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雪華月兎のSSサイト(仮)

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テニスの秋葉様(前編)

涼しげな風が流れていく。

柔らかく、気持ちのいい風だ。

今日はこれぞ秋晴れ!!といったような天気。

とにかく日差しは温かく、風は涼しい。

窓をほんの少し開けながら志貴は大きく伸びをする。

いや~、今日はいい天気だなぁ~。

そんなことをぼんやりと考える。

時間はもうそろそろ正午といったところ。

今日は予定も無いし昼寝でもするかなぁ~。

そんな風に今日の予定を考えていると後ろのドアがノックされる。

「志貴さ~ん」

ドアの向こうから聞こえる声はこの屋敷の侍女である琥珀のものだった。

何の用だろうと思いながらドアを開ける。

「ん、どうしたの?」

すると、琥珀さんは後ろ手を組みながらにっこりと笑いながら、

「志貴さん、テニスをしましょう」

そう告げた。

こうして、遠野志貴の楽しくも災難まみれで、

トンデモナク馬鹿ゲタ、

テニスが始まったのであった。




「テニスの秋葉様」




「えっと、それは一体?」

いきなり琥珀さんに言われた一言は志貴の常識の範疇を超えていた為、情けなくももう一度聞き直さなくてはならなかった。

そして、当の琥珀さんはというと相変わらずにっこりとした笑みを崩さず

「だから、テニスをいたしませんか、と言ってるんですが。知りませんか、テニス?」

そう言うと琥珀さんは組んだ後ろ手をほどき、テニスのラケットを見せた。

志貴はラケットを見て初めて琥珀さんの言わんとしていることが分かった。

「それにしても、何でテニスなの?」

当然の疑問をぶつけてみる。

すると琥珀さんはその笑みを濃くしながら部屋に入り、

少し開けておいた窓を思いっきり両手で押した。

部屋の中に涼しい風が舞い込む。

その風を受けて琥珀は後ろにいる志貴のほうへ向き直った。

「志貴さん、この窓の外を見てどう思いますか?」

「えっと、今日はいい天気だなぁ~、とか?」

そう言うと琥珀はキラリと目を光らせる。

そして、いきなり捲くし立ててきた!

「そうです、志貴さん!!今日はお天気なのです。そして、この秋晴れという言葉が似合う休日に外に出なくてど~しますかっ!」

凄い剣幕で言われた。そして、

「どうせ、志貴さんのことでしょうから今日はゆっくり昼寝でもしようかなぁ~とか思っていたんでしょう」

それが、あまりに図星だった為思わずたじろぐ。

「まったく、志貴さん!青春は短いんですよ、今運動しないと後で後悔なされますよ~」

正直、青春とテニスは無関係なんじゃないかと思ったが敢えて口には出さないでおく。

「それにしても琥珀さん。テニス、二人でやるの?」

そう、この疑問は当然だった。

秋葉がテニスをやろうと言ってやるとは思えないし翡翠に至ってはテニス自体知っているのかが疑問だった。

そんな心配を知ってか知らずか琥珀はにっこりと笑いながら

「心配はご無用です♪もう秋葉様も翡翠ちゃんも了解済みですから。」

志貴はそれを聞いて狼狽する。

あの秋葉が!?あの翡翠がっ!?

