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雪華月兎のSSサイト(仮)

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第四章 ガーデニングな一日

「しっきさ~ん♪」

朝御飯を済ませて部屋に戻る途中、いきなり琥珀さんに背後から呼び止められた。

「ん、どうしたの?」

なんとなく、その笑顔に嫌な予感を感じつつ努めて冷静に訊ねてみる。

正直、この笑顔は危険だ。

琥珀さんのこの手の笑顔は確実に何か企んでいる時だ。

そんな風に構えていると琥珀さんのほうからいきなり、

「いいんですか、そんな嫌そうな顔して?少なくとも今は私のほうが立場は上なんですよ~♪」

なんて言ってくる。

そう、確かにこの前の賭けに負けて以来俺は琥珀さんの召し使いなのである。

「うっ、分かっています・・・・・・。」

「OKです。それでは志貴さん、今日はお暇ですか?」

あぁ、やっぱり。と内心で思いつつも召し使いなのだからしょうがない。

「うん、部屋に戻ったらもう一眠りしようかと思ってたくらいだから、かなり暇だよ。」

そういうと琥珀さんは笑みを深めて、

「それでは二つ目の令呪を行使しても構いませんかー?」

「いや、それ俺たちの作品じゃないから!!」

「ありゃりゃ、随分と素早いツッコミですね、志貴さん。」

「いやいや、それより二つ目の命令はなんですか、ご主人?」

そういって、よく執事がやるようなポーズをとる。

「ええと、では二つ目です。今日は一緒に庭弄りをして貰います!!」





・・・・・、







・・・・・・・・・・・・・・・、






「庭弄り~?!」










あーゆーはっぴぃ 第四章
ガーデニングな一日









「イヤです!!」

開口一発、否定の言葉を口にする

「えぇ、志貴さん!!なんでそんなに嫌がるんですか?!」

「だって、あの裏庭でしょ?あそこは魔境と繋がってるって俺は知ってるんだ!!」

そう言ってなんとかそれだけは勘弁して貰おうと試みる。

「第一さ、ガーデニングなんてしたこと無いからさ、邪魔になるだけだって」

あそこだけは避けなければいけない、あそこに入れられたら最後だ。

生きて帰れない。

そんな気持ちを知ってか琥珀さんは笑顔を向けながら

「大丈夫ですよ~、危ないのは奥だけですから~」

いや、琥珀さん。今の発言がすでに危ないですから。

「なんにせよ、俺は手伝いません!!」

そう言ってソッポを向く。

今回ばかりは琥珀さんより命を優先させる。

すると、琥珀さんは左腕の裾を捲くりだす。

そこにはなんだか変な模様が描かれている。

「志貴さん、そういう事言ってますと令呪を使いますよ!!」

そう言いながら腕に描いたペイントを見せてくる。

「いや、だから琥珀さん。それはうちらのネタじゃないから」

「まぁ、細かい事言うのはやめましょう。志貴さん、ガーデニング手伝ってくださいね♪」

そう言われ、結局琥珀さんに押し切られてしまった。

「それでは志貴さん、この恰好に着替えて裏庭の前に集合です。ちゃんとフル装備できてくださいね」

それを笑顔で言いながら琥珀さんは作業着を渡してさっさと行ってしまった。

後に残されたのは俺と作業着と思われる物体、

「しょうがないかぁ~」

そう言いながら俺は着替えを始めた。









なんじゃ、こりゃ?

