我思う、ゆえに我あり

2010/08/22(日)13:29

イランとロシアと経済制裁

時事(190)

アメリカのイラン政策は崩壊の一途だ。 国連を動かしてイランの経済制裁に乗り出したはいいが、ロシアや中国がイランの方に回っている。 今日も、イランの原子炉から副産物として生成されるプルトニウムをロシアが全量受け取ることを条件に、ロシアから原子炉を入手して稼動開始した、という報道がされた。(ロシアは、しっかり商売している) これは、以前ブラジルやトルコの発案でアメリカに潰された案をロシアが取って代わった形だ。 というより、それが、IAEAの矛盾の現実解である。 IAEAの矛盾というのは、核保有国は核を減らす代わりに、非保有国が保有しないように監視するのがIAEAの役目だが、その脇でIAEAには、核の平和利用(原子力)推進という役目もある。 そして、兵器用に使おうが、平和に使おうが、技術的には用途を分ける壁というのは、実際あまりないようだ。(少なくても、原料となる濃縮ウランやプルトニウムを抽出するという時点では、違いは、なさそうだ) なので、かなりIAEAの役割自体矛盾である。 もともと、ウランはアフリカとかオーストラリア、カナダなどにあるが、リオデティントなど3社の寡占状態なので、そもそもウラン購入の時点で欧米が規制をかけられるし、原子炉の技術自体も昔は欧米の独占だったから、二重で規制をかけられるという想定の上の制度だから。 つまり、欧米が売ってもいいと思う相手には売るけど、いやだと思う国には売らない、というのを、ダブルスタンダートだ、と非難されないように化粧した制度、といっていい。 とはいえ、企業は、経営が苦しくなれば、多少政府がいやだと思う相手でも、言い訳を作って売るわけで、そういう怪しいところに売れば、転売されるのは、時間の問題。例えば、カナダが持っている、CANDU炉は、プルトニウムができちゃう。で、インドに売ったら、やっぱりインドが核保有国となり、対抗して、パキスタンも保有国となる。ちなみに、韓国、中国、台湾にも売られている。(日本は、基本的に六ヶ所村にフルサイクルを作りたいから、という理由でウラン濃縮行程をしなくていいCANDU炉を採用しなかった。ふげんだけだ) そうして、イランにも原子炉を作ってくれようという企業はドイツ、フランスは撤退したけど、ロシアや中国が請け負ってくれる。 けど、核兵器不拡散という観点からすれば、フルサイクル化の技術を持たない、非保有国の外にプルトニウムを持ち出すというのは、案外現実解である。(一回使い済みのウラン、プルトニウムをリサイクルすることで、新しく燃料を入れずに永遠に使い回しするという、無限ループ行程をフルサイクルという。日本も六ヶ所村に完成しつつある) で、イランがこれに応じたという時点で、イランは核兵器を作りたがっている、というロジックは、崩壊する。 (イランとしては、石油がなくなった後のことを考えての行動である、という説明をアメリカは聞く耳を持たない。) それなのに、アメリカはロシアや中国には圧力をかけても、のらりくらりなので、日本と韓国には圧力を強めている。 ええ、理不尽な。既にほとんど取引の少ないところをゼロにしてみたところで、大口がおおっぴらに取引していたら、意味ないってば。ざるだよ。 日本はあっさりイランから石油を輸入するときに決済する銀行に取引停止を呼びかけられ、独自制裁(イランの核プログラムに関与していると思われる企業の資産凍結)をしてお茶を濁したが、韓国はがんばっている。天安号ではアメリカの世話になっているのに、がんばっている。 がんばれ。 資源確保という点でいけば、以前ここでも「資源外交連戦連敗」という本を紹介したが、その後も、イランのアザデガンを中国に取られ、イラクでの石油利権も中国に取られ、負けっぱなしが続いている。 それなのに、今までのイランとの関係を無視して、アメリカのいうなりになっていると、どこも石油、売ってくれなくなるよ。

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