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雪華月兎のSSサイト(仮)

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寒空の帰り道






はぁ~、

白い息が口元から漏れる学校からの帰り道。

久々に天気がいいのに気温の方はかなり低いらしい。

夕焼けに赤く染まった町並みを歩きながら家路へ急ぐ。

有彦の情報によるとこれから夜にかけて更に冷え込むらしい。

最近、遠野家から学校に通うようになってから一つだけ憂鬱になったことがある。

そう、屋敷へ帰るためには必ず通らなくてはならない上り坂。

朝は下りでかなり楽をしているのだから当然と言えば当然なのだが、

下りだけにならないかなぁ~。

そう思わずにはいられなかった。

はぁ~、

もう一度ため息を、今度は先程より長く吐く。

まだ問題の坂道までは随分と距離がるのだが、

考えずにはいられないよなぁ~。

ぼぉっ、と帰りに待ち構えている坂道のことを考えながら商店街を歩く。

あれ?

なんとなく眺めていた町並みに見知った影があった。

あの後ろ姿は・・・・・・、

その服装もさることながら、その可愛さで回りの視線を釘付けにしている笑顔。

琥珀さんだ。

どうやら向こうは買い物の帰りらしい。

荷物を両手に抱えながら店先で店員と話し込んでいる。

会話が弾んでいるのか時々こちらにも聞こえてくるような笑い声。

夕日に晒され彼女の後ろ姿は赤に染まっている。

ふと、そんな彼女の後ろ姿を見て、



――――懐かしいな



そんな感想を抱く。

何故そんな事を思うのか分からないが、頭ではなく心がそう感じてしまったらしい。

そんなどこか懐かしい後ろ姿を見つめ、

あぁ、和むなぁ~。

そう思いながら見惚れていると話が終わったのか琥珀さんは店先を離れる。

一瞬で我に返り、一緒に帰ろうとその後ろ姿を呼び止める。

「琥珀さんっ!!」

少し距離があったため少し大きな声で呼びかける。

琥珀さんの背中が一瞬ビクッと動き、振り向いてくれる。

「あぁ、志貴さん。どうしたんですか?こんな所で」

「あぁ、今学校の帰り。そっちは夕飯の買い物?」

「はい、そうなんですよ志貴さん。あっ、今日はおいしそうなお魚がゲット出来ましたからお夕飯、楽しみにしていてくださいね♪」

そう言う琥珀さんはいい食材が手に入ったからかご機嫌なようだ。

そして、横に並んで歩き出す。

どうやら今日は大量に買い込んだらしく両方の袋には溢れんばかりの食材が詰まっていた。

「琥珀さん、荷物持つよ」

琥珀さんの細腕に見ていて痛そうに思えるくらい袋が食い込んでいる。

その姿を見たら持たずにはいられない。

しかし、

「えっと、悪いですよ志貴さん。それにこれは私のお仕事ですから」

そう言って、やんわり断ってきた。

だが、こちらとしてもここは譲れない。

「何を言ってるんだよ、そんなに手を真っ赤にして!!」

「いえ、えっと、これはきっと寒さで・・・・・・」

「はいはい、言い訳はいいから。大体、こんな時荷物を持つのは男の仕事って相場は決まっているんだから」

そう言って強引に琥珀さんの左手から荷物を奪う。

「あっ!」

「さぁ、右手の荷物も貸して」

しかし、琥珀さんの方はしばし思案して、

「じゃあ、半分だけ持ってもらう、でどうでしょう?」

そう提案してきた。

こちらとしては少々不服だったが、

まぁ、ここで強引に言って琥珀さんが引き下がる訳ないか。

そう思い直し

「OK、じゃあ半分づつ」

了承する。

「ハイ、半分こです♪」

何が嬉しいのか琥珀さんは笑みを深めてそう言った。

そして二人歩き出す。

歩きながらお互い今日あったことなど、取り留めの無い会話をしていく。

そんな折、路地の間を風が吹き抜けた。

身を刺すような北風、

思わず身を縮める。

その時、隣りをチラッと見やると、

・・・・・手が赤い。

荷物を持っていない方である左手の赤みが引いていなかった。

そこでようやく気付く。

先程言っていたことはあながち間違っていなかったのだ。

よく見ればこちらの手も赤みを帯びている。

そこまで考えて、

「きゃっ!!」