服を着て感じた第一印象である。

まずは上着、これは比較的普通のポロシャツである。

ただ、気になるのは緑一色の地に黄色で横一文字の腺がひかれている事。

しかも腹の辺りに、

そして、ズボンは真っ黒なゴムで出来たズボン。

そしてオプションに麦藁帽子とクワ。

そう、簡単に今のカッコを表現するなら、まさにカールおじさんだった。

「うわっ、カッコわる!」

思わず口に出してしまう。

しかし、琥珀さんにこの恰好で来いと言われた以上行かなければならない。

部屋から裏庭まで誰にも会わないことを祈りつつ走り出した。

そして、運良く誰にも会わずに来た裏庭では琥珀さんが同じ恰好をしていた。

「志貴さん遅いです!早く作業を始めませんと、時間は待ってくれませんよ~」

どうやら琥珀さんの方はこの格好に何の違和感も感じてないようだった。

「えっと、琥珀さん。この恰好って・・・・・強制?」

そんな風に恐る恐る聞いてみる。

それに対して琥珀さんは、

「いえ、正装です!!」

そう言い切った。

「えっと、庭弄りに正装なんてあるの?しかもこんなダサい」

思わず本音がこぼれる。

それを聞いて琥珀さんは、目をギロリと光らせる。

「何を言ってるんですか志貴さん!!この服装は仕事の効率がはかどるように出来たパーフェクトスーツですよっ!!それをあろうことかダサいとは!!」

琥珀さんは身振り手振りで熱弁を奮う。

それに相槌を入れながら一言、

「それで、ホントは?」

「気分が出るから♪」

言ってから思わず「しまった」と言う顔をして口元を抑える。

それに対してこっちはやっぱりといった顔だ。

「さぁ~て、ちゃっちゃと始めましょ~」

「あっ、琥珀さん誤魔化そうとしてるだろ!」

「まったく、志貴さんは細かすぎます。それに今更着替えに戻るのも面倒ですよ~」

「うっ、そりゃそうだけど・・・・」

結局しぶしぶながらこの恰好で始めることとなった。

「それで、俺は何をすればいいの?」

「えっと、まずは草むしりですね~。こっちからあの辺までの雑草をむしってください」

言われた個所はかなりの面積があり、その花壇の中は確かに雑草で覆われていた。

う~む、これは確かに急いでやらねば、

そう思って早速作業を始める。

花壇の端に群生している雑草をどんどんむしっていった。

ふと、この作業は昔琥珀さんの料理を手伝ったときに行った海老の背腸取りを髣髴とさせた。

それはただ、黙々と取り除いていく作業が似ているだけかもしれないし、横にいるのがあの時と同じ人だからかもしれない。

そんなことを考えながら雑草をむしっていく。

そんな風にぼぉっとしていると向こうにいた琥珀さんが声をあげた。

「ダメです、志貴さん!!それは抜かないで下さい!!」

あの、いつも笑顔が耐えない琥珀さんが今回は凄い剣幕だ。

「えっと、どうしたの?」

「いえ、だから、それを抜いちゃダメなんです!」

そう言って琥珀さんは手をさっさと離せと指示する。

しかし、その焦りっぷりに違和感を覚える。

そして、好奇心から思わず聞いてしまう。

「琥珀さん、なんで抜いちゃいけないの?」

「それは、その、えーと・・・・・・鳴くんで」






・・・・えっと、







・・・・・・・・・・それはつまり、








・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、








「マンドラゴラ?」

「きゃ~、正解。博識ですね~、志貴さん♪」

笑いながら琥珀さんは手を叩く。

しかし、そんな琥珀さんを見てる俺の瞳はナミダ目だった。

「危なくないって言ったじゃないかっ!!」

そう怒鳴りながら先程まで引き抜こうとしていた手を慌てて離す。

「いえ、それが、その子はいつの間にやら育ってしまいまして・・・・・・、特に何かした訳ではないんですが・・・・・・・・」

頬を掻きながら琥珀さんはそう告げた。

「本当に?」

「ホントですよ~、強いて挙げるならこないだ読んだ漫画を真似して、手をポンと叩いて地面に手を付けて『練成』って言ったくらいで」

琥珀さん、あなた何者ですか?

案外、国家錬金術師で二つ名が『緑の錬金術師』とかなんじゃ?!

ってか、漫画読んだだけで錬金術が出来るようになるなんて、

「つかぬことを窺いますが琥珀さん?」

「はい?」

目の前にいる錬金術師に恐る恐る訊ねてみる。

「なにと等価交換したんですか?」

そう、これはかなり気になるところだった。

しかし、琥珀さんはさも事なげに、

「志貴さんへの想いですかね」

なんて微笑みながら言ってきた。

「うわっ、琥珀さんヒドイ!!」

「あはは~、冗談ですよ、ジョ・ウ・ダ・ン♪」

そう言って口元に手を当てて笑う。

「大体、なんとなく出来ちゃったんですから、等価交換もなにもありませんよ~」

つまり彼女は何も交換せずに練成したと、

それって錬金術より凄いんじゃ?