志貴は思わず、

「琥珀さん、一体どんな手を・・・・・」

すると琥珀さんは急に今までの笑みから悪代官の笑みへと変え

「聞きたいですか、志貴さん?」

と、囁いてきた。

「いえ、遠慮しときます」

背筋にイヤ~な汗を掻きながら志貴は声を絞り出した。

そして、もう一度琥珀の顔を見上げたときにはいつも通りの笑顔に戻っていた。

「それじゃあもう一度、改めて聞きますけど志貴さん、テニスってしたことありますか?」

「えっと、まぁ授業で少し齧った程度だけど」

志貴の答えに琥珀は満足そうに頷く。

「ルールを知っているならOKです。それでは遠野家専用のコートがあるんで行きましょう♪」

そう言いながら琥珀は志貴の腕を掴んだ。

「えっ、今すぐ?」

そう聞くと琥珀は笑みを強めながら

「えぇ、善は急げっ、ですよ志貴さん♪」

「それって、なんか違うような・・・・・・」

そんな風にグチグチ言ってる志貴に琥珀は切り札を持ち出してきた。

「も~、志貴さん。男は小さいこと言うのは止めましょうよ~。それにですね、つまりテニスをするって事はもしかしたら秋葉様や翡翠ちゃんのスコート姿が見れるかもしれませんよ♪」

「―――――なんだって!!」

「さらには、試合が激しくなるにつれお二人のスコートの下があんな事やこんな事に・・・・」




・・・・・



・・・・・・・・・・・






・・・・・・・・・・・・・・・・・




ブシュッ!!




そんな擬音と共に、志貴は鼻血を噴出す。

そして、某雛見沢の住人のように変貌する。

「はぅ~~~~~、スコート姿の秋葉と翡翠、かぁいいよ~~~~~」

そして、自分のセリフで想像したのかさらに鼻血の量を増やす。

「はう~~~~~~、ふたっ、二人とも、お持ち帰りだよ~~~~~~~~~~~!!」

一方、琥珀のほうはかなり冷静にその様子を見ている。

そして、いい加減志貴の血が無くなってしまうんではないかと思う頃に、

琥珀は相変わらずの笑みを見せつつ、

「それでは志貴さん、テニスをいたしましょう」

そう切り出した。

その一言で我に返る。

そして清々しいまでの笑顔で一言

「行きましょう、出来ればデジカメ持参で」

と、告げていた。

















秋晴れの空の下、

心地よい風が吹くテニスコートの上で、志貴は立っていた。

場所は、遠野家が経営している総合スポーツセンターの一角、

そこで俺は誰がみても分かるほどに落胆していた。

そして、ゆっくりと琥珀さんの方に歩み寄り小声で

「約束が違うじゃないか!!」

と、訴えたのだが

「あら、なんか約束しましたっけ?」

なんてとぼけている。

「何言ってるんだ!!二人がアンスコだって言ったの琥珀さんだろ。けど二人ともジャージ姿じゃないかっ!!」

そう、二人はポロシャツにジャージという普通の姿でそこにアンスコやらブルマやらフトモモやらといった男のロマンを感じさせるものは皆無だった。

このことに対し憤慨している一匹のオスに琥珀さんは容赦無く言い切る。

「誰も絶対秋葉様と翡翠ちゃんがアンスコを着ているなんていっておりません。ちゃんともしかしたらと言いましたよ♪」

しれっと言われて思い返してみる。

その回想では確かに琥珀さんはもしかしたらと言っていた。

「琥珀さん、普通に呼んでも俺が来ないと思ってハメたな!」

そんな恨み言に琥珀さんは

「あら、人聞きの悪い。私はただ夢を与えて差し上げただけですよ~」

なんて言い返す。

結局、この一言で言い負かされ、

「しこたま呪ってやる~」

と、呟くことしか出来なくなってしまった。

「志貴様、お気分でも優れないのですか?」

そう言って翡翠は心配そうにこちらの顔色を窺う。

「いや、大丈夫」

そう、こんな風に言われては翡翠や秋葉の恰好のせいで怒ってるなど言えるはず無かった。

「兄さん、ホントに平気なんですか?折角健康的に汗を流そうとして貧血で倒れて救急車なんて洒落になりませんからね」

そんな心配してるのかけなしてるのか分からない言い回しをする秋葉も、さすがにこの男の欲望が分かるはずも無く、

結局、この悶々とした気持ちを抑えるにはスポーツしかないようだった。







「それでは、志貴様。まずは軽く打ち合いでもいたしましょう」

そう言うと翡翠はゆっくりとしたボールを打ってくる。

正直、ラケットを持つこと自体久しぶりだったので感覚を思い出すように打ち合っていく。

その横のコートで、秋葉と琥珀さんが同じように始めたようだった。

しかし、横から聞こえる音は、

バシュッ!!

