姫様、出奔!!
父さんの顔は知らない母さんは生まれたばかりの私が壁にはさまって泣いてるのに知らん振りして他の兄弟を連れてどこかに消えちゃったおなかもすいて、のども渇いてなんだか立ち上がる元気もなくなっちゃってもうこのまま壁の中で死んじゃうのかな?私の人生ってなんだろうなぁ?なんて考えてたら壁の上の方から声が聞こえてきたの「生きてる?」「大丈夫動いてるよ」「コレ食べれるかな?」「生まれたばかりみたいだからまだ何も食べないよ」「それより水分やらなきゃもう3日目ぐらいだから・・・」「死んじゃうの?」「がんばれ!ナントカ出したげるから」「がんばれ!死んじゃダメだよ」そうして上から私を助けられないと思ったらしくてはさまった壁をゴリゴリしだしたの後から聞いたら壁をぶち抜いたんだって!真っ暗な壁の隙間に少しずつ、少しずつ光が差し込んできて突然ぱぁぁって光の洪水が・・・あんまりまぶしくって、私何も見えなくなっちゃたので、しばらくして次に見えたのはお母さんと姉ちゃん達と兄ちゃんのほっとした顔だったの・・・そうしてもう一年近く本当の子供みたいに大事にされてううん、本当の子供でもこんなに大事にされないんじゃないか?って、同じぐらいにやってきた妹ともよく話してたのでもね、ふっと思ったのこのままでいいんだろうか?ってやっぱり私は皆と違って本当のここの子じゃないじゃない?自分のルーツの始まりが壁の中ってなんだか悲しい・・・今のお母さんや、兄ちゃん二人の姉ちゃんに恥じないような自分のルーツを見つけたい!そして、胸を張って戻ってきたいの・・・と、思ったのかどうかわかりませんがジジ姫出奔、はや二日・・・心配です、おなかすかせてないだろうか?怖い思いしてないだろうか?兄ちゃんも、姉ちゃんも学校の行き帰り遠まわりしてあちこちの路地裏を覗いてくれてるオチビも朝早めに家を出て公園を覗いてくれてるご近所や商店街でも「見かけたら教えてください」と、声をかけてあるけれど・・・ああ、心配。