結局、結論は琥珀さんとこの地がオカシイと、

この地が人外魔境の境地だから出来た。

そう思うことにしといた。








そんな風に午前中は雑草をむしる作業を続ける。

日差しは段々と強くなっていく。

二時間ばかり同じ姿勢で草をむしり続けているのだから体に掛かる負担は半端じゃない。

しかし、二時間やり続けた甲斐あって琥珀さんに指定された区域はほとんど終わった。

そして、もう終わりという頃になって琥珀さんから声が掛かった。

「志貴さん、そろそろ休憩にいたしましょう」

いつの間にか琥珀さんの手には大きなお盆が持たれており、

その上にはおにぎりやオカズ、それとよく冷えてそうな麦茶があった。

「うわ~、助かった」

そう言うと腰をあげる。

背骨の軋みとともに伸びを一回して琥珀さんのお盆からおにぎりを一個つまむ。

うん、塩加減が少し強めなのが汗をかいて塩分の少なくなった体に丁度いい。

中身はどうやらオカカらしい。

それも市販のものではなく自家製だ。

「くぅ~、美味いっ!!」

そう、労働の後の飯は普段に比べて格別においしい。

労働はもはや一種の調味料と言っても差し支えないのではないかと思ってしまう。

そして、コップに入れて貰った麦茶を一飲み、渇いた喉を潤す。

「ぷはっ!!」

「あんまり焦らないで下さい。喉に詰まらせたら大変ですから」

あまりにがっついて食べていたので琥珀さんが苦笑しながら言ってくる。

「まだまだ、イッパイありますし、それに午後は午後で作業がありますからゆっくりしてください」

「え~、まだあるの?」

思わず愚痴ってしまう。

「えぇ、でも午後は比較的に楽な作業ですからそんなには疲れませんよ~」

そんな風に午後の作業の予定を聞きながら束の間の休憩をゆっくりと過ごす。

他にも、あの辺には何が咲いているのか、

あの綺麗な花はなんなのか?

そういった他愛の無い質問をする。

それを琥珀さんは楽しそうに一つ一つ丁寧に教えてくれる。

そんな他愛のない会話で随分と時間を潰したので午後の作業が始まる頃には疲れも汗もすっかりひいていた。










「そんな訳で午後はこの『遠野家裏庭家庭菜園』の領土拡大を手伝っていただきます!!」

お盆やお皿を戻した後、琥珀さんは元気に言った。

正直、こっちはこれ以上人外魔境を増築するのもどうかと思う。

「大丈夫ですよ~、今から増築したところに植えるのはハーブですから」

こっちの態度で心の内を読んだのか、琥珀さんは、心配っ無用です♪とばかりに説明をしてくれた。

そんな訳で午後の作業が始まる。

まずは花壇作り、

レンガを琥珀さんが書いてくれた線に沿って並べていく。

そして、並べ終わったら花壇の中の土をほぐしていく。

この時に先程渡されたクワが役に立つ。

しかし、使い勝手が分からないからかなかなか思うようにいかない。

それでもなんとか土を掘り返していく。

そして、その後で肥料を撒き、混ぜていく。

窒素、リン酸、カリウムなどの化学肥料も同時に混ぜ、それで土作りは完成する。

そして、出来上がった土に山と谷を作る。

その谷の方にハーブの苗を置き、横の山から土をかける。

そして、並べられたハーブ達に種類ごとの看板を刺し、

最後に水を撒く。

こうして、ハーブ園の完成だった。

「ふぅ~、これでよし!」

最後に周りを片付ける。

そして、お互いがお互いの顔を見て、

「「お疲れ様でした~」」

と、二人で言い合う。

「志貴さん、ありがとうございました。おかげで随分と早く出来上がりました」

「あぁ、いや、別に構わないよ。後半はこっちも楽しんでいたし」

そう、後半のハーブ園作りのほうはかなり面白かった。

自分達で一から作り上げていく。

何も無かった所にこれだけ立派なハーブ園が出来ること。

その一つ一つが自分の中で新鮮な感情となっていく。

「正直、ガーデニングがこんなに面白いものだったなんて知らなかったよ。誘ってくれてありがとう」

「いえ、お礼なんていいですよ。手伝って貰って感謝されたりなんか罰が当たっちゃいます」

そう言って琥珀さんは微笑む。

「それじゃあさっ」

先程まで考えていたことを提案してみる。

「罰が当たるの代わりに一つ、こっちからお願いしてもいいかな?」

そう切り出すと琥珀さんは頭にはてなマークを作りながら、

「えぇ、構いませんよ~」

そう安請け合いをしてくれる。

内心、そう言ってくれるだろうなと思っていたが、それを聞いてお願いを口にする.

