我思う、ゆえに我あり

2010/09/17(金)14:33

円高介入と米議会

時事(190)

さて、今日ガイトナー財務長官が米議会に呼び出されて、人民元問題について証言させられた。 で、円高介入に火の粉が降りかかるか?と昨日書いたが、どうやらほとんど無傷で済んだようだ。冒頭陳述で議員たちが円高介入を批判しただけで、ガイトナーとの質疑応答の中では日本円は全然話題にならなかった。目的は、人民元を高くして選挙民の皆さんの雇用拡大、創出に努力している議員たちの姿をテレビに写し出すことなので、選挙民が心配していない日本はスルーとなった模様。 これが一番本音な説明だと思うのだが、一応もっともらしい理由は要る。 一説には、日本経済にはがんばって復活してもらわないといけないので、独自努力として問題とすべきではない、とか。これは理解できる。 レビン議員自身は、日本の円高介入は中国のせい、といっている。そのこころは、中国が対米貿易黒字で得た富(米ドル)を使って日本の資産を買いあさっている(日本の資産を買うには、手持ちの米ドルから日本円にする必要がある)ため、円高が起きてしまい、めぐり巡って日銀による円高介入が起きた、ということらしい。 うーん、ちょっとこじつけのような。。。が、趣旨は、中国いじめなので、やりかねないけどさ。 けど、ここにきて、ウルトラC案が飛び出してきた。ピーターソン国際経済研究所所長のバーグステンが中国が人民元の価値を操作するなら、アメリカも人民元を買って、チャラにしたら?という。 うーん、そんなカネ、どこにあるんだ?単にドル札を刷ってドルを売る気なら、ますますドルは下がるんじゃ?そして、今後中国が人民元を売って不当に安くする手を批判できなくなる。 バーグステンは、人民元を正当な価格に戻せば、経常赤字が500-1200億ドル分下がり、50万人分の雇用が増えるという試算をしている。 っていうかさ、人民元を高くすれば雇用が自動的に増えるというロジック、いい加減うんざりする。 日本を叩いたとき、雇用が増えたのは、理由は二つ。一つは、日本企業がアメリカ本土に工場を開いてアメリカ人を雇用したからだ。それができるというのは、貿易によって日本企業に富がアメリカから日本に移転したから、その富をアメリカにある程度戻す(もちろん、市場の近くに工場を作るのは輸送コストを下げるので、その点もそろばんをはじいているが)、という図式で解決した。もう一つは、日本側が既に安かろう悪かろうの時代を過ぎ、低価格が売りの状態ではなかったということ。アメリカに工場を移転しても、日本企業の製品の売りは消滅しなかった。 けれど、中国の場合、中国との貿易赤字が膨張している理由の大部分は米企業が安い労働力に惹かれて工場を開き、本国に送り返しているということだ。なので、富の移転は日本の場合ほどには行われていない。さらに、中国製品の売りは、値段の割には安いという、コストパフォーマンスだ。高品質とか、独自ブランドがあるというわけではない。なので、中国企業がアメリカに工場を開いて、アメリカ人を雇えば、コストは上がる。値段が高い中国企業の製品は売れるか?とりあえずその製品の魅力はかなり落ちる。 だから、雇用は単純に増えるとはとても思えない。 むしろ、中国に工場移転をするような米企業に重税をかけて、アメリカ本土に工場を残す選択肢をより魅力的にするとか、米企業自身に高付加価値製品をたくさん作らせるとか、米企業に国際競争力をあげるように仕向けないと雇用は増えません。 いい加減、分かろうよ。安直に他人を非難する前に、わが身を振り返れ。

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