立を容認せな、いかんか?という。(まあ、サラ・ペイリンが喜びそうな話だが) この論争、もし本当に宗教の自由がアメリカの信条ならば、反対意見はもっと小さいはず、と思うけれど、オバマが翌日軌道修正させるほど、この反対意見の大きさから考えるに、純粋な宗教の自由じゃないのか、と考えるわけです。 となると、ダン・ブラウンがいうように、宗教ヘイブンじゃなくて、科学ヘイブンがアメリカの信条なら、もっとこの論争、すっきりと納得できる。 ついでにいうなら、政教分離とかいってくるくせに、官公庁はクリスマス休暇があるし、大統領は就任式に聖書に手を載せて宣誓する、などなど、アメリカは宗教の自由とかいうくせに、あまりにキリスト教以外の宗教に鈍感という事実が、納得できるのである。 本当に宗教色をなくすことが建国の趣旨ならば、もっと工夫があっていいわけじゃん? けど、科学ヘイブンなら、キリスト教以外の宗教をあまり意識する必要はない。(科学弾圧するのは、キリスト教くらいだから。) 面白いですねえ。

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