「それじゃ、お願い!このハーブ園は二人の物にしてくれないかな?」

それを聞いた琥珀さんは口をポカンと開けている。

「だからさ、これからもちょくちょく琥珀さんのお手伝いしてもいいかな?ってことなんだけど・・・・」

ここまで言って琥珀さんはようやく顔を変化させる。

驚きから喜びへ。

「OKです!!それは、もうもちろん、全然大丈夫です!!むしろこちらからお願いしたいくらいですよ!!」

琥珀さんは興奮気味に捲くし立てた。

そして、徐々に興奮が冷めてきて今度は、

「うわ~、嬉しいです~。今度、春になったら向日葵なんかも植えたかったんですよ~♪」

そんなこれからの予定を次々と言っていく。

そして、急に真顔になるとこちらを向いて

「志貴さん、ホントにご迷惑で無いんですか?」

そう言いながら心配そうにこちらの顔を覗き込む。

いや、正直あそこまで喜ばれたのに今更その言葉も無いだろうに、

そう思いながらも苦笑しつつ、

「いや、琥珀さんと一緒にガーデニングしたいんだよ。こちらこそ、お邪魔じゃないかな?」

そう言ってみる。

すると、琥珀さんの顔がみるみる赤くなり、

そして、極上の笑顔で、

「はい、喜んで!!」

と、了解の返事を返してきた。















こうして一日が終わる。



二人で屋敷へと戻る帰り道、



今日の御飯は腕によりをかけて作ります~



とか、



今度見てもらいたい花壇があるんですよ~、



そんな声の横で、



志貴は考える。



こんな風に好きな人と一緒に共通の趣味を持って暮らすこと。



二人で、小さな一軒家に住み、



休日に、庭でガーデニングをする。



もちろん、隣りには自分の愛する女性、



いまも、自分の横に居てくれている女性、



きっと、ひまわり畑がとても似合う女性、



なにより、笑顔でいることが一番似合う彼女の横に――――――、











柔らかい風が吹く。

夕焼けにより全てが赤く塗りつぶされている。

そんな裏庭からの帰り道、

志貴は、唐突に

「琥珀さん!」

そう言って彼女を呼び止める。

そして、振り向いた彼女の唇に自分の口を合わせる。

向こうは一瞬驚き、

そして、ゆっくりと力を抜く。

志貴は、琥珀の力が抜けたことを確認すると腰に手を回し、

抱きしめる。

そんな二人の間を、時間だけが、




ゆっくり、







ゆっくり、






時を刻んでいく。





二人の行先へ向けて、





現在から未来へ、ゆっくりと刻を進めながら――――――――――























そんな訳でいつも通りの後書きです。
いや~、今回のSSはとにかくガーデニングについて調べるのが大変でした。
無知って辛いよなぁ~とか思わずにはいられなかったです。

えっと、ながらく連載を続けていた「あーゆーはっぴぃ」もそろそろお終い。
と、言いますのもそろそろ次のネタ出来てきたしいい加減琥珀さんばっかり書くのもどうかと思いまして。
そんな訳で次回の第五章で一先ずこのシリーズは完結いたします。
う~ん、こんなこと言ってますがじつはまだ第五章手付かずなんでどうなることやら(汗


そんじゃ、まぁ今回は食べわんさんと恒例のチャットを~、なるべく短めに。





雪華「ういっす」

食べわん「お前はまた、人が日記のネタ出しで唸ってる時に来るなぁ」

雪「ははは、タイミングの貴公子と呼んでくれ」

食「あぁ、なるほど(ちょっと眠いので適当ツッコミ)」

雪「うわぁ!じゃあ、感想をどうぞ」

食「えっ、日記やら眠いやらで頼み辛い雰囲気出してるんだけど!」

雪「感想をドウゾ!!」

食「容赦ねぇな、お前」

雪「いやいや、お前さんほどじゃないから安心して♪」

食「ほんじゃ、感想。ガーデニングについて調べてるんだろうなぁ・・・。人にあげるときとはやる気に差があるんじゃないカナ・・・カナ?」

雪「イヤイヤ、俺ノ情熱ハドッチノ作品ニモ篭ッテルッテ!」

食「嘘だっ!!」

雪「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、」

食「ってか、『嘘だっ!!』が一発変換できるパソコンってのもどうだろう?」

雪「大丈夫、うちもだから(笑)」

食「そんで、結局どうやって終わらせるの??」

雪「ん、えっとなえっと、志貴に殺されたアルクを見たシエルが激怒して金髪巨乳のスーパー一般人になって第七聖典にパイルダーオン」

食「是非、パイルダーオンする時はケツからでお願いします!!」

雪「いや、信じるなよ!しかもそこかよっ!」







やっぱりパイルダーオンの先っぽは尖っていてアナ○に刺さるのかなぁ?








そんな感じで食べわんさんとの会話は99%下ネタになってしまう自分がいたりして、それが悲しくも嬉しいことだったり。
まぁ、こーいうくだらない会話が出来る友人というのも時には必要と言う事でひとつ。

そんじゃ、まぁ今回はこの辺で。









感想と言う名のエサを与える


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