やら、

ドスッ!!

やら、

ズバキューン!!

など、およそテニスらしからぬ擬音の応酬だった。

そして、その擬音の合間に

「今日こそあなたのその笑顔を歪ませてあげます!」

だとか、

「あはは~、秋葉様。テニスは貴族のスポーツですのでもっと笑顔でやりましょ~♪」

とか、

「ふん、後で吠え面かいても知りませんから!!」

などの声が聞こえてくるのだが敢えて聞こえないフリをしとくことにする。

そんな風になかなかスリリングな擬音の嵐を尻目にゆったりとした打ち合いを続けること二十分。

ようやく体も温まったってきた。

そして、向こうのコートを見てみると、ようやく1ラウンド終わって二人がお互い肩で息をしている常態だった。

「おいおい、もう疲れたのか?二人とも前半からとばし過ぎじゃないか?」

「何を、・・・・・っはぁ、はぁ、言ってるん、・・ですか、兄さん。わ、・・・たしは、はぁ、はぁ、・・・・全然疲れてなどいません」

正直、これほどまでに見栄を張る種族を俺は今まで見たことが無い、そんな気持ちを抑えつつ、

「じゃあさ、少し休憩したら今度は試合にしよっか?」

そう提案してみる。

その瞬間秋葉の目がギラリと音をたてる。

「ふっ、確かに面白そうですね。」

そう言った秋葉は早くも呼吸を整え臨戦体制をとる。

よく見ると先程かいた汗が体温で蒸発して陽炎を漂わせている。

その横で話を聞いていた琥珀さんも、見た目はただ微笑んでいるだけだが後ろに何故かドス黒いオーラを滲ませている。

う~ん、正直生きて帰れるんだろか?

そんな不安を胸に遠野家テニス杯が始まった。














そんなこんなで始まった遠野家テニス杯、試合形式はダブルスで遠野家VS使用人の図となった。

ルールは、セルフジャッジの7セットマッチ

翡翠のサーブからゲームスタートとなった。

そして、いざゲームが始まる頃になって琥珀さんがとんでもないことを提案してきた。

「ですから、どうやら翡翠ちゃんが特製のスポーツドリンクを製作したみたいなんですよ~、負けた方のチームはそれを飲むってのはどうでしょう?」

そんな賭けを持ち出してきた。

「琥珀、あなた解っているの?翡翠の特製ドリンクがどれほどのものか!」

そう言ってる秋葉の顔は早くも軽く青ざめている。

「琥珀さん、一応聞きたいんだけど材料は?」

「えっと、私も詳しくは知りませんけど~、今回はゴーヤとハバネロ、そして大量の梅干、後は何故かラード缶が一缶丸々無くなっていました」

「うわっ、それドリンクじゃないんじゃ・・・・・」

思わず秋葉と同じように顔を青くする。

それを見ながら琥珀さんは

「いえいえ、ようは負けなければいいんですよ~。それとも、自信が無いんですか~♪」

なんて言ってきた。

こんな風に言われて秋葉が黙ってるわけも無く、

「いいでしょう、勝ってあなたにたっぷり飲ませて差し上げるわ」

「はい、それじゃあ賭けは成立ですね~」

「えっ、ちょっと、俺はOK出してないんだけど・・・・・」

(ギロリ)

「何か言いましたか、兄さん?」

「イエ、ナンデモアリマセン」

「姉さん、どうかしましたか?」

「なんでも無いのよ、翡翠ちゃん。じゃあ、お二方もOKと言う事で~♪」

こうして遠野志貴の想いとは裏腹に本当の死合が始まったのであった。


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