おもむろに琥珀さんの手を握った。

「いきなりどうしたんですか、志貴さん?」

琥珀さんの方は急に手を握られ当惑している。

思った通り、

握った琥珀さんの手は氷のように冷たかった。

「琥珀さん。手、寒くない?」

「えっと、まぁ、冬ですからね~」

握られた手を見つめながら琥珀さんはそんな返事を返す。

「じゃあさ、帰るまで手を繋いでいない?」

頬の辺りが寒さとは違う理由で赤くなっていくのが分かる。

気恥ずかしくて顔をまともに見れないものだから握った手に問い掛ける。

「えっと、嫌ならいいんだけど・・・・・・」

そう言いきる前に答えが帰ってきた。

しかも声ではなく態度として、

こちらの手が握り返される。

「行きましょう、志貴さん」

そう言われ思わず見上げた琥珀さんの顔は、

夕日に照らされてなのか真っ赤に染まっていた。

そして二人、もう一度歩き出す。

今度はお互いの間に握り合った手を挟んで、

今度は恥ずかしさが勝ってなかなか会話が進まない。

そんな、ほんのちょっとギクシャクした会話を続けていく。

そして坂の手前、ふと気付いて目線を横に向けてみる

ほんの少しだけ目線を下げるとそこに彼女の横顔がある。

すると、目線に気付いたのか琥珀さんがこちらを見てきた。

彼女の方は少し目線を上げた状態。

そして数秒見合い、

「ふふふっ」

どちらともなく微笑む。

「どうしたんですか、志貴さん?」

「いや、何て言うか、こういうのいいなぁ~と思って」

「えぇ、奇遇ですね。私も丁度同じ事を思っていたんですよ」

ただ、二人で帰っているだけ。

たったそれだけの事なのに何故か特別なことだと思えてしまう。

それはきっと、隣りで歩いているのが彼女だから。

そんな事を思いながら坂を登りだす。

いつもは億劫で仕方が無い坂道。

隣りを歩く彼女の存在で随分と様変わりした。

速度を落とさざる得なかった傾斜はゆっくり歩く口実に、

いつもは眩しすぎる夕日は二人の赤くなった顔を隠し、

寒くて仕方が無かった北風ですら、握った手を離さないようにする為だと思える。

そんな思いを胸に、

ゆっくりと二人、坂道を登っていく。

出来ることならこの坂道に終わりが来ないよう、

そんなくだらない事を望みながら、

ゆっくり、

ゆっくり、

アスファルトを踏み締めていく。

――――――手の平に彼女の温もりを感じながら。
















「琥珀さん」

「はい?」

「実は俺、この坂大嫌いなんですよね」

「あはは~、分かりますよ志貴さん。私も苦手です」

「けど、なんか今日だけは好きになれそうです」

「・・・・・私も、今日だけ何故か好きになりました」

「ははっ、なんでだろうね?」

「多分、・・・・隣りにいるのが志貴さんだからですよ」

「・・・・・うん、俺も琥珀さんが横にいてくれるからだと思う。だからさっ」

「はいっ?」

「もし良かったら、・・・・・・・これからもたまには一緒に帰らない?」

「・・・・・・・・はいっ!!嬉しいです♪」

そんな会話をしながら帰る二人の影を、



――――――――――――夕日が優しく染め上げていた。

















そんな訳で後書きです。今回のSSは『あーゆーはっぴぃ』に入れられなかったネタの第一弾と言った所です。



う~ん、どっかで使えなかったか今更ながらに少し後悔。



個人的には手を握り返してくる琥珀さん萌え、と言いますかそこが書きたかったのですよ。ついでに一番苦戦したのが「速度を落とさざる~」の文章ですね。最終的には満足のいく書き方が出来たのですが前半は酷い有様でした、実際。





そんでもって、次回作の方は順調に停滞中。
終わりのクロニクルSSや、バイトや、ドラクエ8や、SSX3や、カラオケなどでなかなか思うように進みませんのです(ぉ

まぁ、来月中には何らかの形で公開して行けたらいいなぁと思っております。




そんな訳で今回はアシッドマン「赤燈」を聴きながらこの辺で。
(えっと、今回は時間の都合上ちゃっと出来ませんでした。楽しみにしてる方がいたら申し訳ございませんでした)







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